0‐7の処方箋(J論)

「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

下平と山中、扇原のレフティー3人が奏でるパスワーク ・・・「やっていて楽しかったし、見ている側も楽しかったと思う」(下平) [Lカップ6節 鳥栖戦レビュー]

 

 

あれだけボールが動き、パスが回るマリノスはいったい、いつ以来だろう。結果も内容が出ない時期でも選手たちは頭を働かせ、足を動かし、懸命に闘っていた。しかし、サッカーとしてのクオリティは散々だった。対して、サガン鳥栖戦でのマリノスは、ボールを持ってゲームを支配した。エリク・モンバエルツ監督が目指す「自分たちがポゼッションしてコントロールする」を実践したのである。

まず、下平匠が復帰した左サイドに触れないわけにいかない。プレビューでも述べたように、長期離脱から帰ってきた下平はどんな場面でも決して慌てない。CBパク・ジョンスからのボールを受けると、ワンタッチ目で正確な場所にボールを置き、左足一本で相手をいなす。圧倒的なスピードがあるわけではないが、体の向きと目線を巧みに使い、仲間にパスを届ける。トラップとパス。ほとんどのプレーを2タッチでこなす様子は、職人芸と言っていい。

この日のベンチには松原健と高野遼という二人のSBが控えていた。前半、マリノスの左サイドはベンチの目の前で、松原は「匠くんを見るための特等席」と目を輝かせていたという。左右の違いこそあれども、同じポジションのライバルでもある。だが、下平の圧倒的な存在感の前に出てくるのは感嘆の息ばかり。松原自身に出番は訪れなかったが「ものすごく勉強になりました」と収穫を得た様子だった。

コンビネーションという点では、下平と前方の山中亮輔、そして扇原貴宏のレフティー3人が奏でるパスワークが素晴らしかった。下平同様にパス技術に長ける扇原貴宏は「良い距離感でやれて、パスで崩す回数も多かった。(下平)匠くんのところで起点を作れたことが大きいし、気が利いたパスを出してくれる。ヤマ(山中)もしっかり動き出してくれるので、左サイドはすごく機能していたと思う」と手ごたえ。後方から操る側だった下平は「みんな左利きでもう少し窮屈になるかと思ったけど、ヤマは中に入って受けることもできるし、タカもサポートしてくれた」と感謝の弁を述べた。予定通り60分までプレーし、最高の形で先発復帰試合を終えた。

リーグ戦とカップ戦はメンバーもモチベーションも大きく異なり、同列に並べることはできない。カップ戦で3連勝したからといって、そのチームが強いという単純な理論にはならない。ただ、前記した左サイドのユニットはリーグ戦でも試す価値があるのではないか。選手にも相性があり、互いの能力を引き立て合う関係が生まれるかもしれない。その一端が鳥栖戦で披露された。

 

 

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 金井貢史や齋藤学、あるいは天野純のパフォーマンスが悪いという話ではない。そこに競争原理が働くことは彼らにとっての意味がある。それに金井は右サイドが本職の選手で、そこでは松原とのポジション争いが生まれる。天野はトップ下でも生きるかもしれない。そして齋藤も左サイドに固執することなく、中央や右サイドでも輝けるはずだ。それがエース復活のきっかけになる可能性がある。

試合全体を見ても、個々の頑張りだけでなくチームとしての共通理解が見て取れた。この勝利によって、次節のサンフレッチェ広島戦は引き分け以上でプレーオフ進出という有利な状況を作り出すことにも成功。週末の清水エスパルス戦はリーグ戦メンバー中心になるだろうが、来週の広島戦以降はわからない。リーグ戦メンバーとカップ戦メンバーのシャッフルという地殻変動があるかもしれない。

可能性という名の収穫を得たルヴァンカップ・鳥栖戦だった。

 

 

【試合を終えて】

MF 6 扇原 貴宏

「前半は良い距離感でやれて、パスで崩す回数も多かった。良い感触があった。でもその中で点を取れなかったことで、結果的に勝てたけど難しいゲームにしてしまった。(下平)匠くんのところで起点を作れたことが大きいし、気が利いたパスを出してくれる。ヤマ(山中)もしっかり動き出してくれるので、左サイドはすごく機能していたと思う。それをルヴァンカップだけでなくリーグ戦でも出したい。序列の低い自分たちが結果を出さなければリーグ戦のメンバーは変わらない。自分たちがポジションを奪わないといけない」

 

DF 23 下平 匠

「やっていて楽しかったし、見ている側も楽しかったと思う。監督が求めるものにプラスして自分たちで考えながらプレーできた。鳥栖の中盤はダイヤモンド型なので自分が低い位置のときはあまりプレッシャーがかからない。相手との相性もあったけど、それも考えながらプレーできた。タカ(扇原)とヤマ(山中)とうまくやれたと思う。みんな左利きでもう少し窮屈になるかと思ったけど、ヤマは中に入って受けることもできるし、タカもサポートしてくれた。でも自分一人がリーグ戦のメンバーに入っても変わらない。オレ一人では何もできない。悪い奪われ方をしてカウンターを食らう場面もほとんどなかった。次は来週のルヴァンカップだと思う。今度は75分くらいプレーできれば(笑)」

 

 

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