「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

4-2-3-1への帰還 [2nd5節磐田戦プレビュー]

 

予定調和的に[4-2-3-1]へと帰還した。試合前日の練習では一度も2トップを採用せず、中村俊輔をトップ下に置く従来の布陣に戻った。もっとも「システムは同じ。選手によって性質が変わる」としつこく話す指揮官は、中村を2トップの一角に置いた[4-4-2]と考えているのかもしれないが、もはやどちらでもよい話だ。

 中村をその位置に置けば、ビルドアップ時に自然と下がってくるのは明白。結果的にもう一人のFWが前節で孤立することになり、セカンドトップタイプのカイケではパワーが不足している。いや、伊藤翔や富樫敬真でもたった一人で相手の最終ラインを困らせることは難しい。ラフィーニャやアデミウソン、マルキーニョスといった選手たちでなければ、マリノスの1トップは務まらない。

もちろん中村を起用するメリットもたくさんある。サンフレッチェ広島戦ではセットプレーという目に見える形で効果が表れた。また守備面を考慮したときに、経験値とサッカーIQを生かしてポジショニングを変えることができる中村の存在は貴重だ。状況に応じたサッカーが展開できるのは、彼の存在によるところが大きい。

一方でデメリットがあるとすれば、それは2ndステージに入ってからエリク・モンバエルツ監督が強調してきた『縦への速さ』である。これこそ指揮官が話す選手の特性の問題だ。中村が相手の背後を狙ってランニングすることに意味はあるが、脅威になりえない。それならば富樫や伊藤をカイケと組ませたほうが効果的だろう。

 

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 結局のところチームとして何を持ち、何を捨てるか。取捨選択の問題である。どのシステム、メンバー構成にしても攻撃の核となる齋藤学の言葉は的を射ている。

「[4-4-2]と[4-2-3-1]を使い分けるのはいいけど、やりたいことが変わり過ぎてもよくない」

 現時点では変わり過ぎているのだろう。つまり選手ありきのサッカーでしかない。これでは『首位』という看板を長く掲げることは難しいのではないか。

もっとも1stステージで対戦した磐田がそうだったように、プレッシャーがかかっていないにもかかわらず最終ラインを押し上げて背後にスペースを提供してくれるなら、システムや人選はさほど大きな問題にならない。むしろ杞憂に終わる可能性が高い。

 

 

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