「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

背番号10の起用法は2ndステージの最大の焦点になるだろう [1st17節神戸戦レビュー] 藤井雅彦 -1,676文字-

 

さすがネルシーニョである。マリノスが抱えている問題をしっかり心得ている戦いぶりだった。

神戸4-2-3-1神戸の1トップ2シャドーはさほど動かず前線からコースを限定し、マリノスの前線と後方を分断してきた。特に2シャドーはマリノスのダブルボランチをしっかり監視。兵藤慎剛と喜田拓也は最終ラインからボールをピックアップしようと下がるが、それについては背中側から見ているのみ。マリノスの最終ラインがボールを運べればボランチの負担は減るのだが、それは性能的に難しい。だからボランチは下がらざるをえない。次の瞬間、相手の前向きでの守備をぶつけられ、バックパスするしかなくなる。そのうちパスの出しどころがなくなり、ミスからボールを失う。序盤はまったくペースを握れなかった。

逆にオフェンスでは、神戸はドリブルを有効活用し、両サイドの高い位置から仕掛けることでセットプレーを獲得するように試みた。スピード豊かな小川慶治朗は中澤佑二と小林祐三の間隙を狙って突破を図り、中澤を中央から吊り出すように仕掛けてきた。逆サイドの高橋峻希は対面の下平匠に積極的につっかける。いずれもマリノスにとって不得手な展開である。

それにしても、である。結局、セットプレーから失点してしまうのはマリノスに少なからず問題があったからだ。森岡亮太からの左CKをあろうことかマルキーニョスに合わせられた。マーカーは兵藤だった。ちなみに兵藤は身長こそ高くないが競り合いに弱い選手ではない。最後まで体を寄せて、相手に十分な形でヘディングさせない技術は高い。ただ、今回は相手が悪かった。マルキーニョスクラスの選手のマークを担当するのは苦しい。

なぜか。マリノス全体として単純に高さが足りない。中澤とファビオを長身選手のマークに充てた場合、次点はSBの小林や下平となる。その次はもう兵藤だ。神戸に当てはめると3バックの長身選手が次々と上がってきて、もちろん渡邉千真も無視できない。すると身長はさほど高くないマルキーニョスを軽視しがちになり、そこで兵藤とのミスマッチが生まれた。失点後、兵藤と小林がマークの担当を入れ替えた対応したが、遅きに失した感は否めない。ちなみに23分にもFKから渡邉にヘディングで決定機を許しているが、そのマークは下平だった。マリノス全体、特にボランチに高さがないという欠点が、ここ数試合の失点で浮き彫りになったと言えよう。

 

下バナー

 

4-3-2-1_2015 同点ゴールについては正直ラッキーな要素が強かった。藤本のヘディングゴールはレアだろう。ただし、高い位置で仕掛けたからこそのゴールでもある。兵藤からの縦パスを受けた齋藤学が左サイドで仕掛け、相手DFにブロックされる。そのこぼれ球をサイドで拾った下平がワンタッチでファーサイドに送り、大外の藤本が頭で合わせると、美しい弧を描いたヘディングがサイドネットに吸い込まれた。相手陣内でサッカーをしたからこその結果で、ビルドアップの問題を回避できればチャンスを作り出せる証左でもあった。

最後に、注目の復帰戦となった中村俊輔はトップ下での出場となった。1-1という試合展開で守備面での仕事量もそれなりに求められる展開で、計画していたボランチ起用は難しかった。エリク・モンバエルツ監督の手堅い考え方が垣間見える起用法で、三門雄大がガス欠気味だったことも理由の一つだろう。短い出場時間ながらラストの直接FKを含む見せ場を作ったのはまさしくスター性だろうが、ゴールと試合を決めきるには至らず。

背番号10の起用法については2ndステージの最大の焦点になるだろう。この試合で結論は出ていない。

 

 

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ