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【無料記事】献本御礼『戦術リストランテⅣ』西部謙司(著)

 海外サッカー専門誌『footballista』での連載を書籍化した本書。早いものでこれが第4巻である。著者の西部謙司さんは、戦術のトレンドをわかりやすく解説する第一人者であり、ジェフユナイテッド千葉のウォッチャーとしても知られる。

 いわゆるサッカー本業界において「戦術本」は、もはやメインストリームとも言えるジャンルである。とはいえ、一口に「戦術本」といっても切り口はさまざまで、教則本スタイル、データ重視スタイル、名勝負プレーバックスタイルなどさまざま。本書はどこに位置づけられるかといえば、クロニクルスタイル、ということになろうか(そういえば西部さんの過去の著書に『サッカー戦術クロニクル』という作品があった)。

 本書が取り上げるのは2015-16シーズンの欧州リーグ。ペップ・グアルディオラのバイエルン・ミュンヘンを中心に、その対局にあるディエゴ・シメオネのアトレティコ・マドリー、そして指揮官がカルロ・アンチェロッティからジネディーヌ・ジダンに替わり、見事に欧州王者に返り咲いたレアル・マドリーなど、さまざまなクラブと監督を俎上に上げながら、最後はEURO2016を振り返っている。

 切り取られているのは昨シーズンだが、1巻から4巻まで読み返すと、目まぐるしく変化してきた2010年代の戦術の変遷が俯瞰できるはずだ。2016-17シーズンが華々しく開幕したが、今季はどのような戦術がトレンドとなるのだろう。その前に昨シーズンのおさらいをするには、本書はまさにうってつけである。定価1500円+税。

【オススメ度】☆☆☆★★

「西部さん。そろそろ『1974 フットボールオデッセイ』みたいな歴史ものをまた読んでみたいです!」

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