「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

交代カードを有効活用せよ [藤井雅彦] 天皇杯名古屋戦試合直前プレビュー


交代カードを有効活用せよ

今週のマリノスも選手の出入りが多かった。まさにシーズン終盤の様相で、アクシデントは避けて通れない。以前から述べているように天皇杯は開催時期の問題もあってモチベーションを高めることが難しい。それと負傷多発は決して無関係ではないだろう。

11日の火曜日に右ひざ内側側副じん帯を痛めた齋藤学は確実にコンディションを戻してきた。浦和戦翌週から少しずつ全体練習に加わり、21日の紅白戦は控え組ながらプレーすることもできた。しかしながら痛みが完全に消えたわけではなく、同時に不安を抱えながらプレーしている。それを見た樋口靖洋監督は「最終チェックのところで不安が拭えない」と苦い表情。これによって今回の遠征メンバー18人に入らないことが決定した。さらに青山直晃もひざに痛みを抱えており、金曜日の紅白戦を回避した。齋藤と同じく遠征メンバーから外れ、ベンチには本職のCBがいない状況となってしまった。

一方で朗報もある。まずはなんといってもマルキーニョスの復帰だろう。11月下旬のコンサドーレ札幌戦で左太ももに違和感を訴えてからはまったく練習グラウンドに姿を現さなかった。それが浦和に勝利し、2連休明けの19日から突如としてランニングを開始。20日にはゲーム形式に参加し、21日には紅白戦を消化。「リバウンドもなく、まったく問題ない」と樋口監督は喜び、マルキーニョス自身も「通常通りとはいかないけど、そんなに悪くなかったと思う」と安堵の表情を浮かべた。そしてもう一人の外国籍選手であるドゥトラも復帰。左ふくらはぎの筋肉系の故障だっただけに気掛かりではあるが、少なくとも紅白戦ではエネルギッシュなプレーを見せていた。

こうして出揃った素材をどう組み合わせ、どう起用するか。形式はリーグ戦の90分絶対決着ではなく、延長を含めた120分、あるいはPK戦にもつれ込む可能性もある。相手が「個々のポテンシャルはJリーグでナンバーワン」(樋口監督)の名古屋であることを踏まえて、指揮官のベンチワークが再び問われる。

金曜日の紅白戦を見る限り、スタメン11人は予想フォーメーションに並べた顔ぶれになりそうだ。浦和戦からの変更は左SBが金井貢史からドゥトラに代わった一箇所のみ。契約非更新が決まっている狩野健太は引き続きスタメンで、1トップの位置には小野裕二。マルキーニョスはベンチスタートが濃厚だろう。

いまのチーム状態ならば相手陣内でプレーする時間を多く作れるはず。たとえボールを失っても攻守の切り替えで圧倒できる。マイボールの時間帯が長くなる想定で試合に臨んでも間違いではない。プレッシャーをかければ名古屋は特に両SBが前線の田中マルクス闘莉王目がけて早めにハイボールを蹴りこんでくる。だが、マリノスのCBは中澤佑二と栗原勇蔵だ。「ウチのCBは競り合いに勝ってくれる」と全幅の信頼を置いたのは中町公祐である。しっかりはね返し、中町と富澤清太郎がセカンドボールを的確に処理すれば、おのずとリズムはこちらへ傾く。

ただし、である。浦和戦では良いリズムの状態で兵藤慎剛と狩野が得点を挙げたが、今度も同じようにテンポ良く得点できるとは限らない。ゴールを期待してもいいが計算してはいけない。「難しい試合になる」という樋口監督の戦前予想は、リズムは悪くないがゴールできずに時間が経過する展開を指しているのだろう。いかにしてゴールをこじ開けるか。興味はその一点に集約される。

マリノスのベンチには優秀なカードが、しかも複数控えている。マルキーニョスを筆頭に大黒将志、そして谷口博之。得点能力という点で見れば、いまのマリノスに所属する選手の上から3選手であろう。タイプも異なり、使い方次第で効果を発揮する。樋口監督は「120分トータルで考える。それが一つのポイント」と締めくくった。相手の特性を鑑みてもタフな戦いは避けて通れなさそうだが、ベンチを含めた18人を有効活用することが勝利への近道となる。

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