「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

セットプレーから失点し、セットプレーを生かしきれなかった [2nd10節新潟戦レビュー] 藤井雅彦 -1,818文字-

 

時系列で振り返る。

序盤から拮抗した展開だった。ペースを握れなかったのはマリノスだけでなく、相手も同じこと。[4-4-2]の布陣のアルビレックス新潟に対して、マリノスは前の4枚が相手の4バックをそれぞれマークするような戦法だった。それによって伊藤翔と中村俊輔以上に両サイドMFの守備の負担が増えた。アデミウソンと齋藤学は自陣深くまで戻らざるをえない場面が増え、攻撃面で本来の力を発揮できなかった。4連勝時と比較したときに、彼らはボールに関与する回数そのものが少なかった。

4-3-2-1_2015 その前半に、本来なら数的優位になっているはずだった。36分に警告を受けたレオ・シルバはその後にカウンターのピンチを防ぐためにファウルを犯した。このワンプレーはすでに警告が出されていなければ確実に警告を提示されたであろう行為で、拮抗した試合展開と選手の重要性を考慮した主審が、とっさに判断にカードを出さなかったものと思われる。結果的にレオ・シルバは後半ロスタイムに退場したが、残り時間を考えたときに大きな違いがあるのは言うまでもない。

個人的な見解としては、こういった判定も含めてサッカーである。したがって失点シーンのような出来事も真摯に受け入れなければいけない。ゴールした大井健太郎のマーカーは小林祐三で、失点後に前半終了のホイッスルが鳴り響き、その後も主審に抗議していた。おそらくシュートシーンの直前の接触プレーがファウルであることをアピールしたのだろうが、残念ながら後の祭りである。ゴール前は戦いだ。仮にファウルがあったとしても、それが認められない場面は山ほどある。小林は、守備力はもちろん経験値のあるプレーヤーだけに、チームとしては誤算の失点だった。そして不必要なファウルでセットプレーの機会を与えてしまった喜田拓也は猛省が必要だろう。

 

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次の潮目は59分で、新潟のレフティー加藤大が立て続けに警告を受けて退場になった。とはいえ、それ以前からビハインドのマリノスが相手を押し込む展開で、その勢いをさらに加速させる退場となった。そうした流れで64分にアデミウソンが痛快なミドル弾を決める。決定的ではないシーンを決定機、いやゴールに変えてしまうところがスペシャリティである。シュートの軌道もさることながら、ひざ下の振りの速さは尋常ではない。対応した相手選手がブロックのタイミングを合わせられないのも当然だ。

新潟4-4-2 残す焦点は、マリノスが勝ち越しゴールを決めるかどうか。だが、78分に中村俊輔がベンチに下がってしまう。これについては試合後に中村自身が明かしたように「両足のふくらはぎがつったような感じで、自分から(交代をお願いした)」。それまでのハイパフォーマンスを見ると無念ではあるが、筋肉系の負傷で再離脱する事態は避けなければいけない。指揮官が交代させるのは無理もない。

問題はその人選と、その後の采配にあった。仲川輝人の起用そのものは納得できる。天皇杯2回戦・MIOびわこ滋賀戦でのパフォーマンスを見れば期待するのも当然。ただ、相手は数的不利の状況のため、引いてしまってスペースが見つけにくい状況だった。それえも仲川のクイックネスで突破を狙うのは悪い策ではないが、そのときはファウル獲得に備えてリスタートのキッカーが欠かせない。仲川の投入とセットで藤本淳吾の起用を模索すべきだったかもしれない。この展開ならボランチを1枚削っても問題なかったはずだ。

気がつけば、一時期勝利から見放されていたときのようにセットプレーから失点し、セットプレーを生かしきれなかった。ここ最近は中村を起点とするセットプレーが冴え渡っていただけに、コントラストが明確になった。新潟のパフォーマンスは総じて高かったと感じたが、それを突破できなければ上位には手が届かない。連勝を『4』で止めてしまった。

 

 

 

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