「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

アデミウソン、去就について語る。天皇杯は中村ベンチスタート [天皇杯4回戦/神戸戦プレビュー] 藤井雅彦

 

完全トーナメントの天皇杯は負けたら終わりの大会だ。すべてのゲームが一戦必勝で、延長戦に突入しようが、PK合戦になろうが、勝ち上がれるかどうかがすべて。次のステージにつながる内容よりも、その瞬間の結果が重要視される。したがってアスリートにとっては最もモチベーションを高めやすいシチュエーションのはずである。

4-3-2-1_2015 しかし現在の日本サッカーのカレンダーにおける天皇杯の価値はあまり高くない。すべては施行時期の問題に集約される。1月1日の元日に決勝戦が組まれていることによって無理が生じる。現実的には勝ち上がるほどオフ期間が短くなり、来季の始動やリーグ開幕に影響を及ぼす。2015シーズンの戦いであると同時に、2016年の準備も進めなければいけないタイミングにもかかわらず、だ。

さらに今シーズンはチャンピオンシップやクラブワールドカップの開催が11月下旬から12月中旬までに予定されており、昨年よりもリーグ戦のシーズン終了が早い。結果としてリーグ最終節から天皇杯準々決勝まで1ヵ月以上の空白期間が生まれてしまう。選手からしてみればコンディションとモチベーションの維持がとても難しい。準々決勝(12月26日)まで進出すれば、その後は準決勝が12月29日、決勝戦は1月1日。つまり中2日での3連戦という不思議なスケジュールが組まれている。

加えて言うと、この時期は監督や選手の去就についてピッチ外のほうが慌ただしくなる。これについてはマリノスも例外ではなく、昨日今日はアデミウソンが自身のSNSで来季の身の振り方について語ったことがインターネット上を騒がしているようだ。

 

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それについてアデミウソン本人は「事実を書いただけ」と一笑に付しつつも「(来季もマリノスで)プレーしたい気持ちはある。でも、それだけでは叶わない」と複雑な心境を吐露した。これを受けて嘉悦朗社長は「現時点では決まっていない。クラブとしてやるべきことをやっている。今後については関係者と話を進めている」と話すにとどめている。

神戸4-4-2アデミウソンはここまでリーグ戦32試合に出場し、チームトップの8ゴールを記録。明日のヴィッセル神戸戦では久しぶりに1トップで先発濃厚となっている。シティ・フットボール・グループとの提携がなければやってくることはなかったブラジル人アタッカーの能力の高さは誰もが知っている。リーグ最終節と天皇杯を残すものの、来季の去就について気になるのは当然のこと。そういった季節である。

なお、明日の試合はトップ下に藤本淳吾が入り、中村俊輔はベンチスタートとなる。アデミウソンが1トップにスライドすることで、右MFには天野純が入るだろう。これらの起用法についてエリク・モンバエルツ監督は「カップ戦は延長戦もある。そういった時間配分を考えなければいけない」と狙いを語った。

ピッチ内に集中するのが難しいタイミングだからこそ、プロとしての姿勢を問われる。真面目で実直な性格のアデミウソンは、間違いなく全力を尽くす。来年1月1日までトリコロールのユニフォームに袖を通すことを願い、もちろん契約上もそうなっている。そして、そのプレーを来季以降も見られる保証は、現時点ではない。

ひとまずは明日の試合結果次第でスケジュールが概ね確定する。それによって来季に向けての動きも加速するだろう。
【この試合のキーマン】
MF 7 兵藤 慎剛

 左足親指の打撲から復帰し、この試合ではボランチで先発することが濃厚になっている。今週は主力組のボランチから一度も外れることなく練習を消化し、三門雄大と息を合わせることに集中していた。
鹿島アントラーズ戦では後半途中から出場し、チームに活力を与えるようなアグレッシブな動きを見せた。あのプレーを状況や時間限定ではなく、試合開始から見たい。それができれば指揮官の言う「ダイナミズムをもたらすだろう」という言葉を体現することになる。
先日の試合でリーグ通算250試合出場を達成したが、今季の起用法には決して満足していないはず。小さな負傷も何度かあり、チャンスを逃した場面もある。シーズン終了間際ではあるが、何か爪痕を残したい。兵藤慎剛にとって重要な90分が始まる。

 

 

 

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