「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

小野裕二、欧州へ -夢の移籍・想定外の移籍- 2013 移籍・補強・強化の真相 連載[3] (藤井雅彦) 

夢の移籍か、晴天の霹靂か

想定外のタイミングでマリノスの背番号10が海を渡る。トントン拍子に話が進み、小野裕二がベルギー1部のスタンダール・リエージュに完全移籍することが決まった。

小野の潜在能力を高く評価したリエージュ側は好条件を提示してきた。小野はユースからトップチームに昇格した2011年にマリノスとしては異例の5年の長期契約を結んでおり、残り3年の契約を残していた。完全移籍で獲得するには違約金が発生する。設定されていた違約金は推定2億円。いまの小野に対してこの金額を支払える国内クラブはおそらくないだろう。可能性があるとすれば、やはり海外クラブであった。リエージュはほぼ満額となる150万ユーロ(約1億8000万円)を用意。2017年6月末までの4年半契約を提示し、小野本人はもちろん、クラブ間合意に達した。

負けん気の強さを武器にする小野の性格は、まさしく海外向き。本人もそれを自覚しており、「オレは絶対に海外のほうが生きる」と言ってはばからない強いメンタリティを持つ。20歳になったばかりの若者は好奇心旺盛で決して物怖じしない。現時点で英語をほとんど話せないが、それも時間が解決するであろう。川島永嗣や永井謙佑がいなかったとしても、しっかり自立できるタイプだ。

実際のプレー面について言えば、これまで以上に結果で評価されることを自覚すべきだろう。33試合2得点という昨シーズンの数字では絶対的に足りない。オールラウンドな能力を所持していることが彼の最大の特徴とはいえ、結果を出さなければ試合に出られない。試合に出られなければ、運動量も守備力もボディコンタクトの強さも意味を成さない。海外移籍というユース時代からの“夢”を達成するだけでなく、夢の続きを追い求めてほしい。

小野にとってはまたとないチャンスを得たのだから、迷うことなく即決して当然だ。とはいえ、彼はマリノスの未来を危惧していた。それでも「本当はマリノスで結果を残してから移籍したかったけど、次はいつチャンスが来るかわからない」という言葉が本心である。タイミングがすべてで、巡り合わせが悪ければ能力があっても移籍はできない。

問題は、マリノスの今後である。小野に対して5年契約を結び、違約金もほぼ満額を手にした。このマネジメントはしっかり称賛されるべき。昨今、日本人選手がゼロ円で海を渡るケースは多く見られているだけに、まずは立派の一言。選手を快く送り出す円満移籍と言っていい。ただし、時期が悪すぎる。新体制発表会を行い、新シーズンを戦う陣容がほぼ整ったこのタイミングで

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