「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

3試合連続で予期せぬアクシデントに見舞われた [J29節 大宮戦レビュー]

 

 

3試合連続で予期せぬアクシデントに見舞われた。前々節のヴァンフォーレ甲府戦では前半に金井貢史、後半に齋藤学が、前節のガンバ大阪戦は前半に松原健が負傷で交代を余儀なくされた。そして今節の大宮アルディージャ戦の前半、ウーゴ・ヴィエイラが相手DFと交錯して右ひざを痛めて途中交代。主将であり攻撃の核と、右SBのレギュラー二人に続いて、今度はチーム得点王を失ってしまった。

 結果的には、この誤算が尾を引いたと言うしかないだろう。22本のシュート数を見るまでもなく、マリノスはチャンスを数多く作った。しかしながらゴールネットが揺れた回数は1回のみ。それも中町公祐のミドルシュートである。コンビネーションやこの打開力を駆使してペナルティエリア内に侵入し、惜しい場面を何度も作れていた。だが、ゴール前でのリアリティを欠いた。

決定力不足に泣いた結果についてエリク・モンバエルツ監督は「ウーゴはゴール前での豊富な経験を持っている。一方、我々の若い選手たちは、やはり経験という部分が足りなくて、ゴール前で少しためらってしまう。身体が反応するようなプレーが足りていない」と語った。

ゴール前でのシュートシーン以外はこれといった仕事をしない背番号7だが、決定機を冷静に決める力には秀でている。特に横から来たボールをダイレクトで決める能力に秀でるため、押し込んだ展開でより力を発揮する。この試合に至るまでに2試合連続でゴールを決め、ここまでに10得点を挙げていることが決定力を持っている動かぬ証拠であろう。

 

下バナー

 

総合的に見てチームに貢献する能力は、途中出場した富樫敬真が上だ。プロ2年目の今年はフィジカル強化の甲斐あってポストプレーに成長が見られ、後方からのボールを引き出す動きの量も断然多い。そして前線からコースを限定する守備は、ウーゴ・ヴィエイラや伊藤翔と比較して一線を画する。常に献身的にプレーし、チームを助けられるのが背番号17の最大の特長になっている。

 一方で、ワンチャンスを仕留める力はウーゴ・ヴィエイラに遠く及ばない。以前の富樫は少ないチャンスをモノにする、いわゆるストライカーだったはず。だが、さまざまな要素を求められることで成長した結果、ゴールという最高最大の収穫から遠ざかってしまったのではないか。「敬真はもうちょっとやらないといけない」。中澤佑二の言葉は批判ではなく、期待なのだ。

現時点でウーゴ・ヴィエイラの負傷の程度は分からない。次節の鹿島アントラーズ戦に間に合うのかどうか、あるいは長期離脱になってしまうのか。いずれにせよ富樫の出番は増えるだろう。残り5試合に大きな可能性を残しているだけに、期待せずにはいられない。「二桁得点が最低限の目標」と語っていたのは昔のこと。そんなことは、もはやどうでもいい。

残された5試合で5点決めれば、富樫はヒーローになる。そんな快活なパフォーマンスを求めたい。

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ