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「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

苦しみながら、我慢しながら [J第3節 磐田戦レビュー] (藤井雅彦) -2,036文字-

 

開幕直後は不確定要素が多すぎる。「自分たちの立ち位置が見えにくい」と語るのは榎本哲也だ。これはジュビロ磐田戦前のコメントなのだが、大量得点で2連勝を飾ったからといって今シーズンのJリーグをけん引するチームなのかは分からない。それは相手チームの力量が判断できないからで、湘南ベルマーレや清水エスパルスが確実に上位を争うチームであれば、2連勝には大きな価値があると言えるだろう。逆に数ヵ月後に下位で喘ぎ苦しんでいる可能性も否定できない。そうなると同じ2連勝でも価値はやや下がる。

ではジュビロ磐田はどのランクに位置するチームなのか。比較できるサンプル、つまり対戦してきたチームが少ないため断言こそできないものの、おそらくはリーグ全体を見渡して弱いチームではない。新しく取り組んでいる2トップ&2トップ下の[3-5-2]は、同じように新しいシステムに取り組んでいた清水よりも完成度が高く、個々の能力も低くない。しいて言えばフィニッシュ場面で力を発揮し、チームの攻撃を完結させる存在の前田遼一の調子がイマイチか。ゴール前以外ではさすがのプレーを見せても、肝心のゴールがない。マリノス戦でも終盤にセットプレーからヘディングシュートを放つも枠を捉えきれなかった。マークを担当していた栗原勇蔵は若干ながらルーズな対応だったのだが、ああいった場面でボールを枠に飛ばせないのは前田自身の問題だ。

絶対的ストライカーの調子が上がらない磐田において、警戒すべき選手は前線の金園英学と昨シーズンの対戦でも一発を見舞われた山田大記の両名となる。金園に対しては中澤佑二と栗原が何もさせなかったが、山田には「いいシュート」と榎本もお手上げのゴールを献上した。ルーズボールがちょうどよく山田の目の前に転がり、さらに不意を突くタイミングでの“ゴラッソ”である。失点の形式そのものは相手の能力の高さに加えて偶発的な要素も含まれていた。

とはいえ時間帯がいただけない。流れをつかみきれないまま前半が終わろうとしたとき、中村の左CKからこぼれ球を栗原が決めて先制に成功していた。時間にして45分。最高だ。失点はその直後で45分+2分の出来事である。湘南戦でも同じように得点直後に失点した経緯があり「修正しないとズルズルいってしまう」(中澤)。最高以上の最悪が存在していた。

本来ならば気落ちしてもおかしくない失点だ。崩されたわけでない出会い頭の一発によるダメージは大きい。それが、いまのマリノスは動じない。「0-0と考えれば問題ない」(兵藤慎剛)。ロッカールームではこんな声が響いていたという。また、先制点を叩き込んだ栗原の「点を取ると貯金じゃないけど、自分の中で余裕が生まれる。してはいけないことだけど、最悪ミスして失点してもチャラなので思い切ったプレーができる」という言葉通りの展開である。2連勝していたことで生まれた余裕もあるのだろう。なにはともあれ仕切り直しで後半を迎えることとなった。

もっとも後半に入って空気と流れが一変したわけではない。今後の課題を「ビルドアップからのラスト3分の1の形が見えない」と指摘したのは遅攻を司る中村。磐田は守備になると5バック気味で対応するチームで、入ってきたボールにアタックを仕掛ける。前線から無闇にプレスをかけるチームではなく、マリノスの最終ラインにはボールを持たせる。するとマリノスの性質として効果的なビルドアップができない。ビルドアップのキーマンとなる中町公祐は高い位置でボールに絡もうと試みたが、パスを受ける前後でボールロストすると相手の2列目に位置する山田と入れ替わられるような形でピンチになる。前半からこういった場面が何度か見られたため、少しずつ前へ出られなくなり、前に人数をかけられなくなってしまった。

苦しみながら、我慢しながら、決勝点をもぎ取ったのは兵藤だった。右サイドの高いエリアでボールを持った小林祐三は強引な縦突破からクロスを送る。ニアサイドでマルキーニョスがつぶれ、ファーサイドに背番号7が「絶対に来ると思っていた」と待ち構えていた。苦しいゲーム展開を象徴するような選手が点を取った。前線でボールを引き出すために常に足を止めない兵藤だが、肝心のボールが来ないとほとんど目立たない。身体能力に優れるタイプではないため地味な選手に見えてしまう。それはこの日のマリノスの戦い方と同じで、“ヒーロー”という形容は少しくすぐったくも聞こえる。

中村やマルキーニョスといった主役ではない選手の2試合連続ゴールで開幕3連勝を飾った。いずれも複数得点を挙げ、セットプレーも好調を維持。流れが決して良くない展開でも勝ち点3を得るのは昨シーズンとの最大の違いで、勝ち癖を身に付けつつある。日程にケチをつけてもしょうがないが、ここでナビスコカップを挟むのが非常に惜しい。次に狙うのは渡邉千真と長谷川アーリアジャスール擁するFC東京を破っての4連勝となる。

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