「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

[無料記事] 今季のホーム動員を振り返る-蒼井真理の独自視点-

 


昨季のマリノスは震災や降雨の影響もあり、ホーム観客動員が前年比81.9%(入場料収入は9.3億円から8億円に減少)という非常に厳しい数字に終わった。今年8月に公開された2011年度決算は、当期純利益が5億8500万円の赤字、累積赤字は10億8500万円で、Jリーグ40クラブの中でも最大の債務超過額となっている。

2012年、嘉悦社長は今季の動員について「一昨年のような増加基調(※前年比116.4%)を取り戻し、2年後には日本一のレベルに到達したい」と年頭に決意表明したが、ホーム6試合を残した21節終了時点で平均動員は2万人を割り込み、前年比92.7%(三ツ沢開催を除外しても前年並み)と苦しい状況が続いていた。

◆2012年ホーム動員数

02節 仙台戦 19,488
04節 鹿島戦 22,126
06節 大宮戦  7,101 ※三ツ沢
08節 神戸戦 21,054
10節 札幌戦 24,183
12節 G大戦 25,241
14節 F東戦 23,273
16節 名古戦 26,133
17節 C大戦  9,751 ※三ツ沢
19節 清水戦 24,187
21節 新潟戦 11,992 ※三ツ沢
22節 川崎戦 33,584
25節 浦和戦 34,954
28節 広島戦 36,412
29節 磐田戦 21,310
32節 木白戦 22,647
34節 鳥栖戦 26,642

1試合平均 22,946人 (前年比 109.1%)

しかし22節の川崎戦から3試合連続で3万超の動員を達成。クラブの形振り構わぬ巻き返し施策も奏功し、前年比109.1%の動員を達成してシーズンを終えた。日産スタジアム開催で2万割れは仙台とのホーム開幕戦のみ(昨季は4試合)で、3万超の試合は昨季から1試合増えて3試合となった。

ただ残念なのは、その3万超を達成した3試合で良い結果を得られなかったことだ。川崎戦は前半2点のリードを後半に追い付かれてドロー。浦和戦は今季唯一の逆転負け。広島戦はスコアレスドローだった。この3試合で、磐田戦(4-0で勝利)のようなエンターテインメント性の高い試合ができていれば、ラスト3試合の動員も、もう少し伸びたかもしれない。

◆ホーム平均動員ランキング(前年比)

1位 浦和 36,634 (108.0%)
2位 新潟 25,018 (96.0%)
3位 F東 23,955 (136.4%)
4位 横浜 22,946 (109.1%)
5位 川崎 17,807 (102.7%)
6位 広島 17,721 (134.2%)

マリノスの前年比109.1%動員は、J1全体の前年比111.1%を下回るが、今季昇格したFC東京、札幌、鳥栖を除いた15クラブの前年比106.2%より高い数値を記録した。一度は首位に立った昨季に対し、序盤の低迷が響き一度も優勝争いに絡めなかった(33節までの最高順位は5位)わりには健闘したと言える。

◆マリノス平均動員数の推移

2001年 20,595
2002年 24,108
2003年 24,957
2004年 24,818
2005年 25,713
2006年 23,663
2007年 24,039
2008年 23,682
2009年 22,057
2010年 25,684
2011年 21,038
2012年 22,946

今季は前年比109.1%の動員を達成したが、ようやく3年前の数値に戻したに過ぎない。過去10年間の動員実績と比較しても低い数値であり、嘉悦社長が近年目標に掲げる「2010年のような増加基調(※前年比116.4%)を3年以上継続し、日本一の動員レベルを達成する」にはドラスティックな改革が必要になるだろう。

しかし度々指摘するが、クラブの動員は年間チケット販売を中心に少しずつ着実にベースを築きながら伸ばしていくべきものであり、単年で15%以上の増加など「スター選手の獲得」や「J2からの昇格1年目」、「万年中位以下のクラブがシーズン序盤から最後まで優勝争いに絡む」などの特需がなければ達成できるものではない。まして、それを2年、3年と継続することをクラブの運営計画に盛り込むのは現実的でない。

今季のチームが、地道なスタイル確立への取り組みを続ける中で序盤の低迷や夏以降の連敗を乗り越え、シーズン終盤に少しずつコンセプト達成度を上げてゲーム内容を充実させたのと同じことだ。クラブが地域に密着し、安定した動員ベースを築くにも、革新的な手法や近道は存在しない。

港北区の小学校への選手訪問やホームタウンでのイベント参加など、3年後、5年後に実を結ぶような地道な取り組みの強化は素晴らしい。嘉悦社長以下クラブには、目先の結果ばかりにとらわれず、より中長期的な視点に立った積み上げの継続を期待したい。

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