「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

伊藤翔をトップ下、1トップにアデミウソン。そして、藤本淳吾が戻ってくる [1st16節鹿島戦プレビュー] 藤井雅彦 <無料記事>

日本代表チームが活動する裏で、マリノスは久しぶりに腰を据えてトレーニングを行った。この2週間での最大の変化として、伊藤翔をトップ下に配置したことが挙げられる。1トップにはこれまで同様にアデミウソンが入り、以前は最前線を務めていた伊藤をトップ下に置く。この起用法についてエリク・モンバエルツ監督は以下のように狙いを明かした。

4-3-2-1_2015「アデミウソンは相手の裏を取れる特徴がある。前にいたほうが特徴は出る。伊藤も裏へのプレーをできるが、もう少し長い距離を走って出て行ける。アデミウソン自身も前でプレーしたいということもある」

 本来の性質としては逆の配置かもしれないが、いまのチームにポジティブな要素をもたらすために、この変化球も“アリ”だろう。もちろん彼らが単独で動くだけでは意味がなく、互いに動きと位置を見ながらプレーする前提だが。攻守ともに前線のセットが果たすべき役割は小さくない。

そのほかでは右太もも裏痛でヴァンフォーレ甲府戦に出場しなかった藤本淳吾が戻ってきそうだ。負傷前の藤本はチャンスメークよりも、フィニッシャーとして重要な役割を担っていた。指揮官は「淳吾に期待するのは時間を作り出すこと。そしてフィニッシュでももっとできるはず」と期待を口にする。だが、藤本の仕事に関してもアデミウソンと伊藤次第の部分は大きい。これは齋藤学にもいえることで、前線に有機的な絡みがなければゴールの可能性は高まらない。

ダブルボランチと最終ライン、そしてGKの顔ぶれに変化はない。あるとすればベンチに背番号4が帰ってくること。とはいえCBというポジションの性質を考えたときに、途中出場するケースはアクシデント以外に考えにくい。中澤佑二とファビオのコンビは能力が高く、簡単には崩壊しない。いや、されたら困る。したがって栗原が出場機会を得るのは簡単なことではないが、彼にとってはここからが再スタートだ。

鹿島4-2-3-1 チームとしては、1stステージ残り2試合でできるだけ勝ち点を積み上げたい。年間勝ち点を考えたときに、この2試合が持つ意味はとてつもなく大きい。そして2ndステージ開幕に勢いを持ち込むという点でも、間違いなく消化試合にはならない。2連敗フィニッシュと2連勝フィニッシュは当たり前だが大きく違い、それは1stステージの正否すら左右しかねない。“終わりよければすべて良し”ではないが、終わりが悪ければ印象は落ちる、あるいは下がる。

ただし、戦うのは難敵である。今季の鹿島アントラーズは明らかに調子が出ていない。とはいえ彼らには勝者のメンタリティーがある。そして中盤にはクオリティーの高い選手がいる。マリノスは遠藤康の左足が苦手で、土居聖真にもやられた過去がある。警戒すべきは1トップに入る選手よりも柴崎岳も含めたMF陣だろう。前述した前線の二人以外では、三門雄大と喜田拓也の仕事がポイントになる。

勝つのは簡単ではない。だからこそ勝ったときに得られる収穫と自信、価値は大きなものになる。

 

【この試合のキーマン】
GK 21 飯倉 大樹

 先発の椅子に座るようになってからチームは4勝2分と負けなし。もちろん飯倉自身が先発した試合も同じ戦績である。一見すると追い風を運んだように思えるが、活躍の場は案外少なく、本領発揮はこれからだろう。
GKは目立たないのが一番だ。90分間で一度も登場しないのが望ましい。でも、どこかで力が必要になる。苦しい局面での流れを引き寄せるファインセーブで、試合展開を大きく変えることができる。それができるのはGKを務める選手だけだろう。
相手は調子がイマイチとはいえ、勝利の歴史を持つ鹿島だ。そろそろ出番がやってきても不思議ではない。勝利を呼び込むハイパフォーマンスに期待したい。

 

 

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