「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

問題は、中村がいることでカウンターに走らなくなる他の選手の意識 [J1st7節湘南戦プレビュー] 藤井雅彦 -2,071文字-

先日の試合で復帰した中村俊輔とラフィーニャは引き続きベンチスタートで「おそらくゲーム途中からの投入になるだろう」(エリク・モンバエルツ監督)。ナビスコカップ・名古屋グランパス戦では40分程度プレーしたが、まだ90分のプレー体力はない。そして負傷再発のリスクもある。早くても後半開始からの出場だろうが、特にラフィーニャに関しては追いかける展開の有効なカードになるはずだ。

4-3-2-1_2015 難しいのは中村の処遇である。正直、昨今のマリノスのスタイルに合った人材ではない。それは喜田拓也がトップ下に入っている人選からも読み取れるだろうし、ボランチの人選も中村寄りには思えない。中村が輝き、マリノスが優勝争いの主役となった2013年は、富澤清太郎と中町公祐のダブルボランチがトップ下・中村を支えた。3選手の補完関係は見事で、それを再現しようと思えば明日の湘南ベルマーレ戦でも可能だろう。つまりは相性ピッタリなのである。

しかし、モンバエルツ監督はそれを選択肢として考えていない。湘南戦ではアデミウソンがトップ下に入り、ダブルボランチは三門雄大と喜田が組むことが濃厚だ。富澤清太郎はベンチで、中町公祐は左ふくらはぎ打撲のためベンチにもいない。ボランチの軸になりかけていたファビオは柏レイソル戦、浦和レッズ戦と中盤でのミスが先行し、安定感を欠いたように見えなくもない。個人的にはそういったミスがあったとしても起用すべきだと考えるが、どうやら指揮官はファビオをCBかベンチスタートに回しそうな気配が漂っている。湘南戦ではある程度ボールを持てる想定なのかもしれない。

中村を起用するとしたら、ポジションはもちろんトップ下だろう。ただし彼のプレーエリアはモンバエルツ監督が求める「相手のラインの間」ではない。これは相手の最終ラインと中盤のラインの間を意味しており、中村は相手の中盤のラインよりも自陣よりにポジションを取るケースが目立つ。名古屋戦では負傷明けだから接触プレーを避けて下がったのではなく、あれが彼のオリジナルポジションである。

 

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それによってマリノスがボールを持つ時間は間違いなく増える。中村には自然とボールが集まるだろう。一方で攻撃は常に遅くなり、前線からの強度の高い守備とショートカウンターは消える。浦和戦のゴールのように縦に早い展開は減るはずだ。あったとしても、そこに中村が絡んでいる可能性は低い。

だが、それでいいと思う。良い形でボールを奪った場面では、中村抜きでカウンター攻撃すればいいではないか。問題は、中村がいることでカウンターに走らなくなる他の選手の意識であり、中村にボールを預けてお願いする周囲の姿勢ではないだろうか。どこかで依存しているから、それができないのでは悲しい。

湘南3-4-2-1 それくらい影響力の大きい選手であることは百も承知。ただ、中村の判断や選んだプレーがすべて正しいとは限らない。事実、ここ数試合のマリノスは守備に軸足を置きつつ早い攻撃でチャンスを作り出している。逆に遅攻になってもまったくチャンスを作れていない。中村が入れば遅攻のリズムが変わってチャンスが生まれる可能性はたしかにあるが、それだけになってもいけない。つまり中村自身が言っているように「使い分け」であり「バランス」なのだ。

中村のコンディションを上げるためにも、そしてチームにフィットさせるためにも、やはりプレー時間はある程度確保したい。そのためには前半である程度の決着をつける必要がある。欲を言えば2点差ほしい。2-0で後半に入れば、中村とラフィーニャをチーム作りのために起用できる。相手の甘く見過ぎかもしれないが、とりあえずの理想形は前半2-0だ。簡単な目標ではない。でも決して不可能ではない。個々のレベル差を考えれば、それくらいの目標設定は必要だ。

 

【この試合のキーマン】
DF 22 中澤 佑二

 水曜日のナビスコカップ・名古屋戦を回避し、湘南ベルマーレ戦に全力投球だ。試合に向けてしっかり逆算してコンディションを整えられる選手だから心配ない。この試合では誰よりも元気に走ってくれるだろう。
そして、そろそろゴールがほしいところ。ファビオがスタメンから外れるとしたら、期待がかかるのは中澤と栗原勇蔵になる。湘南との対戦ではセットプレーからゴールが生まれるケースも多く、キッカーの兵藤慎剛とタイミングを合わせたい。
「タイトルをあきらめていない」。その言葉を現実にするためには勝利が必要だ。マリノスの重鎮が攻守両面に渡る活躍で勝ち点3を手繰り寄せる。

 

 

 

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