「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

今シーズンを象徴するホーム最終戦 [2nd15節 ガンバ戦レビュー]

 

今シーズンを象徴するようなホーム最終戦だった。

リーグ戦9試合ぶりに先発した富樫敬真の先制弾は「素晴らしい」の一言に尽きる。齋藤学の縦パスを斜めに走りながら受けようとした金井貢史。なぜこの位置にいたかはさておき、スルーの判断と精度が抜群であった。さらに富樫が最高のファーストタッチで丹羽大輝を置き去りにし、シュートのタイミングも絶品ときたら、結論はゴールしかない。

 齋藤が挙げたゴールも、自身の成長を示す価値あるものだった。米倉恒貴のバックパスミスと言えばそこまでだが、抜け目なく狙っていたからこその得点だ。本人も「ゴールは相手のミスだけど、そういうところを狙えていることがよかった」と納得の表情を見せていた。全体的にはあまり印象を残せなかった試合で、きっちりゴールを決めた。これまでできなかったことが、できるようになってきた。背番号11の確かな成長を感じるシーズン9ゴール目だ。この勢いで初めての二桁得点を達成してほしい。

それでも勝てなかったあたりが、現状での詰めの甘さだ。井手口陽介のミドルシュートは2本とも称賛に値する。中澤佑二が「左足であのコースに決めるのはマグレではできない。練習していると思うし、センスもある」と褒め称えた1点目。そしてこぼれ球を迷わずダイレクトで蹴り込んだ2点目。パク・ジョンスに当たってコースが変わるというラッキー(マリノスにとってはアンラッキー)もあったが、あのタイミングで打つという決断はなかなかできない。喜田拓也あたりはおおいに刺激を受け、今後の成長のヒントにしたい。

引き分けに終わった結果、リーグ戦でのタイトル獲得の可能性が完全に消えた。実質的には川崎フロンターレに敗れた時点で脱落していたが、数字上残されていた可能性も潰えた。残り2試合のモチベーションは、残されたタイトルである天皇杯への助走、そして来季への準備となる。

 

 

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 試合後にはホーム最終戦セレモニーが行われた。長谷川亨社長の挨拶には賛同しかねる部分も多々あり、「年間二桁得点できるFWの獲得は最優先課題」といった発言は不必要だ。動きは水面下で着々と進めればいい話であり、高らかにパフォーマンスする必要はない。トリコロールフェスタでも場違いの発言をしており、いま在籍している選手に失礼ではないか。

それとは別に、今オフの動向は要注目である。監督、選手の去就は例年以上に難航している感がある。ゴール裏のサポーターは『選手にもファンにも愛されるクラブ作りは出来ていますか?』と投げかけた。特にサポート歴の長いコア層は、いまのクラブについて感じるところがあるのだろう。

この日の試合を見てもわかるように、今シーズンは多くの若手が一本立ちした。ただ、それはほぼ無条件で試合出場の機会を与えていただけで、競争の末に勝ち取った席には見えなかった。『タイトル奪取の為に経験ある中堅ベテランの力も絶対必要』という横断幕には、実績ある選手の起用法やマネジメントに対する疑問が含まれていたように思う。

他クラブの動向についても、にわかに騒がしくなってきた。リーグ戦の最終結末こそ見えていないものの、ストーブリーグが本格的に始まろうとしている。

 

 

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