「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

飯倉・小林・栗原、復帰 : 藤井雅彦 札幌戦直前プレビュー

 

前節・柏レイソル戦での負けは、言うまでもなく痛恨だった。同じく3位を争う浦和レッズや名古屋グランパスとの勝ち点差は『5』に開き、残り2試合でこの両チームを逆転するのは不可能に等しい。つまり、ただ相手に屈しただけでなく、今シーズンの目標を失う黒星を喫したのだ。

しかしながら一度は3位争いから脱落していた身である。個人的には夏場の3連敗後によく3勝3分と盛り返し、そこから3位との勝ち点差を最少で『2』まで詰めたものだと思う。9月22日のの鹿島アントラーズ戦から見せた踏ん張りは賞賛に値するもので、結果だけでなく内容もともなう勝利が多かった。最後はマルキーニョスや富澤清太郎の出場停止が響いた形で3位争いから脱落してしまったが、チームの中心選手を補うだけの選手層を不景気な時代に求めるのは酷だろう。戦力の穴埋めは来シーズンの課題であり、現時点では「ACLを狙うのにふさわしいチームではなかった」(中澤佑二)。

そんな状況下で選手がモチベーションを保つのはとても難しいことだ。中澤や中村俊輔のようなキャリアを持つ選手であれば、試合の臨むスタンスはどんな場合もブレることはないだろうが、いまのマリノスに在籍する多くの選手は成功体験に乏しく、状況が悪くなればあきらめがちになってしまう。当然、来シーズンに視野を向けている選手がいてもおかしくない時期でもある。

もしかしたらチームで最もモチベーションが高いのは樋口靖洋監督かもしれない。シーズン序盤も、シーズン後半も変わらないスタンスを貫く指揮官の姿勢には頭が下がる。真面目な性格の真骨頂とでも言おうか。試合前のコメントもまったくブレない。「ここからは二つの目標を持って戦っていきたい。一つはチャレンジするということ。残り2試合に勝てば何かが起きるかもしれない。でも二つ勝たないと何も起きない。あともう一つはチームとしてやるべきことを積み上げるということ」(樋口監督)。試合前日の表情はこれまでとまったく変わらなかった。

さて、コンサドーレ札幌戦に臨むマリノスだが、先発メンバーは柏戦から数名の変更がある。まず日本代表遠征帰りで柏戦に出場しなかった栗原勇蔵がスタメン復帰する。ベンチに座っていたということは試合に出られる状態ということ。にもかかわらず先月の欧州遠征後に続いてスタメンから外された彼の胸中は穏やかではないだろう。青山直晃がすばらしいプレーを披露していただけに、彼には日本代表としてのプライド、そしてこれからマリノスの顔となっていくようなパッション溢れるプレーを期待したい。

右SBもここ数試合先発していた金井貢史ではなく小林祐三に戻りそうだ。アシストあり、O.Gありと、金井はいろいろな意味で存在感を出していた。小林とは違った持ち味を発揮していたと言えるだろう。ただ、堅実性にはやや欠ける。それが柏戦でのO.Gであり、樋口監督は「あれは完全なマークミス」と厳しく指摘した。金井はこれに腐らず、攻守において精度を高める努力をすべきだ。また、先発復帰する小林も最近の処遇に納得していないはず。力強いプレーでキャリアの違いを見せてほしい。

そして今週最大のトピックはGK榎本哲也が水曜日の練習中に右足首をねん挫したことだろう。これによって札幌戦の出場は不可能となり、遠征メンバーから外れた。8試合ぶりにスタメンでゴールマウスを守る飯倉大樹にとっても期するものがあるはず。こういった形でスタメンに戻るとは想像もしていなかったはずだが、GKというポジションはつくづく何が起こるか分からない。雌伏の時を経て、一回り成長した姿でマリノスを最後尾から支えてほしいものだ。

チームとしての上積みももちろんだが、サポーターは個々をしっかり見ているはず。彼らがプライドを見せるとともに、天皇杯につながるゲームを期待したい。

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