「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

密かな宣言 『中村のアシストからボンバーヘッド』 [2nd14節神戸戦プレビュー] 藤井雅彦 -1,669文字-

天皇杯3回戦・大分トリニータ戦から中2日の強行軍で2ndステージ第14節・ヴィッセル神戸戦を迎える。水曜日の大分戦では延長戦を含む120分間戦い、伊藤翔のゴールでなんとか勝利を手にした。しかし、その後の後泊や飛行機での移動など負担は大きく、神戸戦が14時キックオフということで試合間隔は非常に短い。エリク・モンバエルツ監督は「コンディションは問題ない」と一蹴したが、約半数の選手はベストコンディションとは言い難い。

4-3-2-1_2015 先発の顔ぶれは前節のベガルタ仙台と変わらないだろう。右MFには引き続き天野純が入る模様で、兵藤慎剛や藤本淳吾はベンチスタートとなる。仲川輝人は右ひざに痛みを抱えておりベンチからも外れる模様だ。また、右足首痛が長引いている齋藤学は全体練習に合流しているものの万全の状態ではない。攻撃の核となる背番号11の不在は大きな痛手だが、チーム全体でカバーするしかないだろう。

最近8試合を6勝2分という好成績で来ているマリノスは、少しずつチームの型が定まってきた。それはやはり中村俊輔中心のチームという意味であり、ビルドアップは中村を経由することでリズムが生まれる。逆に中村がいないチームは単調になりがちで、三門雄大と喜田拓也がもうひと回り成長しないとチームとしての進化は難しいかもしれない。中村頼みからの脱却という意味でも彼らにかかる期待は大きいが、中村の存在の大きさを考えると口で言うほど簡単なことではない。

ビルドアップの問題さえ解決すれば、オフェンス陣の調子は悪くない。特にアデミウソンは個の能力の高さで相手を圧倒している。来季の所属先が気になる時期ではあるが、残り4試合と天皇杯も攻撃の主役になってくれるはずだ。また、天皇杯で格下相手に連続ゴール中の伊藤も良い状態をキープしている。昨季同様にシーズン終盤に尻上がりに調子を上げ、ストライカーらしさを増している。

 

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神戸3-4-2-1 そして、この試合でJ1通算500試合出場を達成するであろう中澤佑二が守備を引き締める。中澤はこれまでの499試合すべてに全力投球し、勝利を目指してきた。その中にはタイトルがかかった大一番があり、逆にシーズン終了間際の消化試合も含まれていただろう。だが、中澤にとっては同じ1試合であり、90分だった。「チームを勝たせる選手になりたい」。いまもなおそう願い、日々成長しているのが背番号22だ。

泣いても笑ってもリーグ戦は残り4試合。その間には天皇杯4回戦(対戦相手未定)もある。タイトルへの道のりは険しいが、来季に向けて一つでも多くの成功体験を得たいところ。神戸とネルシーニョ監督の出方は不気味ではあるが、ここで立ち止まれば残りのリーグ戦は消化試合になる。総力戦で勝ち切りたい。

 

【この試合のキーマン】
MF 10 中村 俊輔

いまさらではあるが、あらためて注目したいプレーヤーだ。ゲームコントロールという点でこの人の右に出る者はおらず、ボールを失わない技術も健在である。中村がいる、いないでチームのパフォーマンスが大きく変わるのは最近のゲームを見ても明らか。
言うまでもなくリスタートの質は極上で、ゴールまで20~25メートル付近の位置でFKを獲得すれば高い確率でゴールネットが揺れる。試合前日の練習でも榎本哲也を相手に何度もFKを突き刺し、相変わらずボールとの相性の良さを見せつけていた。
この試合は中澤佑二のJ1通算500試合出場のゲームで、セットプレーの場面では背番号22をターゲットにすることを密かに宣言。こんなにうまい話はそうそうないだろうが、いまの調子ならば『中村のアシストからボンバーヘッド』を期待せずにはいられない。

 

 

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