「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

まさかの坊主頭で表れたダビド・バブンスキーは「人生の中でもピッチの中でも何か起きるのではないか」と自らに期待した [J18節 広島戦プレビュー]

 

 

34試合あるシーズンの中で、5連勝は簡単にできる芸当ではない。攻撃と守備のバランスが少しでも崩れれば、脆くも崩れてしまう。実力差が比較的小さいJリーグでは、下位チームに足をすくわれることも往々にしてある。何度も述べているように5連勝すべてが完勝ではなかったが、前半を無失点に抑えて後半に先制するという必勝パターンが確立された。これは物理的というよりも精神面に安定をもたらす。前半がスコアレスでも慌てる必要がなく、後半にチャンスがやってくるというある種の思い込みがあるのだから。

「マリノスは攻撃できないと何もできなくなる」(中澤佑二)とは言い得て妙である。守備に軸足を置いて戦っているのは間違いない。中澤を中心とする最終ラインとダブルボランチ、いやそれだけではない。2列目の3選手も守備に奔走している。厳密に言えば両サイドの齋藤学とマルティノスで守備の貢献度は異なるが、いずれにしても守備を無視することなどない。齋藤が攻め残るのは、それが得策と考えての知恵である。

サンフレッチェ広島戦のポイントは、攻撃できるか、の部分だ。マルティノスがキュラソー代表に招集されたためチームを離れた。5連勝は、マルティノス左サイドにポジションを移したことと無関係ではないだろう。圧倒的なスプリント能力で相手とのマッチアップを制す快足ウインガー不在は、チーム力に大きく影響する。いま、最も欠かせない選手だった可能性が高い。

誰が代わりに先発しても同じ働きを求めるのは酷というもの。スプリント性能が高すぎるがゆえに、代役選手との差が大きくなってしまう。マルティノスと同じストライドと回転数で、しかも長い距離をアップダウンできる選手は、Jリーグ全体を見渡しても見つからない。それがリーチの長い左利きだというのだから相手にしたら厄介極まりない存在だ。

今週の焦点はマルティノスの代役選手となり、エリク・モンバエルツ監督は「彼の代わりを探すというのは簡単な作業ではない。マルティノスに似た選手は正直言っていない」と漏らしていた。順当なら前田直輝や遠藤渓太が左サイドに入るだろうが、マルティノスとの違いが否めない。そこで「コレクティブな部分で補える選手」に白羽の矢が立った。ダビド・バブンスキーである。

 

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 水曜日のフォーメーション練習に引き続き試合前日となる金曜日も左サイドに入った。その他のポジションは前節・大宮アルディージャ戦から据え置きで、好調な流れをできる限り尊重したことになる。唯一、左サイドに入ったダビド・バブンスキーのプレーは未知で、試合になってみなければジャッジは難しい。

間違いなく言えることは、相手最終ラインの背後でボールを受ける回数は少ないであろうこと。裏抜けのランニング回数そのものが少なく、例えば扇原貴宏からのロングパスをスペースで受ける場面がどれだけあるか。さらにボールを受けてからもマルティノスのように単独で長い距離を持ち運べない。トップ下の天野純やボランチの扇原、あるいは左SB山中亮輔のフォローを受けることで持ち前のテクニックを生かしたい。

試合前日の練習に「人生で初めて」という、まさかの坊主頭で表れたダビド・バブンスキーは「人生の中でもピッチの中でも何か起きるのではないか」と自らに期待した。マルティノスとは違った味を出した上で、プラスαをもらせるか。

 

 

 

 

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