「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

不安より、期待 / 蒼井真理 神戸戦レビュー

金井貢史の躍動。確かな積み上げを感じさせる好ゲーム

改めてチームとしての成長、積み上げを感じさせる好ゲームだった。

シュートは9本のみで、特に前半はロングボールを多用する神戸に対しボールの奪いどころを見いだせず慎重なゲーム運びになった。CBとSBの間に顔を出す都倉賢に長いボールを当て、こぼれ球やシンプルな裏へのボールに大久保嘉人や小川慶治朗がスピードに乗った突破を図る。シンプルだが個の強みを生かした神戸の攻撃、特に大久保には序盤から何度か突破を許した。少しずつDFラインが下がり、セカンドボールを拾うために富澤と中町の両ボランチもポジションが深くなって、奪ってからの攻撃にもやや厚みを欠いた。樋口監督や中澤は、「自分たちのサッカー、持ち味がなかなか出せなかった」とゲームを振り返る。

しかし選手の距離感は(69分に富澤が退場するまで)非常に良好で、セカンドボールの奪取率が高かった。DFラインも下がりっぱなしでなく、細かく押し上げる作業を繰り返し高い位置でロングボールに競り合ったり、クサビのパスにアプローチするなどのトライも見られた。自陣エリア付近での受動的な「水際のディフェンス」だけに頼らない、能動的な守備でゲームをコントロールしようとする意志が見られ、一定以上のレベルで体現された。

選手の距離感が良く、セカンドボールを拾うことができるのは選手間の意思疎通が良好な証だ。神戸戦は準備したゲームプランも上手く機能し、「ロングボールを跳ね返し、拾う」我慢のサッカーも想定内の展開で、大きな混乱はなかった。

ピッチに表現された確かな積み上げ

先制点は富澤の鮮烈なミドルシュートだったが、起点となったのはハーフウェイラインを越えた右SB金井からの、左SBドゥトラへの素晴らしいサイドチェンジだった。2点目のマルキーニョスのゴールは、一度左サイド深くまで運んだボールを中央を経由して右サイドまで展開し、兵藤と金井で崩してエンドラインまでえぐったマイナスのクロスから。今季始動から粘り強く取り組んできた、「両SBを高く張り出し、ピッチの幅を広く使う攻撃」と「質の高いポゼッションから、コンビネーションでペナルティエリア脇を崩す攻撃」が成果として表れた。

後半は富澤との役割・ポジションを整理した中町が、前半よりも高い位置取りでプレスに参加し、俊輔を追い越してパスを受けるシーンも増えた。神戸は次第に都倉のパスを引き出す動きが鈍り、ロングボールも雑になっていった。富澤の退場までは、事前の準備から試合の入り方・後半の修正まで、ほぼパーフェクトな試合展開だった。

富澤が退場以降の対応は上策とは言えない。俊輔と中町という受けに回ると脆さのある選手を残しつつ中盤の枚数を削り、青山を入れて実質5バックにしたことで、奥井諒や森岡亮太のスピードを生かした突破に対し無抵抗に押し込まれる結果となった。小野と谷口は、もっと早い時間帯で上手い起用法もあったように思う。

しかし樋口監督の慎重で「静的な采配」はパーソナリティに依存した問題で、判断には熟考を重ね安易な直感や勢いに委ねない性格だからこそ、度重なる逆境にもブレずに堅実なチーム作りを進めてこられた。実戦指揮官としての即断実行力の低さは確かにウィークポイントだが、表裏一体の一面だけを指摘して評価を下げるべきではない。樋口監督の良さは、そこにはない。

富澤の2枚目の警告は必要のないファウルであったし、中盤の底を支える屋台骨が2試合の出場停止となるのはチームにとって痛恨だ。しかし今季は樋口監督の周到な準備のもと、レギュラー選手の怪我や出場停止をきっかけに新たな選手が存在感を発揮し、チーム力の底上げが成されている。続く2試合で新たな可能性の台頭があるのか? 不安よりも、今は期待感の方が大きい。

【Players Pick Up】

金井貢史は先制点の起点となるサイドチェンジ、右サイドを深くえぐっての質の高いクロス2本と、攻撃面で目に見える結果を残した。俊輔や兵藤とのワンタッチ、ツータッチのパス交換から狭い局面を突破・打開するなど、小林祐三にはない持ち味を見せて右SBでのレギュラー奪取へアピール。守備でも大きな破綻は見せなかった。

榎本哲也は何度かあった大久保との1対1の局面で、不用意に飛び出すことなく我慢のポジショニングでシュートコースを狭め、相手のシュートミスを誘った。以前は「前に出る」のが持ち味だったが、判断面での大きな成長を感じさせる冷静な対応を見せ、勝利に貢献した。

五輪代表から復帰後、チームにフィットできず苦しんでいた齋藤学が、攻守に渡って試合の流れに上手く絡み機能したことも大きな収穫だ。27節の大宮戦あたりから、吹っ切れたように積極的な仕掛けを見せるようにはなったが、サイドで単発の突破が多かった。神戸戦ではカウンター時に守備ブロックの少し前に浮いた学を経由してマルキーニョスに繋ぐシーンが多く見られ、チームの中での役割が整理されつつあることを印象付けた。

(本戦のレビューは蒼井真理記者が担当しております)

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