「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

齋藤にはできることをやってきたという自負がある [契約更改交渉4日目]

 

マリノスは12日に契約更改交渉4日目を行い、齋藤学、天野純、喜田拓也、金井貢史、イッペイ・シノヅカの5選手が交渉に臨んだ。この日までに外国籍選手と期限付き移籍中の選手を除く、21選手が1回目の交渉を終えた。

最終日に登場した齋藤学は、昨オフに海外移籍の可能性を模索したが、マリノスに残留してプレーすることを決意。そして「自分にプレッシャーをかけて成長するため」という理由で背番号10を背負い、新主将という大役も担うことに。さまざまなプッシャーと戦いながら過ごしたシーズンの中で、開幕から長い時間ゴールを決められず苦しい時間を過ごした。そして初ゴールを決めた矢先に大けがを負う不運に見舞われる。それでも今シーズンを振り返って「キャプテンとしていろいろな経験をできたのは大きかった」と前向きに話した。

主将の仕事はキャプテンマークを巻いて試合を戦うことだけではない。現在はマリノスタウンのようなトレーニング施設を自前で持っていない。そんな状況下でクラブと選手の橋渡し役になるのが主将の役割の一つだった。与えられた条件で何をすべきか、それをどう伝えるか。齋藤にはできることをやってきたという自負がある。

クラブを取り巻く状況がすぐに好転するとは限らない。練習グラウンドやクラブハウスの問題は、行政との関わり合いも大きく関わってくる事案だからである。事情や背景を理解している齋藤は、難しい状況になればなるほどチームメートを鼓舞し、時には嫌われ役になることも厭わない言動で叱咤激励した。環境とは別の次元で、練習に新鮮な空気をもたらした。

しかし、である。

 

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責任感とやりがいを持っている一方で、一人の選手として「ワールドカップへ行きたい。そのために選手としてもっと成長したい」という思いを強く胸に抱いている。齋藤が交渉に臨んだ今日時点で、マリノスは来季指揮を執る新監督を発表できておらず「新監督が決まっていないので判断するのは難しい」という齋藤の指摘は、誰もが頷くところ。どれだけ候補者の名前が新聞紙上や海外メディアを賑わせたところで、選手が知りたいのは候補者ではなく決定事項でしかない。監督人事以外のコミュニケーションでリカバリーできていないのも問題だ。

クラブは早急に監督人事を決着させると同時に、条件提示している選手に対して必要性を説くことも大切な作業になる。これは何も齋藤だけに限った話ではなく、所属選手全員が残留前提で交渉に臨んでいるわけではない。契約状況にもよるが、移籍を考えている選手がいるのは自然なことで、その理由もさまざまである。そして移籍には相手側の事情もあり、リミットが存在する場合もあるだろう。

交渉を終えた齋藤の表情は、最後まで晴れなかった。クラブは「来季のイメージを持ちづらい交渉だった」という齋藤の言葉を真摯に受け止め、今後の教訓にすべきだろう。

 

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