「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

だが、マリノスには中村俊輔がいた [2nd13節仙台戦レビュー] 藤井雅彦 -1,464文字-

過去のベガルタ仙台戦とは様相の異なるゲームとなった。これまでは互いにソリッドな組織を築き、野球に例えると牽制球を投げ合うような試合展開が常であった。ゴール数も両チーム合わせて2~3点に収まり、ミス絡みやセットプレーで試合が決まるケースも多い。それと比較すると、試合序盤から両ゴール前を行ったり来たりの展開で、90分間を通して決定機も多かった。結果として計4ゴール決まり、3点取ったマリノスが勝利。しかしながら仙台の決定機も多く、ゴール前の際どいシーンは過去の対戦よりも間違いなく多かった。

4-3-2-1_2015 戦術やコンセプトを抜きにして、そういった展開で決め手となるのは最終局面における個人の精度である。先制点こそ三門雄大のロングシュートが相手DFに当たってコースが変わる幸運だったが、それにしても三門の思い切りの良さの産物である。逆に失点場面はスローインからの流れでやや不用意だった。とはいえ、左サイドに流れてからのハモン・ロペスの高速クロスはリーグ屈指の破壊力を持っていた。そのファーストチャンスを決めた相手は素晴らしかった。

だが、マリノスには中村俊輔がいた。失点後はマリノスが仙台を押し込む展開で、ボランチに下がり気味の中村がフリーになった。すると距離がある位置でも迷わずシュートを選択。それが無回転ミドルなのだから六反勇治はひとたまりもない。ゴール前にこぼしたところに、相手最終ライン背後へのパスを要求して走り込んでいだ小林祐三がきっちり詰めた。そしてダメ押し点となる直接FKである。中村にしてみれば、納得いくコースではなかっただろう。ただ、六反との駆け引きですでに勝利していた。難しいシュートを、いとも簡単に決めてしまう。まさしくプロの芸当である。

決めたのは中村だが、圧倒的な個人能力でファウルを獲得したアデミウソンの功績も見逃せない。この試合のアデミウソンは伊藤翔が良い動きをしてもなかなかパスを出さず、視野が狭くなりがちだった。その功罪はたしかにあった。だが、結果的に好位置でファウルを獲得し、それがチームの唯一無二の武器を生かすきっかけとなったのだからオフェンスプレーヤーらしい仕事といえる。結果で評価されるポジションの選手らしいひと仕事だ。

 

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仙台4-4-2 個人についてもう一人触れると、この試合がリーグ戦初先発となった天野純も決して悪くなかった。中盤がやや間延びした展開に助けられた面もあり、前半はシュートチャンスに何度も絡んだ。高精度クロスも披露し、アデミウソンとのコンビネーションもまずまず。後半に入るとさすがに消える時間帯が増えたが、全体を通してみれば及第点の出来といっていいだろう。次節以降、齋藤学が復帰すれば出場機会は限られるが、未来への可能性は少なからず示したように思う。

チームとしては、これで8試合負けなし。内訳は6勝2分と立派な成績だ。この流れは、別大会ではあるものの唯一のタイトル獲得可能性の場である天皇杯に生かさなければならない。

 

 

 

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