「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

ボールは人が走るよりも速い …アタッキングフットボールの正体は、皆が想像していたとおりのパスサッカー [石垣島キャンプ2日目午後レポート]

 

 

いよいよ石垣島キャンプが本格的にスタートした。いや、アンジェ・ポステコグルー監督のチーム作りが始まったと言うべきか。横浜で過ごした始動日からの3日間は試運転に過ぎず、石垣島に到着した昨日20日もグラウンドでの練習は行っていない。監督就任会見で繰り返していたように「キャンプの初日から考えているサッカーをチームに落とし込んでいく」作業がスタートした。

 

 

例年、始動直後の一次キャンプはフィジカル要素が強くなる。オフ期間にスリープした体を起こす作業だ。だが、この日の午前・午後の練習を見るかぎり、誰の目にも明らかなフィジカルメニューはなかった。練習と練習の間に短いインターバル走こそあったものの、サーキットトレーニングなどは一切なし。指揮官は「フィジカル練習と戦術練習の両方をやっていくが、チームは天皇杯決勝まで勝ち進んでいたので休んでいた時間が短い。そこはバランスを考えていきたい」と考えを話した。

 

 

 

 

狙いとするサッカーが見えたのは、午後のビルドアップ練習だった。いきなりのピッチ全体を使った11対11の形式で、トレーニングはGKからの球出しでスタート。形としては昨季とほぼ変わらないフォーメーションだが「SBの位置取りが高くなった」(金井)。それによってサイドMFのポジショニングも変化し、より流動性が重要になる戦術に変わった。

2列目のサイドに入ったのはユン・イルロクやイッペイ・シノヅカ、仲川輝人といった面々で、これまでのようにタッチライン際に張り付いているだけではなく中央に入る柔軟性も要求される。ちなみにビルドアップ時の中盤は喜田拓也や扇原貴宏がアンカー役を務め、その前の位置に中町公祐や天野純、あるいは大津祐樹が入った。

 

 

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練習の最後には「ボールは人が走るよりも速い」という“常識”をあえて選手に伝えている。素早く、そして正確にボールを動かすことで相手を走らせて優位に立つ。具体的には、パススピードと前方向へのアクションを求めている。アタッキングフットボールの正体は、皆が想像していたとおりのパスサッカーと考えて間違いなさそうだ。

 

 

変化はピッチ外にもある。ルーキーの山田康太が「監督はいろいろなことをリスペクトして、チームとして動くことを選手に求めている」とプロサッカーになったことを実感していたように、ポステコグルー監督は団体行動に重きを置いている。原則として朝食は7時30分、昼食は13時、夕食は19時に全員が揃って「いただきます」を行う。昨年まで夕食のみ開始時間を合わせていたが、朝と昼も同列となった。また、練習グラウンドへの往復バスも全員が揃わなければ出発しない。

 

 

もしかしたら最初は窮屈に感じる選手もいるかもしれないが、あくまでキャンプ中に一体感を高める方策である。「トレーニングもピッチ外のことも、まずは監督が求めることをチーム全体で共有して進んでいくことが大事」と中町公祐は納得していた。中町や中澤佑二、栗原勇蔵といった年長選手が規律に従うことで、監督の狙いはチーム全体に自然と浸透する。チーム作りの第一歩と言えよう。

変化と新鮮さに溢れた石垣島キャンプが幕を開けた。

 

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