「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

アデミウソンの眼には大量の涙が浮かんでいた  / ・・・監督は続投 [2nd最終節松本戦レビュー] 藤井雅彦

 

 

今季最多44.226人の観客を動員した2015シーズン最終節・松本山雅戦はスコアレスドローに終わった。22分に中村俊輔の右CKを伊藤翔がヘディングで合わせた場面、そして後半に入って81分に再び中村のクロスを伊藤が頭で狙い、83分にはアデミウソンのグラウンダークロスから齋藤学が右足で決定機を迎える。このうちのどれかが決まっていたら、おそらくマリノスは勝利していたのだろう。

4-3-2-1_2015 しかし現実はいずれのシーンもゴールネットを揺らすことはなかった。先週の天皇杯4回戦・ヴィッセル神戸戦の前半も同じような展開だったが、この結果にエリク・モンバエルツ監督が「今日の試合が今季を象徴していた」とうなだれるのも無理はない。現実的にチャンスを作っているのに決めきれない。残念ながら、これでは試合に勝てない。

端的に言えば、今季もマリノスにはストライカーがいなかった。伊藤と齋藤、そしてアデミウソンの3選手で合計21ゴールを挙げており、それは悪い数字ではない。だが、その一方で彼らはチャンスを数多く外した。チャンスの数だけを考えれば、それぞれが二桁得点していてもおかしくなかったが、現実には誰も手が届いていない。月並みな表現を用いるならば決定力が足りなかった。マリノスには純然たるストライカーの要素が足りなかった。

年間で最低15点、欲を言えば20点取れるFWの獲得は、今オフの至上命題といえるだろう。もう「守備は堅かったが、得点数が足りなかった」という趣旨の総括は聞きたくない。フロントはそのための努力をしなければいけない。良い選手を獲得することが目的ではなく、点を取れる選手を獲得する。そのほかのクオリティについては二の次でもいい。ゴールこそ仕事、と言い切るストライカーが必要だ。

脇を固める人材も重要だが、そのうちの一人でいてほしいアデミウソンの去就は極めて微妙である。

 

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試合後、ゴール裏のサポーターの呼びかけに応えて登場。しかし、その眼には大量の涙が浮かんでいた。ミックスゾーンでのメディア対応では「まだどうなるかはわからない」と明言を避けたが、サポーターの前での涙は何を意味するのか。嘉悦朗社長は「来季もいてくれたらこんなにありがたいことがない。今後は期限付き移籍の延長や買い取りという話になるけど、我々にはその原資がない」と今後の見通しが厳しいことを明らかにしており、来季もマリノスの一員としてプレーする可能性はやはり低い。

松本3-4-2-1 そして嘉悦社長は来季の監督人事についても、ようやく口を開いて明言した。

「監督は続投ということ」

 年間7位という順位は昨季と同じだが、2ndステージ途中から破竹の勢いで勝ち点を積み上げたこと、それが「右肩上がりなら来季に期待がもてる」(嘉悦社長)という理屈である。前述したストライカー獲得や指揮官へのサポート体制などに課題は残すが、ひとまずはモンバエルツ体制で2年目を迎えることになる。

今日23日、クラブは正式にモンバエルツ監督の続投を発表する見通しだ。それは2015シーズンが終わった翌日に、2016シーズンへの一歩目を踏み出すという意味である。

 

 

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