「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

天皇杯のスタートは、ほぼベストメンバー [天皇杯2回戦 MIOびわこ滋賀戦プレビュー] 藤井雅彦 -1,815文字-

 

リーグ戦4連勝を飾った後に迎える天皇杯である。今年は2回戦からJ1チームが登場し、マリノスは明日6日に初戦となる。相手は滋賀県代表のMIOびわこ滋賀(JFL所属)だ。毎度のことながら天皇杯のスタートは格下チームとの対戦で、それがアマチュアである場合も少なくない。今回も例外ではなく、相手にとっては失うものがまったくない戦いで、おそらくモチベーションは高いだろう。

4-3-2-1_2015その相手に対して、マリノスはほぼ全力で臨む。“ほぼ”と表現したのは「疲労を抱えている選手や負傷の選手を考慮し、それ以外はベストで臨む」というエリク・モンバエルツ監督の言葉が理由となる。数名の選手はこの試合でリスクを冒す必要がなく、リーグ戦5連勝をかけたアルビレックス新潟戦に照準を合わせている。

たとえば9月1日の練習で右太もも前を打撲した齋藤学は、この一戦に出場する可能性が低い。現在はグラウンドでボールを蹴っている状態だが、無理をして悪化させるのは得策ではない。そして齋藤のポジションにはタイプこそ違うが実力者の藤本淳吾や指揮官の評価がうなぎ上りの天野純がいる。今回はおそらく天野純が先発を飾り、昨年同様に天皇杯での活躍を狙う。

 

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また、今週に入ってから左ふくらはぎに異変を訴えた中村俊輔も「リスクをとる必要がない」(モンバエルツ監督)。最近のリーグ戦2試合のパフォーマンスは圧巻で、その反動があったとしても不思議ではない。しかも筋肉系の故障であれば、慎重にならざるをえない。そうでなくても37歳という年齢は若くない。パフォーマンスだけを見れば37歳のそれではないが、実際の年齢は37歳だ。目に見えない部分に疲労が蓄積し、それに気づいたときには手遅れのときだってある。マネジメントとして予防策を練らなければいけない。

そのほかのメンバーは予想フォーメーションにあるとおりのベストメンバーである。これがミッドウィークの水曜日に開催される試合なら大幅なメンバー変更も考えられたが、リーグ戦とリーグ戦の間にある週末のゲームだ。好調のリズムを崩すことなく、相手がアマチュアという理由で手綱を緩めることもしない。個人的にはもう数名のメンバーチェンジ、たとえばリーグ戦でベンチ入りしている選手の起用はあってもいいと思うが、ここは指揮官の考えがすべてである。

試合のポイントになるのは中町公祐が言う「先制点がすべて」だろう。早い時間帯にゴールを決めてしまえばワンサイドゲームにできるし、ベンチに控える選手にある程度の出場時間を確保することもできる。重要なのは相手の戦意を削ぐというアクションで、そのためにはゴールが手っ取り早い。相手が引いてブロックを作ってくるのか、はたまた血気盛んに前線からボールを追いかけてくるのか、そのあたりは蓋を開けてみなければわからない部分もある。ただ、相手がどのような戦術であれ、マリノスは力で圧倒しなければいけない一戦だ。

天皇杯という大会は、毎年必ずアップセットが起きる。昨年、マリノスはJ2のギラヴァンツ北九州に不覚をとった。この失敗を繰り返してはいけないし、ジャイアントキリングの対象になるほど悲しいことはない。そして来季のACLにつながる重要な大会として、順調な開幕を飾りたい。

 

【この試合のキーマン】
MF 28 喜田 拓也

サガン鳥栖戦前日に脳震とうというアクシデントに見舞われ、その鳥栖戦と続く浦和レッズ戦で先発から外れた。浦和戦は途中出場したもののコンディションは万全ではなく、翌日に行われた金沢星稜との練習試合は45分間出場。そしてこの一戦で本格復帰となる。
不在の間に中町公祐と三門雄大が安定したパフォーマンスを見せ、三門がスライドしたことでトップ下に入った中村俊輔が快活なプレーで結果を残した。エリク・モンバエルツ監督の寵愛を受けているとはいえ、自身もピッチ上で結果を残さなければ周囲に認められないだろう。
この試合をきっかけに再び上昇気流に乗っていけるか。アクシデントで参加を断念したU-22日本代表の活動復帰に向けても、大切な90分間になるに違いない。

 

 

 

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