「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「F・マリノスに育ててもらってプロになることができました。いつかチームを優勝させて恩返ししたい」(原田) [ルーキー対談:吉尾海夏・原田岳(前編)]

 

【F・マリノスルーキー対談(前編)】
実施日:12月20日(水)
インタビュアー・写真:藤井 雅彦
協力:横浜F・マリノス広報室

 

 

攻撃的MF吉尾海夏とGK原田岳。小学生時代からF・マリノスの育成組織でサッカーに打ち込んできた二人が2017年にトップチームに昇格を果たし、プロ1年目を終えた。

この前編ではプロの世界に身を置いた感想や課題、そして互いの姿がどのように見えていたのかを語ってもらった。F・マリノスの未来を作っていく若者たちは、やや緊張した面持ちで対談形式でのインタビューをスタートさせた。

 

 

――最初に、プロ1年目を過ごしてみての率直な感想を聞かせてください。

吉尾海夏(以下、吉尾)

「どっちからにする?」

原田岳(以下、原田)

「フィールドプレーヤーからでしょう(笑)」

吉尾

「では僕から(笑)。シーズン序盤はルヴァンカップのグループステージで試合経験を積むことができました。プロの世界で通用した部分と通用しなかった部分の両方を感じられました。そこで自分なりの“ものさし”ができたのは大きかったです」

原田

「海夏がルヴァンカップでプロデビューする時は『いよいよ出番がやってきたな』と自分のことのように力が入りました」

 

 

吉尾

「ありがとう(笑)。でもルヴァンカップで敗退してからは、なかなか試合に出られない状況になりました。今までのサッカー人生でこんなにも長い時間、試合をできなかったことはありません。自分の成長を確かめる機会がない難しさはありました。だから練習での時間がより重要になると思って毎日を過ごしていました」

原田

「僕は、リーグ戦とルヴァンカップで1試合も出場できませんでした。でも、そのぶん人生で一番練習した年だったと思います。それは悪いことではなくて、個人的にはポジティブにとらえるようにしています」

吉尾

「岳とはジュニアユースからずっと一緒にサッカーをやっていて、今年はシゲさん(松永成立GKコーチ)に揉まれているところをずっと見てきました。居残り練習でGKに入ってもらうと、だんだんシュートが入らなくなってきて…。自分ももっと努力しようと思いました」

原田

「それ、本当の話?(笑)」

吉尾

「本当だよ! ユース時代と比べると全然違う。セービングだけでなく、キックの質も先輩GKたちと大きな差はないと感じたし、同い年の岳が成長しているのは刺激になります」

 

 

原田

「試合で得られることの方が多いかもしれないけど、回数や時間で考えると練習のほうが圧倒的に多くて、長い。今日できたことを明日はもっと良くする、今日できなかったことを明日はできるようにする。そうやってシゲさんと話し合いながら取り組んできて、自分でも分かるくらいプレーの質が変わってきました。だからこそ、そのぶん成長した自分を早く試合で見せたいという気持ちが強くなった1年でもありました」

 

――原田選手にとって、吉尾選手が先にプロデビューしたのは悔しい出来事ですか?

原田

「悔しいというよりも、羨ましいという気持ちが大きかったです。ホームだけでなくアウェイゲームに出場しているところを映像で見ていて、どんな感覚なんだろうなぁと想像したり…。でもアウェイのヴァンフォーレ甲府戦での“幻のゴール”には笑いました」

吉尾

「そんなこともあったね(笑)。あれは5月の出来事だから、ずいぶん前のことのように感じます」

原田

「(齋藤)学くんたちと一緒にテレビ中継で見ていたんです。だからすぐにリプレイが流れて、海夏が喜んでいたけどボールに触っていないことがすぐ分かりました」

吉尾

「正直に言うと、あれは触っていません(笑)」

 

 

 

PREMIUMコースとは

 

 

原田

「でも試合に出ることで自信をつけていっているのは感じました」

吉尾

「プレッシャーや責任を感じながらプレーできるのは本当に幸せなことでした」

 

――プロの世界に飛び込んで、驚いたことや衝撃を受けた瞬間はありましたか?

原田

「(飯倉)大樹くんや(中澤)佑二さんをはじめ先輩方はみんなすごい選手ばかりですが、“ゾーン”に入っている時のタカくん(扇原貴宏)に驚きました。パスは短い距離も長い距離もすべて通して、ドリブルも絶対に奪われない。五輪代表やA代表で日の丸をつける選手の凄みを感じました」

吉尾

「僕は初めて佑二さんと競り合った時の感覚が忘れられません。空中戦での競り合いだったのでたくさんあるシーンではないと思いますが、あまりにも高いところにいてビックリしました。あと佑二さんと1対1で対面した時に抜ける気がしなかった。シュートを打ってもコースに入ってブロックされてしまいました」

原田

「佑二さんは本当にすごいDFです。何気ないポジショニング一つを取ってもこだわっているし、佑二さんがコースを切った方向は絶対にシュートが飛んできません。足を出すタイミングは必ずボールに触れられる時ですし、相手が股の間を狙ってくることも計算してディフェンスしていることが、後ろにいるとよく分かります。GKからすると、コースがかなり限定されるので守りやすいです」

 

――1年目を過ごして見つけた自身の課題は?

吉尾

「フリーでボールを受けた時に良いプレーができるのは当たり前だと思います。反対に、相手にケアされている難しい状況で、いかに状況を打開できるかが課題です。シーズンの最初の頃は、自分で打開するという選択よりも誰かに助けを求めてしまって、メンタルの部分でも未熟さを痛感しました」

原田

「GK陣では大樹くんが絶対的な位置にいて、もしポジションを奪えるとしたら、大樹を上回るパフォーマンスを見せるしかない。大樹くんは弱点の少ないプレーヤーで、すべての面で高いクオリティーを発揮していると思います。それを超える能力を身につけないといけません」

 

――プロ2年目の目標やテーマは決まっていますか?

吉尾

「とにかくプロ1年目で感じた悔しさをピッチ上で表現したいです。2020年に開催される東京五輪に代表選手として出場して、活躍したい。そのためにも、とにかく試合に出て結果を残さなければいけないと思っています」

 

 

原田

「プロ1年目はこれまでの人生で一番サッカーと向き合った1年だったと思います。それまでの自分は幼稚な考えでサッカーをやっていました。プロになってサッカーに懸ける気持ちは変わったと思いますし、成長した自分を見てもらうには試合に出なければいけない。あと、僕はF・マリノスに育ててもらってプロになることができました。だから、いつかチームを優勝させて、価値を上げることで恩返ししたいです」

 

 

(つづく)

tags: 原田岳 吉尾海夏

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ