博打だったアデミウソンの右MF [1st6節浦和戦レビュー] 藤井雅彦 -1,714文字-
右MFにアデミウソンを置く采配は、やはり博打だった。守備も一生懸命こなすアデミウソンは相手がフリーになっていれば全力疾走で自陣まで戻ってきてくれる。でも戻ったあとの対応はどうしても苦しい。それからボールを預けて上がっていく選手についていくこともできなかった。これは対面する槙野智章が得意とするプレーで、槙野はタッチライン際にいる宇賀神友弥にボールをつけて自身が追い越していくプレーを繰り返した。その際に小林祐三の対応はどうしても後手に回った。
これについては小林のコメントを引用するのが適当だろう。
「なんとか最後のところで守っていたけど、自分のサイドは破綻寸前だった。ハラハラしながら守っていた。アデミウソン個人の問題というよりも、自分の前のポジションは少しやったからできる場所ではない。開幕戦の奈良輪にしてもそうだけど、相手がフロンターレや今日の浦和のような特殊になるとさらに難しい」
彼らしい言い回しだが、それだけマリノスの右サイドの守備は怪しかった。紙一重のところで失点を回避していたのが序盤戦で、逆に先制できたのは最高のラッキーであり、マリノスの勝負強さと言える。しかも最高の形から美しいカウンターが決まった。ズラタンからボールを奪った中澤佑二の勇気あるチャレンジ、ボールを運びつつ精度の高いパスを供給した三門雄大の覚醒ぶり、そしてステップでマークを外して1対1を冷静に決めた伊藤翔のストライカーとしての本能。いずれもパーフェクトだった。
だからこそリードして前半を終わりたかったが、残念ながらできなかった。当たり前だが、敗因を上げるならここでの2失点に尽きる。悔しいのはいずれの失点もかなり不運だったこと。
1失点目はまるでピンボールのような形で武藤雄樹の足元にボールが入り、ポストに当たったボールは吸い寄せられるようにシューターのところに戻ってきた。2失点目はクロスに対して栗原勇蔵、中澤、下平匠が続けて触れず、ズラタンにフリーのシュートを許してしまった。2失点について感嘆すべきは関根貴大の冷静に折り返しだけだった。
とはいえ不運を嘆いても仕方がない。「ゴールが生まれるときはそんなもの」(栗原)である。すべてのことが上手く運んだときの結晶がゴールで、人為的な作 用だけとは限らないのだ。反省するなら時間帯の問題で、前半終了間際に、しかも立て続けに2失点すればメンタル面へのダメージも大きい。あそこで踏ん張れ なければ、マリノスは勝ち点3を取れない。
追いかける展開で相手が浦和レッズのように引いて守ると、ゴールをこじ開けるのは至難の業だ。「浦和は試合巧者なので後半は無理に点を取りに行かずに引いて守ってウチを動かしていた。後半は浦和のサッカーになってしまった」(栗原)。のらりくらりとしたペースのサッカーに付き合わされ、慌てて攻めてもカウンターを食らうだけ。追加点を許さずに終わったのは不思議なくらいだった。
次節以降、中村俊輔とラフィーニャが復帰するかもしれない。彼らがピッチに戻ってくれば遅攻でも何らかの可能性が生まれるはず。一方で前線の組み合わせをどうするかという課題は膨らむ。アデミウソンのポジションをどうするか、成長著しい喜田拓也の起用法、あるいは浦和戦で逆に存在の大きさを示した感のある兵藤慎剛など、使いたい選手は五指に余る。これならば調子の上がらない齋藤学をスーパーサブとして起用する可能性も否定できない。
チームとして上がり目があるのは楽しみだが、17試合で決着をつける短期決戦の1stステージにおいて浦和戦の敗戦はあまりにも痛恨。痛すぎる黒星を喫したという見方が正しい。