「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

困ったときに帰る家がまだ出来上がっていない [1st9節山形戦レビュー] 藤井雅彦 -1,364文字-

相手を1点以上上回るための戦略は絶対に必要だ。ただ、相手の性質によってスタイルをコロコロ変えていたらチームとしての成長は見えにくい。しかもメンバーを毎回のように変更する、いまのマリノスのような采配では、勝っても負けても理由や原因を特定しにくい状況が生まれてしまう。一発勝負のトーナメント決勝ならそれでもいいが、2ステージ制に戻ったとはいえリーグ戦である。次も、その次もある。相手は違うが、自分たちは自分たちだ。パフォーマンスが良かった選手がいれば、悪かった選手もいるだろう。彼らを測るためのものさしが欠かせない。

4-3-2-1_2015 モンテディオ山形戦に臨んだマリノスには、何もなかった。山形の前線はなかなかのハイプレッシャーで、そのためにダブルボランチはボールを動かせる選手をチョイスしたはずだった。しかし蓋を開けてみれば彼らはバックパスのオンパレード。下平匠を除いでビルドアップが得意とはいえない最終ラインの面々もボールを後ろに下げることしかできず、GK榎本哲也はバックパスの処理に追われた。

こうなると攻撃は単発だ。たまたまクリアボールが良いところに転がったときだけチャンスになる。全体が低調な試合では驚くほど存在を消す兵藤慎剛は相変わらずで、齋藤学はやや低い位置でボールを受けてチャンスメークを試みたが、それは本来彼がやるべき仕事ではない。アタッキングサードでの仕掛けからのゴールやアシストこそ本当の仕事で、25歳のプレーとは思えない内容だった。

 

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そして結果も最悪だ。あろうことかセットプレーから先制を許し、終盤に攻勢をかけたがゴールを奪えなかった。昇格組の山形に敗れたのは痛恨で、1stステージでのタイトル獲得は完全に消えたといっていい。それどころか上位争いに食い込むこともむずかしそうだ。さらにチーム内での序列も分からなくなってしまった。誰がレギュラーで、次の試合に誰が出るのか。中3日でやってくる次の試合に向けて、ほとんどの選手が不安を抱えて過ごすことになる。精神衛生上よろしくないだろう。

山形3-4-2-1 前任者と違い、エリク・モンバエルツ監督は選手に求めるものがハッキリしている。その是非はともかく、求めていることは明らかで、それほど難解なものではない。しかし、だからこそできる選手、できない選手の色分けもハッキリする。昨季まで出場していた選手でも立場が危うくなることが普通にあるだろう。それはここまでの前半戦を見ても明らかで、三門雄大や喜田拓也が出場機会を増やしていることが動かぬ証拠である。

それなのに山形戦では、いったい何を求めているのかわからないメンバー編成になった。あるはずの力の差も見えにくくなり、結果として勝ち点ゼロで帰ってくることに。結果が出なければいまのチームは脆さを見せるだろう。困ったときに帰る家がまだ出来上がっていないのだから。

 

 

 

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