「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

ボールを奪っても位置が低く、前線の選手との距離が遠い [1st8節広島戦レビュー] 藤井雅彦 -1,461文字-

先制点を除き、攻守ともにチームが機能不全に陥っていた。特に重きを置いているはずの守備が機能しなかったのは大きな問題である。オフェンス時に[4-1-5]になるサンフレッチェ広島に対して、マリノスはずるずると後方に下がるのみ。ボールを奪いに行くどころか、パスコースを制限することさえもできなかった。伊藤翔とアデミウソンはほとんど棒立ちで守備をせず、後ろの8人が[4-4]のブロックを作るものの、サイドMFは相手のウイングバックのケアのために最終ラインに吸収される場面も多かった。特に右サイドの兵藤慎剛はそれが顕著で、前線の中間ポジションでボールを受ける本来の良さをまったく出せなかった。

4-3-2-1_2015 ボールを奪っても位置が低く、前線の選手との距離が遠い。前へ行くにも距離感が悪いためパスが回らない。そうしているうちにミスが発生し、再び広島ボールとなり、また守備の時間が始まる。正直、開始4分で先制してからはずっと同じ展開で、どうにか踏ん張っているだけだった。後半開始時からシステムを[4-1-4-1]に変更したが、その事実が現場でハッキリと分からなかったあたりに、システム変更の無意味さが浮き彫りとなった。喜田拓也をアンカーに置き、その前に兵藤と三門雄大を並べ、右サイドにアデミウソンを置く。三門はアグレッシブにボールを追いかけたが、広島の技術にいなされるだけだった。

広島や同じスタイルの浦和レッズ、あるいはスタイルこそ違えどもボールを保持する川崎フロンターレに対して、昨季までは得意なはずだった。今季はその3チームに3敗を喫しているのだから由々しき事態である。この3チームに勝っているときの共通点は、ただ下がって守るのではなく、相手ボールにしっかりプレッシャーを与えていた。今季のマリノスはそれができなくなってしまった。残念ながら、ただ下がるだけの守り方で、「今日は相手が楽しそうだった」という中澤佑二の言葉は的を射ている。広島の選手にしてみれば、とてもラクで楽しい試合になった。

 

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広島3-4-2-1 マリノスは今季、監督交代という決断を下した。それは3年間続いた樋口体制からさらに進化するための一手である。嘉悦朗社長は継続路線を明言し、「樋口さんの良かった部分は継承していく」と何度も繰り返した。しかし蓋を開けてみればまったく違うチームに生まれ変わった。最初から生まれ変わる、あるいは壊す、組み立て直すことを目指していたなら問題ないが、そうではなかったはず。監督交代、あるいは外国籍の監督を招聘するということは、やはり何かが変わるのである。

その結果、マリノスは勝てていた相手に勝てなくなり、勝てなかった相手に勝てるようになったかもしれない。でも、残念ながら順位が大幅に上に行くことはなさそうだ。少なくとも17試合で決まる1stステージにおいて、3敗は負け過ぎである。首位・浦和との勝ち点差は『9』に開き、直接対決も残されていない。1stステージの結果がすべてのルールではないが、6月の時点で歓喜できる可能性はほぼ消えた。そう言わざるをえない悲しい敗北だ。

 

 

 

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