「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

広島と鹿島には合わせて4敗。それはそのまま年間順位の勝ち点差と言っていいだろう [2nd16節鹿島戦レビュー] 藤井雅彦

 

 

失点場面だけを切り取ると、2失点ともほんの一瞬の隙を突かれた形で、守備組織が崩壊したわけではない。さらに、特定の選手の対応ミスというように断定することは難しく、結果論として「こう対応する手もあった」という程度のものだ。

鹿島4-4-21失点目は相手陣内で鹿島アントラーズのスローインを起点としていた。奪ったボールを下平匠が三門雄大に出そうとした瞬間、相手に奪い返された。その後、遠藤康の突破に熊谷アンドリューと中村俊輔が足を止めて対応し、間を割られる形に。遠藤の突進に小林祐三は絞り気味に対応したが、その逆を突かれるようにカイオにボールが渡り、左足で決められてしまった。

2失点目は中澤佑二が相手陣内に送った浮き球のボールをはね返され、中盤でボールを持ったカイオに対して三門がアタック。しかし、このタイミングが合わずに、カイオにとっては前方向の視界が開けた。ファビオと中澤は相手FWがいるため下がりながらの対応を余儀なくされ、ボールに制限をかけられずにフリーでミドルシュートを許してしまった。

いずれも理由ある失点だが、原因とは言い切れない。タイミングひとつで防ぐこともできただろうし、GK飯倉大樹にとっても完全にお手上げという類のシュートではなかった。試合終了間際に天野純が決定的な左足シュートを放ったが、形式だけ見ればあの場面のほうがよりゴールに近かったと思う。月並みな表現をするならば、決めきる力の差かもしれない。

それよりも失点に関係なく90分間をとおして力差を見せつけられたことのほうがショックだ。攻撃は自陣からのビルドアップと奪ってからの素早いショートカウンターの両方で質の差が垣間見えた。マリノスは立ち上がりからまったく前にボールを入れられず、伊藤翔やアデミウソン、あるいは齋藤学が孤軍奮闘するだけ。彼らが個の能力でどうにか前を向けた場面のみ、チーム全体を押し上げることができた。なかなかシュートにたどり着かないのも当然である。

 

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4-3-2-1_2015一方の守備は、自ら消極的な戦法を選んでしまった感がある。試合開始から鹿島ボール時にまったく制限をかけようとせず、自陣に引いているだけ。川崎フロンターレはそれでもボールをつないで前へ出てくるが、鹿島は出てこない。特に先制してからは余計に出てこない。後ろで静かにボールをつなぐだけで、マリノスが闇雲にプレスをかけてくる状況を待つ。そうなれば打開するのは簡単で、マリノスにしてみればボールの奪いどころを作れなかった。

完敗といえる内容ではあったものの、それで直近10試合を8勝2分と突き進んだ事実が消えるわけではない。この間に積み上げた勝ち点には間違いなく意味と価値があり、敗れても2ndステージの順位は3位のまま。あまり意味のない3位ではあるが、中位に転落したわけではない。最終節をしっかり勝てば3位でフィニッシュできるだろう。

しかしながら、今季は強いチームに勝てなかった。サンフレッチェ広島と鹿島には合わせて4敗を喫した。それはそのまま年間順位の勝ち点差と言っていいだろう。鹿島戦について語るとすれば、2試合とも手も足も出なかった。ぐうの音も出ない敗北を2試合も喫してしまった。

ここまで可能性を残していたマリノスだが、最後は力が足りなかった。そしてリーグ戦での無冠が確定した。

 

 

 

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