「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

中町は「ルヴァンカップはどうにかして上へ進みたい」と鬼気迫る表情で言った。彼らにはまだリベンジの機会が残されている [ルヴァンカップ1節 C大阪戦レビュー]

 

 

手元の集計での被決定機は、失点場面の2つのみである。いずれもセットプレーからGK杉本大地がほぼノーチャンスのピンチで、ゴール前のマーキングミスとCKを与えたシーンに問題があった。「今日のゲームから言えることは、相手に流れの中でチャンスはほとんど作らせなかったということ」というエリク・モンバエルツ監督の言葉は正しいと同時に、栗原勇蔵の言う「セットプレーも含めてサッカー」も事実だ。

リーグ戦メンバーに食い込むために、あるいは指揮官からの信頼を勝ち取るために結果が必要なゲームだった。チームとしても個人としても目に見える結果を出すことで、序列を上げたいと誰もが思っていたはず。結果的にそれができなかったわけだが、同時に内容面での拙さも目立った。たしかに流れの中でのピンチはなかった。失点もセットプレー絡みなので修正可能だろう。しかし、そもそもチャンスの数が少なかったのは大きな問題だ。

最大のチャンスは後半立ち上がりの47分。中町公祐が左サイドに開いた仲川輝人にパスを送り、仲川は追い越して行く左SB高野遼へのダイレクトパスを選択。スペースに抜け出した高野からのグラウンダークロスをニアサイドに走り込んだ富樫敬真が触り、後方から侵入した中島賢星が左足でフィニッシュする。しかし「力が入り過ぎた」と唇を噛んだシュートは枠の上を大きく越えていった。

淀みのない一連の崩しだったが、そのほかのチャンスは仲川のパスに前田直輝が抜け出した65分のシーンのみ。チャンス2つをしっかり決めていればスコアと展開は大きく違っただろうが、2回のチャンスで2点取れるほどサッカーは甘くない。セレッソ大阪の守備がエネルギッシュだったことを差し引いても、ボールを持っている時間に対してチャンスの数が少ない。ボールを持っている時間にチャンスが少ないのは、リーグ戦メンバーも同じことが当てはまる。

 

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 現時点ではリーグ戦メンバーとカップ戦メンバーにパフォーマンスの差がある。それは中町公祐が指摘する「公式戦に出る経験値ではなく、自分たちのシステムへの経験値が足りていなかった」というコメント通りだ。リーグ戦メンバーの中核は一昨シーズンと昨シーズンに多くの実戦経験を積んでいるが、セレッソ戦に臨んだメンバーは新加入選手も含めて試合経験が少ない。経験値に長ける中町が埋没してしまった理由もそれと無関係ではないだろう。

タイキャンプで感じさせた若手の突き上げと躍動は、相手とのレベル差が許しただけだったのか。否、そうではないだろう。この敗北はスタートでしかない。彼らにはまだリベンジの機会が残されている。中町は「ルヴァンカップはどうにかして上へ進みたい」と鬼気迫る表情で言った。昨年の経験が生きている言葉で、厳しいグループリーグを突破してこそ得られる自信がある。

次の戦いは4月12日、相手はヴィッセル神戸。約1ヵ月という時間は短くもあり長くもあるが、パフォーマンス内容と試合結果を変えられるのは選手だけだ。この悔しさを晴らすゲームにしなければならない。

 

 

 

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