「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

中町のプレーが鍵を握る [2nd4節広島戦プレビュー] 藤井雅彦 -2,042文字-

前節のガンバ大阪戦で脳震とうを起こした齋藤学が今季初めて欠場する。今週に入ってからは別メニュー調整を続けており、試合前日の時点で対人練習などのフルメニューをこなせなかった。ここまでのリーグ戦全試合に先発出場している背番号11の出場可否について、エリク・モンバエルツ監督は「(齋藤)学は明日の試合は無理」と欠場を明言。ほぼ唯一の単独打開できる駒を欠いて試合に臨むことになる。

4-3-2-1_2015代わって左MFに入るのは、おそらく兵藤慎剛だろう。右MFは引き続き藤本淳吾で、トップ下には三門雄大が戻る。中盤の底で組むのは中村俊輔と8試合ぶりの先発となる中町公祐になる見通し。個々のクオリティーは決して低くないが、この5選手を予想フォーメーションのように配置したときに、どのような音色を奏でるか。1トップのアデミウソンを含めて、意識的にスペースに出て行ける選手は三門のみ。足元でのボール回しが多くなる展開は避けられそうにない。

それ以上に不安なのは、言うまでもなく守備である。中村がボランチに入った過去3試合、隣には常に守備をスタート地点にする選手がいた。喜田拓也、熊谷アンドリュー、ファビオだ。「良いバランスを探している」とモンバエルツ監督。しかし喜田は右ひざ痛から復帰しておらず、熊谷はアピール不足でベンチスタートにとどまり、ファビオは再びCBに戻る。その状況で、今週は中町と兵藤をボランチとして試していたが、齋藤の欠場によって兵藤は2列目を任され、中町が中村の横に収まったというわけだ。

中村がキーマンなのは間違いないが、それ以上に中町のプレーが鍵を握るだろう。背番号8が攻守においてどのようなバランスでプレーするのか。本質的には攻撃に特徴を持つ選手がどれだけ守備に時間と体力を割き、あるいは辛抱できるのか。彼にとっては「密かに自分の色を出すことを考えている。オレからしたら生き残るための大事な試合だから」という側面があるのも事実。ここで不甲斐ない出来に終われば、次節以降はスタメンから名前がなくなるかもしれない。

一方で、この試合だけに限れば我慢が欠かせない。不必要にバランスを崩せばチームを危険に晒すことになり、彼自身もどんどん苦しい状況になっていく。ビハインドを背負ってしまったとき、ラフィーニャや伊藤翔を投入するのは目に見えている。その時の交代カードとして中町がチョイスされても不思議ではない。三門や兵藤はボランチを務められる選手で、すでに指揮官からの信頼を勝ち取っているからだ。

 

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広島3-4-2-1広島は攻撃時にボールをつなぎ、両サイドを含めた5枚が前線に張ってくる。となればマリノスもある程度人数を割いて守らざるをえないだろう。ただし、マリノスがマイボールになれば広島は[5-4-1]になって引く。前回対戦同様、ブロックの外側でボールが回る光景は想像しやすく、あとはいかに相手が嫌がる急所を突けるか、だ。そして、そのときにボールを持つ中村の横で中町がどのようなポジショニングを取るか。状況を見極めつつ、行けるときは前へ行くのではないか。

最も恐れなければいけないのは、その後の被カウンターだ。「広島はJリーグの中でカウンターが一番上手いチームだ。低い位置で守備をするのは彼らの罠で、あえて前に大きなスペースを作っている」(モンバエルツ監督)。守るために残っているのが中澤佑二とファビオ、そして中村の3選手だけだとすれば危険は回避できない。戻りながらの守備ではさらに苦しくなり、ゴールを脅かされる場面も出てくるだろう。したがって攻撃をシュートで終わることが肝要である。

これらの展開を理解し、イメージできているからこそ中町は「渋い試合になる」と展望した。おそらくは専守防衛でスタートするが、どこでバランスを変えるか。リスクを冒すことを否定はしないが、あまりにも大きなリスクは回避する必要がある。そのバランスを調節し、プレーで表現するのが中町に与えられたタスクである。

 

 

【この試合のキーマン】
DF 13 小林 祐三

前節のガンバ戦は出場停止で不在だった。栗原勇蔵が久しぶりに先発したからこそ、その試合では是非とも隣にいてほしかった人材だ。小林自身もそのことを悔いており「できれば自分がいたかった」とつぶやく。柏レイソル戦での退場はその試合に与える影響よりも、次の試合に与えた影響という点で大きなダメージがあった。
シーズン全体でみると2度目の出場停止で、1stステージは累積警告による出場停止だった。それが前回のサンフレッチェ広島戦で、その試合では比嘉祐介が右SBに抜てきされた。対面する柏好文とのマッチアップについては「比嘉の守り方を参考にしたい」と不敵に笑う。
広島と対戦する際はSBの守備が普段以上に重要で、相手のシャドーとウイングバック、さらに上がってくるストッパーの3枚に対して柔軟に対応しなければならない。多用なスキルを求められる中で、小林の守備力は欠かせない。チームを久しぶりの勝利に導く賢い守備を見せてもらいたい。

 

 

 

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