「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

ようやく天野純が決めた。このゴールを絶賛した選手がいる。小林祐三だ。 [天皇杯 新潟戦レビュー]

 

ようやく天野純が決めた。そのゴールが直接FKだったのは、ちょっと意外である。もともと左足のキックに良いものを持っていたのは間違いないが、取材している限りキッカーへのこだわりがあまり見えてこなかった。加入してからの3年間、居残りでプレースキックの練習をするシーンはほとんど見たことがない。中村俊輔という絶対的な存在がいる弊害と言ったら表現が悪いかもしれないが、どこかあきらめ半分だったのかもしれない。

 試合前日の金曜日、全体練習の最後にセットプレーの確認を行った。主力組はまず守備の確認を行い、その後にオフェンスに移行する。両サイドからCKとFKを蹴り、ゴール前の選手に合わせる練習だ。ボールの横には天野と兵藤慎剛がいた。天野のボールは何度も中澤佑二を正確に捉えた。そしてゾーンディフェンスで守るアルビレックス新潟に対し、精度の高いボールが入ればチャンスになるのは明らか。後半立ち上がりにも、右サイドからのFKが中澤に合っていた。そういった意味で後半アディショナルタイムへと続く予兆はあった。

それにしても、あの位置からあんな鋭い軌道でゴールネットが揺れるとは、正直思わなかった。ゴールまで距離があったことが好都合に働いた。ちょうどよく力が抜けて、無心でインパクトできたのだろう。

このゴールを絶賛した選手がいる。小林祐三だ。

「いいアングルで見させてもらった。オレはシュンさん(中村俊輔)のFKを一番いい席で一番数多く見てきたと思う。今日のFKは、それに負けず劣らずと言っていいでしょう」

 まだまだ中村には遠く及ばない。それでも可能性を示したことは間違いない。マグレでできるシュートではなかった。このゴールで一皮むけて、さらなる成長に期待が持てそうだ。大卒3年目で25歳の天野は、もう若手にはカテゴライズされない。立派な中堅選手として、チームを引っ張る存在にならなくてはいけない。

試合前、ゴール裏にはある横断幕が出た。

『ベテランを引退させるのはフロントではなく若手の台頭』

 

 

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エリク・モンバエルツ監督はピッチ上でのクオリティを見て試合メンバーを選んでいる。起用法が若手偏重に見えるかもしれないが、それでは中澤佑二がフルタイム出場している説明にならない。来季以降のことは誰にもわからないが、少なくとも昨季と今季に関しては中澤が重用された。その理由は日々のたゆまぬ努力によって加齢による能力減退を最小限にとどめ、いまもなおチームトップのCBだからである。

若手が出場機会を得るときに、主力選手の負傷離脱は大きなファクターとなる。中村が健在ならば天野の出番はなかったかもしれない。栗原勇蔵の負傷をうけて先発しているパク・ジョンスも同様だ。レギュラークラスにとっては負傷が隙となり、若手にとってはチャンスになる。ただ、チャンスをモノにできるかどうかは出場機会を得た選手次第なのだ。

もう一度記そう。J1チームを相手に、天野がようやく結果を出した。これに続くのはいったい誰か。楽しみは年末まで続くことが決まった。

 

 

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