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川本梅花 フットボールタクティクス

【インタビュー】僕らが続けなければフットボールの映画祭は終わってしまう【無料記事】フットボールボールを愛する人に捧げる映画祭 福島成人 #yfff

【インタビュー】福島成人「僕らが続けなければフットボールの映画祭は終わってしまう」

ヨコハマ・フットボール映画祭2018が、間もなく開催される。今週末、2月11日(日)から12日(月)までの2日間、会場は横浜市開港記念会館である。

http://2018.yfff.org/

映画を上映するほかにも、いくつかのイベントが行われる。それに関しては、本サイトの「アートがフットボールを日常化する【渦中の話】フットボールを愛する人に捧げる作品展 JUN(秋山淳)」で紹介した。

【インタビュー】アートがフットボールを日常化する【無料記事】フットボールを愛する人に捧げる作品展 JUN(秋山淳)#yfff

今回は、ヨコハマ・フットボール映画祭2018の実行委員長である福島成人さんにお話をうかがった。なお、インタビューは前編と後編の構成になっている。前編は今回の映画祭についてで、後編は、公開された、あるいはDVDで発売されたお薦め映画の談話になっている。

僕らが続けなければ終わってしまう

――今年で、ヨコハマ・フットボール映画祭は何回目の開催ですか?

福島 今回で8回目になります。

――昨年の映画祭と今年の映画祭では、何か大きく変わったところがありますか?

福島 いままでの会場は映画館だったのですが、その映画館がなくなったため、今年は、横浜開港記念館で開催することになりました。この建物自体が、1917年に建てられた歴史的建造物で、今年101年目を迎える国の重要文化財だそうです。横浜の観光名所になっています。

――どのような手段で、会場となる場所を借りられたのですか?

福島 会場を借りるための抽選会があり、それに当たれば借りられるという仕組みです。ちょうど開催の6カ月前にあたる9月11日と12日のに、それぞれ5~6人くらいの希望者がいたんです。抽選会で、その人たちに勝って、2日間連続で会場を借りることができたのです。

――すごいですね。よく勝ち取りましたね。

福島 それで、運を使い果たしたかな(笑)。

――いやいや(笑)、ここは笑ってはいけないか。ところで、昨年は1週間のステージでしたが、今年は2日間のステージになりますね。

福島 はい。ただ、座席数は増えているため、前回と同じくらいの方に見てもらえるんじゃないかと考えています。

――それにして8年間、本当によくぞ続けられたと思います。こんな風に長く続いた理由は?

福島 「もうちょっとできるような」「もうちょっと、なんとかなるよな」という思いが、映画祭を終えた後に毎回込み上げてくること。加えて毎年いい映画も制作されていること。それらを紹介しなければと思うのです。

もし、僕たちが辞めてしまうと、こうしたイベントは、次の方がやろうとしても実行するのが難しくなります。下手をすれば、10年、20年は、やられないままに忘れ去られてしまう。そんな風に考えると、続けるということへの責任感がある。僕らが続けなければフットボールの映画祭は終わってしまう。だから、できる限り続けたいと思っています。

「YOU’LL NEVER WALK ALONE」2月11日(日・祝)17:20分上映

――さて、今回のラインナップですが、いち押しの映画はどれでしょうか?

福島 完全に、と言ってしまいますが、「YOU’LL NEVER WALK ALONE」ですね。

――2月11日(日)の17:20分に上映の映画ですね。これは、どういう経緯で上映することになったのですか?

福島 ドイツのフットボール映画祭が毎年3月に開催されます。僕はその映画祭に行くのですが、その際に上映される映画を紹介したパンフレットを見て、「YOU’LL NEVER WALK ALONE」のことを知りました。その後、実際に映画を鑑賞して、日本のサッカーファンにぜひ見てもらいたいと。ところで、この映画の予告編は見られましたか?

――はい。ヨコハマ・フットボール映画祭のホームページで公開された予告映像は見ました。

福島 フットボールの映画となると、「スポ根」モノや「チームの内部の事情を撮った」モノが多いのですが、これは、サッカーと応援歌が中心のテーマで、いままでのサッカー映画のスタイルとは明らかに違っています。映画のタイトルの「YOU’LL NEVER WALK ALONE」は、リバプールの応援歌として知られています。しかし、もともとハンガリーのオペラの内容を踏まえた歌なのです。

――リバプールだけでなく、ドルトムントなどでも歌われていますよね。なぜ、ハンガリーのオペラに関する内容が曲となって、サッカークラブの応援歌になったのでしょうか?

福島 この話は、第2次世界大戦までさかのぼります。ハンガリー人のオペラ作者が、ユダヤ人に対するドイツの迫害を嫌い、アメリカへ亡命。作者とともに、彼のオペラもアメリカで知られることになります。やがて、ブロードウェイのプロデューサーが、そのオペラをミュージカルに書き換えて上演するのですが、そこで初めて曲ができます。

やがて、そのミュージカルは映画化され、その映画で使われている曲を聴いたイギリスのロックバンドが、自分たちがリリースしたいとなった。イギリスでは、ミュージックチャートの上位曲をスタジアムで流す慣習があったそうです。そこで、この曲を流したら、スタジアムにいた人たちが曲に合わせて一緒に歌い出した。

ある文化が、別のある国に伝播(でんぱ)していく課程において、歌が介在したという物語です。サッカーにおいても、その歌は、リバプールからドルトムントに伝わって、トルコのクラブやいくつもの国のクラブで使われるようになりました。

僕の好きな言葉で「サッカーは世界の共通言語」というのがあって、まさにそのフレーズがこの映画で言い表されています。そういう意味では、純粋なサッカー映画ではないかもしれない。しかし、僕がサッカー映画に求めてきたものが、この映画ではダイレクトに表現されていました。

――なるほど。歌によって伝播された文化ですか。

福島 映画の中では、文化的な伝播の話が、ストーリーの縦軸になっています。もう1つの横軸は、この歌が、スタジアムの外にひろがり街のみんなに歌われるようになっていく過程です。次第に、人々の中で大事な歌になっていく。

僕なんか、Jリーグで毎週、贔屓(ひいき)のクラブチームで応援歌を歌っています。そうすると、団結感に包まれていくことが肌で分かります。リバプールでは、ヒルズボロの悲劇(1989年)がありましたよね。

――リバプール対ノッティンガム フォレスト戦であった群衆事故ですね。

福島 ゴール裏にいたサポーターたちが押し寄せて多くの死者を出してしまった。要するに、サポーターたちが悪いことをしたからと考えられていました。しかし、2012年に法廷で再審され、警察の記録の改ざんや警備の不備が明らかになり、悪かったのはサポーターたちではなったと証明された。その逆転勝訴を知らせるため、裁判所から出てきた関係者に対し、この歌「YOU’LL NEVER WALK ALONE」が歌われる。スタジアムで亡くなられた方の遺族が、この曲を歌ったのです。

この映画は、リバプールのファンやドルトムントのファンだけではなく、毎試合、スタジアムに駆けつけるJリーグのサポーターにも見てもらいたい。スタジアムの中で、みんなと合唱する歌には、例えば、学校の授業で歌う歌、カラオケ店で歌う歌とは、明らかに違う何かがある。そうした歌が持つ魅力を共感してもらいたい。

――この映画の字幕に関しては、福島さんの翻訳チームが手掛けたのですか?

福島 この映画に関しては、ドイツの映画会社が日本語字幕を付けています。ドイツ人が付けている日本語訳なので、据わりの悪い表現が出てきます。映画の中で、モウリーニョとクロップを表現した際に、「モウリーニョはスペシャルワン」で「クロップがノーマルワン」と言っている場面があります。ドイツ人が日本語に翻訳すると、ストレートにそのまま使えばいいところを、わざわざ「すごい人」と「普通の人」と翻訳してしまう。

――翻訳することで、逆に分かりにくくしてますね。

福島 それだと意味が通じないので、そういった箇所は直しました。

――上映権はレンタルですか?

福島 はい、レンタルですが、上映のチケット売り上げの何パーセントかを払うシステムになっています。そうした契約で、上映の許可を得ました。

「ビアンコネッリ:ユヴェントス・ストーリー」2月11日(日・祝)11:45上映

――次に紹介してほしい映画は、「ビアンコネッリ:ユヴェントス・ストーリー」です。
2月11日(日) 11:45上映。これは、ドキュメンタリー作品ですね。

福島 ユヴぇントスの映画です。有名選手や監督がたくさん出てきます。監督はマルコ&マウロ ラ ヴィッラ兄弟ですが、彼らのユベントス愛がすごく詰まった作品です。カルチョ スキャンダル(2006年)があって、それについても映画の中で語られています。でも、彼らからすると、仕組まれた罠(わな)だとなるのですが……。

オーナーのアンドレア アニエッリも話題になります。イタリアでは、ACミランがそうですが、クラブオーナーが表に出てきますよね。でも、ユベントスのオーナーの場合、ほとんど表に出てこない。それがこの映画では、詳しく語られている。イタリアのハイブランド企業と同じで、ユベントスも一族経営で成り立っていて、そうした側面も取材されています。

「アフリカ ユナイテッド」2月12日(月・休)11:00上映

――「アフリカ ユナイテッド」は2008年の作品ですね。

福島 実は、僕は2008年に「アフリカ ユナイテッド」を見ています。さまざまなアフリカ映画を紹介しているシネマ アフリカというグループがあるのですが、その上映会で見ました。とてもいい映画だったのでヨコハマ・フットボール映画祭で上映したいと願っていたのですが、なかなか実現しませんでした。

昨年の山形ドキュメンタリー映画祭に、この作品のプロデューサーが参席されると知りました。その関連イベントで、東京外語大学でこの映画を再上映することも知り、「じゃあ、もう一度見よう」と思い立ちまして。そうしたら、やっぱりいい映画だった。そこで、外語大にも来ていたプロデューサーに直接オファーして承諾を得ました。

この映画は、いわゆる「サッカー版スタンドバイミー」。ルワンダで作られています。映画「ホテルルワンダ」でも知られた大虐殺があり、その時のネガティブなイメージが世界に強く広まってしまった。そこで、この映画のプロデューサーが、そうしたルワンダに対する負のイメージを払拭したいと望んで、彼自らが会社を立ち上げたのです。

「WHO I AM ライリー・バット」「WHO I AM ベアトリーチェ・ヴィオ」2月12日(月・休)13:20上映

――これは、ドキュメンタリー作品で、サッカーとは直接関係がない作品ですが。

福島 サッカーを扱った作品ではないですが、車いすラグビーとフェンシングがテーマとなっています。前回の映画祭で、同じシリーズのブラインドサッカーのブラジル代表10番リカルディーニョセンスのエピソードを上映し、評判が良かったため、今回も取り上げたいと考えました。女子フェンシングの方は、2020年東京パラリンピックのスター選手になると言われています。WOWOWと国際パラリンピック委員会(IPC)が共同で作った映画で、WOWOWさんの協力の下、上映となります。

「セルティック ソウル」2月12日(月・休)15:55上映

――「セルティック ソウル」はドキュメンタリータッチの作品ですね。

福島 中村俊輔(ジュビロ磐田)がいたセルティックFCの“セルティック”は「ケルト人」を意味します。スコットランドのグラスゴーにホームがあり、イギリス近代史の中で形成されたクラブですが、アイルランドから移民した人たちの“よりどころ”になっています。

――ライバルチームのレンジャースはスコットランドのプロテスタント系が支持し、セルティックはアイルランドの移民でカトリック系が支持しています。

福島 映画の登場人物は2人。アイルランド系カナダ人の俳優と、フォックススポーツのコメンテーターのアイルランド人です。彼ら2人が一緒に旅をし、自分たちの文化のルーツの地を訪ねようとします。

――ロードムービー的な要素ですね。ルーツを求めた自分探しの旅。これは面白そう。

福島 彼ら2人が、特別な文化を体験しながら物語は進行していきます。

「ベイタル・エルサレムFCの排斥主義」2月11日(日・祝)14:50上映

――今回は、ドキュメンタリー作品が多いですね。海外だけでなく日本もですが、フィクションの物語を求めていない風潮がある。ノンフィクションのドキュメンタリーであっても、リアリティーの中にフィクションがあるのですが……。この作品は、どんな内容ですか?

福島 イスラエル・プレミアリーグに、唯一アラブ人選手を受け入れてこなかったベイタルFCというクラブがあります。あるシーズン、そのクラブの会長が、2人のチェチェン出身の選手を獲得します。ロシアとのビジネスの拡大が目的です。イスラム教徒の選手がクラブに加入したことで、サポーターは猛反発して応援を放棄する。選手たちを脅迫する者まで現れる。

世界には、貧困の問題、宗教の問題、女性差別の問題など、僕たちが知らない事情がたくさんあります。そうした問題は、サッカーを通じて描かれると、自分の国との違いに気付ける。サッカーというフィルターを通じることで、見えないものも見えてくる場合があります。

「フットボール アンダーカバー 女子サッカーイスラム遠征記」という映画を2013年の映画祭で上映したことがあります。この映画の題名にある「アンダーカバー」は、イラスム女性のスカーフ(ヒジャブ)を指します。スカーフをしてサッカーをすることが許されない時代がありました。ロンドン五輪(2011年)に出場を懸けたイラン女子代表が、ヒジャブを着けて試合に出場しようとしたのですが、ヒジャブは危険なため失格と審判に宣告された出来事がありました。そうしたことが、この映画の背景にあります。

ドイツの女子サッカーチームに所属する1人の選手が、イランの女子サッカー代表チームの話を耳にします。そこから、イラン女子代表対ドイツ女子アマチュアチームの試合の企画が進みますが、文化の違いと宗教上の理由により、なかなか話は進まない。最終的に、いろいろな人の協力によって、ドイツの女子アマチュアチームが、テヘランに渡って試合をするという話です。

もう1つの背景は、映画「オフサイド ガール」の話です。イスラム教徒の女子はスタジアムに入ってサッカー観戦ができない。そこで、女子たちが男子に変装してスタジアムに入ろうとします。戒律を破ってスタジアムへの突破を試みるという内容です。

単純に、選手の話で作られているとか、スポ根的に描かれているような作品ではありません。「ベイタル・エルサレムFCの排斥主義」も同じように、こうして描かれなければ知ることもできない題材です。何事も知ってもらうことから始まる。こうした作品に触れることで、何らかのキッカケになればいいと思っています。

「ジョホールバル 1997」2月12日(月・休)18:15上映

――植田朝日さんの作品ですね。

福島 「ジョホールバルの歓喜」から20年がたちます。その中心にいた選手や監督に取材。当時を振り返ることで、いまをも語る。

今回は、8作品を2日間で上映しますが、前回の11本と比べても、今回は1作品ごとに密度が濃い作品になっていると思います。今年は、7都市でジャパンツアーを開催する予定です。ロシアW杯の開催前のタイミングで、映画祭を1回開きたいと考えています。

最初にもお話したことですが、続けることは確かに難しい。でも、日本では僕しか主催者はいない。ライフワークと言ったらなんですけど、やれるところまで続けていきたいですね。

――多くの人がこの映画祭にやってきて、サッカーの作品を通して、他国の文化を知るキッカケになれば、続けることの意義を感じられますね。

川本梅花

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