「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「山口は町全体でレノファを応援してくれています。定食屋さんに行けば『この前は頑張ったね』と言ってサポーターの方が定食をご馳走してくれたり」[和田昌士インタビュー(後編)]

 

【和田昌士選手インタビュー(後編)】

取材日:1月26日(金)
インタビュー・文:藤井 雅彦
協力:横浜F・マリノス広報室

 

前回よりつづく

 

1年間の期限付き移籍を経て、F・マリノスへの復帰を決断した。さまざまな思いが交錯する中で、最後は「F・マリノスのユニフォームを着てプレーしたいという気持ちが勝った」。

外から見たトリコロールは和田昌士の目にどう映り、同期加入の盟友・遠藤渓太の活躍に何を思ったのか。すべての経験を力に変えて、勝負のプロ3年目に臨む。

 

 

――F・マリノス復帰を決断した理由を聞かせてください。

「とても迷いました。レノファには『もしやってくれるなら、一緒にもう1年勝負してくれないか?』と言っていただきました。それは素直に嬉しかったですし、だからこそ迷いました。でもJ1で勝負できるのであれば、そこでやりたかった。F・マリノスで試合に出るほうがハードルは高くて、難しいチャレンジなのは分かっています。でも勝負しないと後悔すると思いました。すごく悩んだ末に、F・マリノスのユニフォームを着てプレーしたいという気持ちが勝って、帰ってきました」

 

――移籍しなければ気付けなかったことがあった?

「自分はずっとF・マリノスの中で階段を上ってきたので、知らないことがたくさんありました。違うクラブに籍を置いたことで、F・マリノスが偉大なクラブだと気付けました」

 

――今年は勝負の年になりますね。

「プロ3年目なので、個人的にはここで結果を残さなければ生き残っていけない世界だと思っています。勝負のシーズンになることは分かっています。自分を信じて、やるしかありません」

 

――昨年、同期の遠藤渓太選手がリーグ戦で点を取ったところを見ていましたか?

「もちろん見ていましたし、悔しい気持ちもありました。小さな頃から一緒にボールを蹴ってきて、渓太だけ点を取っている試合はすごく悔しかったし、反対の時は渓太が悔しかったと思う。そうやって二人が切磋琢磨して、渓太がいなかったら自分はどこかで満足してしまっていたかもしれない。渓太には負けないという思いでジュニアユース、ユースと過ごしてきて、そのおかげで今の自分があると思います。同期にそういう選手がいるのは、自分にとってプラスでしかありません」

 

――遠藤選手のゴールを決めた時の率直な気持ちを聞かせてください。

「ガンバ戦の初ゴールは劇的だったけど、アントラーズ戦は相手のオウンゴールかなと思いました(笑)。連絡を取り合っていたので、渓太がなかなかベンチに入れず苦しんでいたのは知っています。でもチャンスが来た時に結果を出せたのはしっかり準備していたからだと思うので、すごく刺激になりました」

 

――嬉しい気持ちもあった?

「悔しい気持ちだけでなく嬉しかったですよ。結果を出した人間はどこかで必ず努力しています。だから渓太もそうだったはず。今はいろいろなことを経験して、僕も少しは大人になったのかな(笑)。昔なら悔しい気持ちだけだったと思います。僕も言葉だけではいけないんです。結果がすべての世界ですから。いくら言葉で“覚悟”と言っても、結果に出さなければ評価にはつながりません。そういう世界に身を置いたので、とにかく結果を出したい」

 

 

 

――厳しい世界ですね。

「想像していたよりも厳しい世界でした。ユースの時にマンチェスター・シティに留学させてもらって、プレシーズンマッチにも出場できて、なんとなく通用すると思ってしまった自分がいました。正直言って、あの時の僕は浮かれていました。プロの世界を甘く見ていたのかもしれません」

 

 

 

PREMIUMコースとは

 

――期限付き移籍は必要な経験だったと思いますか?

「人生の中で必要な時間でした。いろいろなことを学びました。山口は大都市ではないので、町全体でレノファを応援してくれています。定食屋さんに行けば『1,000円で好きなだけ食べていいよ』と言ってもらえたり、サービスでデザートを出してくれたり。試合に出た後だと『この前は頑張ったね』と言ってサポーターの方が定食をご馳走してくれたこともありました。人の温かさを感じましたし、横浜にいたら絶対に出会うことのない人と出会えました。社会の中で生きていく上で人と人とのつながりがとても大事なことだと学びました」

 

 

――今度はF・マリノスのサポーターを喜ばせないといけないですね。

「結果を残して戻ってきたわけではないので『なぜ復帰させたの?』という声があるかもしれません。だからこそ、プレーで自分が成長したことを見せたい。繰り返しになりますが、言葉ではなくピッチで表現しなければいけない」

 

――自分にどんな期待をしている?

「自分が一番下からのスタートだと思っています。ボールをつなぐサッカーなら自分の良さは出しやすい。とにかく与えられた場所で結果を出していくだけです。何よりもゴールがほしいです」

 

――最後に、目標はありますか?

「数字を言える立場ではありません。とにかくリーグ戦に出場して、ゴールを決めたい。あっ、それから一つだけ。F・マリノスの一員としてシュンさん(中村俊輔/ジュビロ磐田)とサッカーがしたい。J2にいたらピッチで戦えない。同じピッチに立って、シュンさんと対戦したい。今年の目標の一つです」

 

(おわり)

 

 

tags: 和田昌士

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ