「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【この人を見よ!】vol.2 左のスペシャリストとして~DF6 安在和樹~(2016/03/09)

■待たれる飛躍の瞬間

ある日の練習後、冨樫監督と安在が向き合い、長い時間をかけて話をしていた。

「冨樫さんから言われたのは、攻守における改善点。より仕事量を増やし、質を高めていこうと。自分のクロスとFWの動きを点と点で合わせられれば、チームの得点力は上がる。拮抗した状況で、プレーが消極的になることも指摘されました。自分の力を発揮できていると感じるときは、たしかに高い位置にポジションを取っていることが多い。ヴェルディがJ1に上がるために、もっとやらなければいけないとわかっています」

ユース時代の恩師、楠瀬直木(U‐16女子日本代表監督)からはこんなエールが届いた。

「これまでは彼のガツガツしすぎない姿勢、謙虚さを持ち合わせていることがいい方向に出ていたと思います。ただし、ここから先、上に行くためにはガツガツしないと届かないですよ。あの左足のキックは特別です。1試合で5本くらいピンポイントのアーリークロスを入れられるようになれば、存在は際立ってくる。ほかの能力も平均点には達するでしょうから、ステップアップの道筋は見えてくるはずです」

左利きのサイドバックはスペシャリストで希少価値がある。昨シーズンのオフ、具体的な獲得オファーまで進展することはなかったが、いくつかのクラブで常にリストアップはされているに違いない。

「今年で22歳。いまの時期は試合に出て経験を積むのを最優先としたい。より高いレベルでプレーしたい希望は持っています。サブではなく、一番手として熱烈に必要とされるのだったら真剣に考えるでしょうね」

安在は置かれた環境に身体のサイズを合わせ、必要に応じてパフォーマンスを上げる面がある。大きく飛躍するとしたら、新たな厳しい環境に飛び込むほかないのだろう。つまり、ヴェルディがJ1に上がるか、それとも個人としてステップアップするか。

どちらを選ぶか訊ねるのは、愚問というものだ。ぜひともその瞬間に僕らを立ち会わせてほしい。

※【この人を見よ!】は、隔週水曜日に更新します。

写真=kitasumi

天真爛漫な笑顔。 写真=kitasumi

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