「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

マリノスが勝ち続けたい理由 ・・・スポンサー収入と「持続可能な成長」[1st13節松本戦プレビュー]藤井雅彦 -2,057文字-

 

2日連続でクラブ経営面の話から。

22日、マリノスは2014年度の決算内容を開示した。結論から述べると、営業利益は前年度とほぼ同等となる600万円の黒字となった。

ちなみに前年度の2013年度はトップチームが優勝争いし、リーグ戦2位(1億円)や天皇杯優勝(1億円)、ナビスコカップベスト4(2,000万円)などで賞金を獲得(計2億2,000万円)。そんなチーム成績と比例して過去最高の平均入場者数を記録した結果、900万円の単年度黒字化を達成した。

4-3-2-1_2015 再び2014年度の決算内容に戻る。ちなみにこのシーズンはリーグ7位と成績は振るわず、天皇杯やナビスコカップも早期敗退。賞金獲得は7位の1,000万円のみで、同じカテゴリーを前年と比べるとマイナス2億1,000万円。インセンティブによる収入はとても少なかった。もちろん成績と大きく因果関係のある集客も伸びず、観客動員数は前年比で約16%減(金額にすると約10%減だという)となった。

にもかかわらず黒字になったのは、まずはスポンサー収入が大幅に増えたから。前年比でなんと34.7%増という驚異的な数字を叩き出した。ちなみにこれは新規開拓による純増分と既存スポンサーの増額を合わせた数字で、金額にすると21億1,400万円。さらに相変わらず好調な商品販売、いわゆるグッズ収入は前年比20.9%増の6億3,600万円だった。これらの数字は素晴らしく、評価できるものだ。

ただし、である。では、なぜスポンサー収入がこれだけ伸びたのか。それについて嘉悦朗社長は「ACL出場による増額があったことが大きい」と明かす。2013年に好成績を収めたことで2014年への期待値が上がり、スポンサー側の好意や気持ちはお金に反映されたということ。つまり、皮肉なことにここでもあくまで水物であるチーム成績を切り離せず、むしろトップチームの結果に依存していることが浮き彫りになった。

嘉悦社長は昨日の移転に関する取材対応時から「持続可能な成長」という言葉を何度も口にしているが、それはトップチームの成績に左右されない安定した経営を目指すという意味である。しかし、現実はチーム成績次第になってしまっている。したがって2014年度の決算で黒字になったにもかかわらず嘉悦社長に笑顔はなかった。総括したコメントは「薄氷を踏むような決算」であった。

話を過去から現在、そして未来に移そう。先述したスポンサー収入におけるからくりだが、繰り返すと2013年の好成績(優勝争いとACL出場権獲得)が2014年度の収入アップにつながった。ということは、である。2014年に7位と中途半端に終わった事実が2015年度になんらかの形で影響を及ぼす可能性があるということだ。嘉悦社長は「スポンサー収入は下がる可能性がある」と示唆。当然だろう。前年比34.7%増というスポンサー収入はあくまでトップチームが勝ち取った利益で、逆に手放すとしたら彼らのパフォーマンスが大きく関係する。営業部門の社員の頑張りは欠かせないが、チーム成績はそれを一瞬にして努力の結晶に、あるいは水の泡に変える威力を持っている。

 

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松本3-4-2-1 仮にスポンサー収入が前年比減としたら、いったいどこで補うのか。そのひとつが例の移転話であり、嘉悦社長は「タイトルを獲ること。1stステージもその数字が残されているけど、2ndステージは必ず優勝したい。そして年間3位以内に入り、最後はチャンピオンシップに出場する」と青写真を語った。成績に左右されない経営を目指しながら、そのリカバリーを成績で狙うという本末転倒な話ではあるが、これがマリノスの実状なのだ。そう考えると年間5億円以上のコストがかかるマリノスタウンは、やはり重い足かせなのかもしれない。

個人的には、実質的に1stステージの優勝争いに絡むことは不可能だと思っているが、数字上は可能だ。そのためにも明日の松本山雅戦は意外と重要な一戦かもしれない。松本に勝利し、次節はホームでガンバ大阪を迎え撃つ。上位対決になれば集客も期待できるだろう。そして連勝を伸ばしていけば年間での勝ち点も自然と上位に行く。ポストシーズンを見据えても無駄な試合はない。

マリノスには勝ち続けたい理由がある。

 

 
【この試合のキーマン】
MF 25 藤本 淳吾

 前節の清水エスパルス戦でようやく今季初ゴール。それも他との違いを生み出すビューティフルゴールだった。「少し気持ちがラクになった」と話しており、心身ともに調子上向きで松本山雅戦に臨めるだろう。

 もちろん清水戦だけで終わっては困る。期待値は高く、1試合の1ゴールだけではまったく足りない。連続して結果を残し、チームを何度も勝利に導いてもらいたい。結果だけでなく、彼にしかできないプレーを見せてもらいたい。

 伊藤翔が復帰し、ラフィーニャもベンチに控える。前線のスタメン争いは激しく、決して安泰とはいえない。次節以降もスタメンに生き残るためには、連続ゴールが求められる。

 

 

 

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