「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

決勝ゴールの場面、齋藤からのパスを受けたファーストボランチの扇原貴宏は、なぜあの位置にいたのか[J24節 FC東京戦レビュー]

 

8月の5試合を4勝1分で乗り切った。とりわけサガン鳥栖、ヴィッセル神戸、FC東京という中位グループながら手強い3チームを相手に2勝1分という戦績は上々の結果と言えるだろう。先日も述べたとおり神戸戦の引き分けは取りこぼしではなく、相手のパフォーマンスを加味すると妥当なもの。決して簡単ではなかったFC東京戦を勝てたことで、神戸戦の引き分けを払拭できた。

 前半に迎えた1対1の場面を決められていたらと思うとゾッとする。完全に抜け出した髙萩洋次郎に対して、飯倉大樹は動かず、慌てず、焦れなかった。すると相手はループシュートというやや難度の高いワンプレーを選択し、コースが甘くなった。「あそこで点を取られる、取られないで大きく違ってくるので、結果的に防げてよかった。試合の中で一度はああいうピンチがある。そこを自分含めて、ボンバー(中澤)含めて守れている」(飯倉)。まさしく試合の潮目となった。

対戦相手は前回対戦時からシステムを変更し、守備時は自陣に分厚いブロックを敷いてきた。形状こそ異なるが神戸と同じように守備意識が高く、そうなると崩し切るのはなかなか難しい。カウンターから齋藤学のパスを受けてマルティノスがシュートを放ったシーンは素晴らしかったが、遅攻で切り崩すのは非常に困難なシチュエーションと言える。

これが、今の現在地である。リーグで下位に沈んでいる相手ならば、チャンスの総量で上回ることができる。だが、相手のレベルの上がるとそうそう思い通りにいかないもの。勝つためにはどこかで変化が必要で、それは選手たちがほんの少しずつ無理をするという意味でもある。

 

 

下バナー

 

 決勝ゴールの場面、齋藤からのパスを受けたのはファーストボランチの扇原貴宏だった。なぜあの位置にいたのか。「あのままだとヴィッセル戦と同じ展開のまま終わってしまう。勝たなければいけないゲームだったので、自分のプレーが結果につながってよかった」と振り返るワンプレーは、試合を決めるビッグプレーとなった。カウンターを食らうリスクを覚悟の上で、勝ち点3を追い求めた。扇原の言葉通り、神戸戦が引き分けだったからこそ勝ち点3が必要なゲームになっていた。

気がつけば残り10試合。競馬に例えると、そろそろ第4コーナーに差しかかろうとしている。先頭を走る鹿島アントラーズを追いかける2番手集団の中でも好位置につけている現状は大きなチャンスだ。ここからの1試合1試合はこれまでよりも大きな意味と価値を持ち、シーズンの結果を大きく変えるものだろう。

次に待ち受けているのは川崎フロンターレ、柏レイソルという難敵との連戦だ。ライバルを蹴落とすか、反対に競り負けてしまうか。何かを勝ち取るためには引き分けではなく、勝ちが必要になる。ほんの少し足りない何かをつかみ取りたいのならば、扇原のような強い意志が欠かせない。FC東京戦はパーフェクトな内容ではなかったが、強い勝ち方と言える1-0だった。

 

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ