「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

やるか、やられるか。少しの油断やミスで勝敗が決まるゲーム [1st14節ガンバ戦プレビュー] 藤井雅彦 -2,177文字-

 

まずはこの試合がマリノスにとっての大一番になったことを素直に喜びたい。5月に入ってモンテディオ山形に苦杯をなめたもののその後は名古屋グランパス、アルビレックス新潟、清水エスパルス、松本山雅を相手に4連勝。コツコツと勝ち点を積み上げ、順位を少しずつ上げてきた。現在順位は3位のガンバ大阪と勝ち点並びの4位。浦和レッズやガンバの消化試合数が少ないとはいえ、立派な順位である。

そして今節、3位・ガンバとの直接対決を迎える。いつも冷静な小林祐三も「状態が良いときに上位のチームと対戦できるのは楽しみ」と笑みをこぼした。相手は間違いなく強者だ。言うまでもなく昨年度王者で、前線には宇佐美貴史という今が旬のストライカーがいる。「去年のチャンピオンチームでさらに補強している。ACLで勝ち抜いているし、Jリーグでも上位にいる。疑いなく強いチームだ」とはエリク・モンバエルツ監督の言葉である。

G大阪4-4-2 そのガンバの長所は、以前であれば遠藤保仁を中心としたパスワークが真っ先に思い浮かんだが、いまはやや趣が異なる。むしろ前線にいる宇佐美とパトリックをシンプルに使うサッカーが相手に脅威を与え、ボール回しは目的ではなく、あくまで方法になっている。まずはボールを奪ってからの素早いカウンター攻撃を警戒しなければならない。考えてみるとパスワークを武器にしていた時代も、ガンバは最前線に優秀な助っ人ストライカーを有していた。そのストロングポイントは現在も変わっていない。

相手は少々アバウトなボールでも躊躇なく放り込んでくる。そのときのターゲットはフィジカルモンスターのパトリックで主に右サイドに流れてくる。したがってここはファビオと下平匠が連携して止めなければいけない。また、マリノスのCKをはね返してからのカウンターは左サイドに開いた宇佐美を使ってくる。このときは中澤佑二とファビオが前線に上がっているため小林を中心とした面々がしっかりリスク管理する必要がある。

この試合に関しては一瞬たりとも集中を切らしてはいけない。GK飯倉大樹は「やるか、やられるか、ではないけど、少しの油断やミスで勝敗が決まるゲーム」と展望を語る。本当にそのとおりで、中途半端なプレーは命取りになるだろう。特に攻めている場面でのリスク管理が鍵を握りそうで、相手は常にカウンターを狙っている。マリノスは気持ち良く攻め過ぎてはいけない。

 

 

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4-3-2-1_2015 この試合に臨む11人は松本戦と大きく変わらないが、前節のゲーム中に左太もも裏を肉離れした中町公祐に代わって兵藤慎剛がそのままボランチに入る。当初は三門雄大をボランチに戻す策が有力と見られていたが、水曜日のナビスコカップ・川崎フロンターレ戦で後半途中からボランチに入った兵藤の出来が良かった。そして兵藤をボランチに入れれば複数のポジションを動かさずにすむ。また、三門をボランチに下げてアデミウソンをトップ下にした場合、伊藤翔かラフィーニャを1トップに入れることになるが、その二人のコンディションが万全ではないことも考慮されたのだろう。いずれにせよ兵藤のボランチ起用は冷静かつ的確な采配で、何度も言っている守備のリスク管理において兵藤が果たすべき役割は大きなものになりそうだ。

守備さえしっかり機能すれば、あとは好調オフェンス陣がどうにかしてくれるはず。アデミウソン、齋藤学、藤本淳吾のフロントラインはポテンシャルが高く、いまの調子ならば相手にひけをとらないはずだ。もちろんベンチには伊藤とラフィーニャが控え、彼らは攻撃をギアチェンジさせたい場面での有効なカードになる。

ここまでの4連勝は相手との相対的な力関係からいって大きな驚きではない。だが、ガンバも打ち破って5連勝を達成するとしたら、これは一過性の勢いではない。新体制になってリーグ戦13試合、カップ戦6試合の計19試合を戦い、少しずつプレーアイデンティティを積み上げてきたマリノスが現時点での力を試すには、これ以上ない相手である。

 

 

【この試合のキーマン】
DF 5 ファビオ

 おそらく今季一番忙しい試合になるのではないか。右サイド前方のスペースに流れるパトリックの抜け出しにどれだけ対応できるか。簡単に突破を許せば、マリノスの守備はひとたまりもない。逆にパトリックを封じることができれば、相手の攻め手は一つ減る。
水曜日のナビスコカップではゴールだけでなく2失点にも絡んだ。一つは不運なブロックミスで、2失点目はマークを一瞬だけ外してしまった。彼にとっては厄日のような試合で、試合後は肩を落として激しく落ち込んでいた。優しい気持ちの選手だけに心配だったが、中2日の調整を経て普段の陽気な笑顔が戻った。
明日の試合はファビオのパフォーマンス次第だ。王国からやってきたザゲイロにとって、真価とリバウンドメンタリティーが問われる一戦になるだろう。

 

 

 

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