「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

3連勝を含むルヴァンカップ全6試合に意味があった。しかし・・・ [Lカップ7節 広島戦レビュー]

 

掴みかけたプレーオフ進出が、あと少しのところで手からすり抜けていった。決定機3つで3得点できた清水エスパルス戦のようなことがあれば、サンフレッチェ広島戦のように2つの被決定機で2失点する日もある。どちらも幸運や不運ではなく、それがサッカーというスポーツだ。仮に同じシチュエーションでもう一度90分戦えば、間違いなく同じ内容と結果にはならない。

この敗戦をもって、2017年のルヴァンカップが終わった。2連敗スタート後の3連勝で持ち直し、最終節は引き分け以上でプレーオフ進出を決められる有利な状況だった。しかし、以前から述べているようにサガン鳥栖戦に勝っても広島に負ければ意味がない。杉本大地が言うように「次に進むという意味では無意味な3連勝」になってしまった。

もちろん内容に目を向けると、3連勝を含む全6試合に意味があった。特に前述した鳥栖戦では目を見張るようなパスワークを披露。下平匠が11ヵ月ぶりの先発復帰を飾り、扇原貴宏や山中亮輔との連係で左サイドを制圧した。彼の復帰はチーム力アップに間違いなくつながる。

ほかにも、最終節こそ代表招集で不在となったが、吉尾海夏はサイドMFとして今後への可能性を見せた。栗原勇蔵は「頭を使ってプレーしている」と高評価を与えており、成長が楽しみな存在だ。あるいは中島賢星や遠藤渓太がプロ初ゴールを記録したという点だけを切り取っても、今年のルヴァンカップを語る価値がある。

 

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しかし、である。グループとしての進捗や個々のパフォーマンスとは別の部分で、チームとしての姿勢にはおおいに疑問符が付く。リーグ戦でなかなか出場機会が訪れない選手にプレータイムを確保するのは大切なことで、そのために直近のリーグ戦から先発を総入れ替えするのが悪いとは言わない。だが、あくまで勝つための合理性は必要だ。それは選手交代やベンチメンバーにも同じことが当てはまる。

ルヴァンカップ6試合を戦い、戦術的な交代はいったいいくつあったのか。最終節だけを切り取っても、中町公祐と富樫敬真の交代は試合前から決まっていた。齋藤学を何らかの形で試合に使うことも有力視されていた。中町自身が「チームとして上のステージに進むことが目標であって、公式戦は個人の調整の場ではない」と話していたにも関わらず、だ。

守備のポリバレントとしてベンチ入りし、試合では新井一耀に代わって右SBに入ったミロシュ・デゲネクだが、マリノスに来てからは一瞬たりとも右SBでプレーしていない。試合はもちろんのこと、練習でもやっていない。仮に金井貢史や松原健が出ていても柏好文にかわされていたかもしれないが、準備段階で100%を尽くしていたと言えるのか。そして前日練習に参加していない山田康太や椿直起がベンチ入りしたのでは、練習と試合は無関係と言っているようなものだ。

勝負の神様はいつでも細部に宿るのである。マリノスは勝つために、あるいは引き分けでプレーオフに進出するために最善を尽くしたのか。結果が出なかったことを必然とは言わないまでも、決して偶然ではない。指揮官のマネジメントに大きな問題があったことを記しておく。

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