「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

3連勝ならず。チームの課題や修正ポイントも浮き彫りに [J8節 柏戦レビュー]

 

3連勝ならず。柏レイソルに0-2で敗れた。悔しい敗戦となったのは間違いないが、この結果になった理由や原因は火を見るよりも明らか。いまのチームの課題や修正ポイントも浮き彫りになった。

 第一に、齋藤学のパフォーマンスである。前節・サンフレッチェ広島戦もキレを欠いていたように見えたが、エリク・モンバエルツ監督は「フィジカル的な問題はない。守備で走っていたこともあって自分のプレーが上手くいかなかった」と見解を示した。だが、柏戦を見るかぎり原因は守備の負担だけではなさそうだ。昨季途中から続いている前残りはこの試合でも見られ、それは相手の右SBがあまりオーバーラップしてこなかったことも関わっている。

それなのに思うような形でボールを受けられず、仕掛ける場面そのものが少ない。相手に研究され、ケアされるのはエースなら当然のこと。その防御網を突破しなければ、日本代表や海外移籍の道は拓かれない。周囲のサポートや連係も不可欠だが、齋藤自身のスケールアップを望みたい。柏戦のラストプレーは、齋藤のカットインが不発に終わってボールを奪われ、そこからのカウンターで相手がフィニッシュした。このゲームでの齋藤を象徴するワンプレーであった。

広島戦から欠いたキレは柏戦までに戻らず、試合前日には右ひざ痛というアクシデントもあった。その痛みや影響がどの程度あったのかはわからないが、コンディションが万全ではないことは確か。それでもエースは休めない。試合の中で自身の突破口を見つけ出さなければならない。責任感が強い男ゆえに背負い過ぎてしまう恐れもあるが、ここは本人が踏ん張らなければ。

 

 

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齋藤の不調とともに、右サイドの槍であるマルティノスの出場停止も大きく響いた。広島戦で抜群のパフォーマンスを見せた直後だから落差が大きく感じられたのかもしれない。単独で50メートル以上を持ち運べる能力はやはり稀有。テンションにムラがあるとはいえ、彼にしかできないプレーが存在する。齋藤が本調子でないから、なおさら痛い不在だった。

この両ウイングを最大の武器とするマリノスは、自陣からのビルドアップにまだまだ工場の余地を残す。柏のように高い位置からプレッシャーをかけてきた場合、それをいなしてはがすだけの技量はない。なかなか前方向にボールが進まず、バックパスが増える。GK飯倉大樹にボールが戻った時点で、フリーでボールを受けられる選手はほとんどいない。足技に長ける飯倉はボールをさらしながら相手を引きつけ中距離のパスコースを探していた。ボールがタッチラインを割る場面も多かったが、難易度の高いプレーを行っているので仕方ない面もある。

 GKからのパスコースがない理由に、ヘディング能力を持った選手がいないことを挙げたい。ウーゴ・ヴィエイラは横からのクロスボールに強さを発揮するストライカーだが、後方からの例えばゴールキックをフリックする高さと技術、フィジカルはない。2列目に並ぶのが齋藤、天野純、前田直輝の3選手では、ヘディング能力を期待できない。後半に伊藤翔が登場してからはやや緩和されたとはいえ、それでも苦しい。クリスティアーノのフィジカル能力を目の当たりにすると、その差はあまりにも大きい。

そもそもビルドアップの方法にも問題がある。両ウイングがタッチライン際に張り出した時点でボール回しにはほとんど関与できない。トップ下に入るダビド・バブンスキーや天野純が機転を利かせて下がる動きを見せればいいが、それがなかった場合は4バック+ダブルボランチの仕事となる。いや、正確にはダブルボランチの片方は高い位置を取るので4バックとボランチ一人でそのタスクをこなさねばならない。これを日々のトレーニングと選手の起用法で解決するのならば、例えばビルドアップ能力に長けるパク・ジョンスの起用を考える一手があり、練習メニューにも創意工夫が必要となる。

すべて一朝一夕で解決できる事柄ではないが、指をくわえて見ているだけでは何も起きない。柏のプレー内容は事前から想像できたもので、それを超えられなかったという話。想定外の何かがピッチで起きたわけではない。いまのマリノスは3連勝に値するチームではなかったが、シーズン半ばや後半に達成できるよう精進あるのみだ。

 

 

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