「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

モチベーションはこちらに分があるはず [藤井雅彦] 天皇杯浦和戦試合直前プレビュー

 

「けがをしていないヤツは元気」(栗原勇蔵)

こんなチーム状態になるとは予想できなかった。シーズン終盤はチーム状態が上向きで、最終節前に負傷したマルキーニョスも15日の天皇杯には間に合うと思われていた。

しかし、蓋を開けてみればマルキーニョスは負傷してからというものの一度もピッチに姿を現していない。検査の結果、大事には至らなかったが、かといってプレーできる状態でもない。室内調整が続き、ピッチに立つにはまだ時間がかかる。

それだけではない。今週に入り、火曜日の練習で齋藤学が右ひざを負傷。筋肉系ではなく、あくまで接触プレーによる外傷だ。ただ、週末には間に合うほどの軽傷でもない。試合前日の段階ではランニングできるまで回復したが、内側側副じん帯という箇所は前後動作には耐えられても左右の動作に痛みが伴う。つまりボールを蹴る動作が満足には行えないのだ。これでは試合出場は不可能。本人は「どうにも出たかった。みんなに勝ってもらって、自分は次に備えたい」と無念のコメントを残している。

さらに試合前々日恒例の紅白戦でドゥトラが左ふくらはぎを痛めた。こちらは筋肉系の故障で、「慢性的な疲労がたまっていたのかも」と樋口靖洋監督。39歳という年齢ながら4月下旬の加入以降はほとんどのゲームをフルにこなしてきた。目に見えない疲労があったはずで、気温低下に伴って身体に異変が起きてもなんら不思議ではない。齋藤同様、残念な離脱となってしまった。

これらの離脱者発生によって、樋口監督はスタメン選考に頭を悩ませている。間違いないのは1トップの位置にリーグ最終節同様、小野裕二が入ること。火曜日の時点では大黒将志や谷口博之という選択肢もあったのだが、結局はこれまでの流れを重視する指揮官らしい決定に落ち着いた。小野に関しては周囲との関係性に不安はない。問題は相手との力関係で、サガン鳥栖ではなくリーグ3位の浦和レッズだけに一筋縄ではいかないだろう。そこは彼の伸びしろに期待するしかない。

最大の懸案事項は齋藤の抜けた左MFとドゥトラがいない左SBだ。

左MFについては紅白戦の段階では森谷賢太郎が一番手と見られる。ただし彼も慢性的な負傷を抱えており、出場可否は直前までわからない。仮に森谷が出場できない場合、狩野健太が入ることになりそうだ。今シーズン限りでの契約満了が発表されているだけに、最後に置き土産を残すプレーを見せられるか。森谷の状況次第となるため、遠征には松本翔を加えた19名が帯同する。

左SBは順当ならば金井貢史。言わずもがな、ドゥトラ不在時の序盤はレギュラーだったから心配はない。ただ、紅白戦2本目は比嘉祐介を起用していた。比嘉がレギュラー組に入ることは最近では記憶がなく、何を意味するのか。樋口監督は多くを語っていないため詳細は不明なのだが、比嘉のスタメン抜擢の可能性もゼロとは言い切れないだろう。

マルキーニョスという前線の収まるどころを失い、齋藤&ドゥトラという左サイドでボールを前へ運べる選手を同時に欠く。これはマリノスにとってはチームの根幹を揺るがす緊急事態だ。森谷や狩野はスペースランニングを得意とするタイプではなく、ビルドアップの際に裏へ抜ける選手がいない。カウンターでもスペースを有効活用できない可能性が高い。攻め手を失い、ボールロストし、浦和の連続攻撃を受けるかもしれない。

苦しい状況を乗り越えなけれベスト8入りはできない。一方でチームとしての上積みを発揮する格好の舞台とも言えるだろう。「けがをしていないヤツは元気」と栗原勇蔵。すでにACL出場権を獲得している浦和と比較したとき、モチベーションはこちらに分があるはずだ。とはいえオフを長く確保したいという心理も働く時期である。いつも以上に“敵は内に潜んでいる”ゲームとなる。

 

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