「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

もし優勝した場合のMVPは文句なしで背番号1である [ルヴァンカップ準決勝第1戦 ガンバ戦レビュー]

 

 

アウェイでのスコアレスドローは悪い結果ではない。最悪の結果は、得点できずに失点した状況だろう。1-0や2-0といったスコアで完封負けするとかなり苦しくなる(当たり前の話だが)。だが、得点して負けるという結果も、それほど悪くない。思い浮かぶのは準々決勝・大宮アルディージャ戦である。第1戦を1-2で落としたが、ここで得たアウェイゴールが最後に威力を発揮した。

 では、スコアレスドローと1-2ならば、どちらが良かったのか。判断が分かれるところだ。ポイントは、どちらも第2戦が1-0ならば勝ち上がりを決められる点だろうか。2-0や3-0ならば言わずもがなである。今回は第2戦で勝てばいいというシンプルな条件である。大宮戦のときは勝ち方に少しだけ注文がついて、例えば第2戦を3-2で勝利しても、トータルでは敗北を意味していた。

それにしても、中村俊輔が負傷離脱し、さらに齋藤学は日本代表追加招集で不在。飛車角落ちの布陣なのは間違いなく、相手はリーグ上位の力を持つガンバ大阪だ。試合前の時点ではかなり劣勢になることも覚悟していた。だが蓋を開けてみれば、前半こそ押し込まれる時間が長くなったとはいえ、後半はマリノスペースで試合が進んだ。後半途中から足が止まったのはホームのガンバだった。

もちろん榎本哲也の神懸り的なセービングがなければ、マリノスは負けていただろう。倉田秋のダイレクトシュートと、丹羽大輝のヘディングシュートのシーンだ。いずれも榎本は片手でボールを弾き出し、ゴールを死守した。ルヴァンカップにおける彼のパフォーマンスは素晴らしく、もし優勝した場合のMVPは文句なしで背番号1である。

 

 

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 そういったピンチを差し引いても、後半のマリノスは効果的な攻めでガンバゴールへと迫った。トップ下の天野純が潤滑油となり、前半は消えていた前田直輝も後半になって持ち味を出した。中町公祐と喜田拓也のダブルボランチは攻守にアグレッシブで、セカンドボールへの出足も鋭かった。左SBの金井貢史は決定機こそ外したが、意外性あるオーバーラップとポジショニングで攻撃に厚みを加えた。

問題を抱えているとすれば、やはりゴール前での迫力だ。名前と存在だけで相手守備陣に脅威を与えられる選手は、残念ながらいなかった。この試合における伊藤翔は疲れの影響か精彩を欠き、途中出場の富樫敬真もヘディングを決め切れず。前田が「正直、勝てた試合だった」と話したことからも、攻撃陣としては一定の手ごたえがあったのだろう。あとはゴールを決める作業のみだった。

エリク・モンバエルツ監督の言葉を借りるならば「リアリティが足りなかった」。しかし、もう泣き言を言っても仕方がない。誰かがゴールを決めて、勝利する。それが第2戦で課せられたタスクだ。第1戦の結果について考えることよりも、内容面をポジティブに捉えたい。第2戦への準備とトータルでの勝敗は、第1戦の内容を継続できるか否かにかかっている。

 

tags: 榎本哲也

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