「football fukuoka」中倉一志

【無料記事】【武丸の目】柏に0-1。歯痒さの残るリーグ戦4試合勝ちなし~試練を乗り越えるために考える2つの課題とは何か

試合が終わった瞬間、柏の夜空を見上げて唇を嚙み締めながらこんなことを想った。「こうもゴールを奪うのは難しいのか。勝つのは難しいのか」と。チームの目指す方向性を選手たちが必死に体現しようとする姿勢、試合内容とリーグ戦4試合未勝利という結果。サッカーの世界ではよくあることだが、それがリンクしないのが何とも歯痒い。だが、現状を嘆いていてもしょうがない。勝てないのには何かしら理由がある。柏戦で課題となりそうな点を2つ感じた。

1つはプレスの連動性。この試合、キックオフ直後からプレスがハマっていないことが気になっていた。アビスパの4-4-2に対し、柏は3-1-4-2のシステム。各所にミスマッチが起こるのだが、前半その優位性を活かしていたのは柏に見えた。それは意図した形でボールを運び、チャンスを創出していたからだ。「誰がどうプレスに行くのか上手くいかなかった」と宮大樹が話すようにアビスパは前線からのプレスがハマらないことでパスコースが制限できず、後ろに構える選手たちが球際の部分で後手を踏む。ロングボールを多用する相手にズルズルと押し込まれることで最終ラインの設定が低くなり、アビスパ本来の3ラインのコンパクトさが維持できずにセカンドボールの回収も難しくなっていた。前半はこの悪循環に陥る時間が長く、決勝ゴールを奪われた29分のシーンもその内に含まれるだろう。ただ、後半はより高い位置からプレスを発動し、前への意識がより強くなった。連動性も高まったことでアビスパ本来のコンパクトさが戻った。良い形でボールを奪うシーンも増え、良い距離感のままに攻撃へと移行。それが猛攻を仕掛ける最大の要因になったに違いない。だからこそ、前半の早いうちに修正ができていればと歯痒さが残る。

もう1つ挙げたいのは攻撃のズレだ。柏戦で放ったシュート数は公式記録で14本。過去3試合も、すべて2桁を数えている。昨シーズン以上にシュート数もさることながらバリエーションも増やし、チャンスを創出していることは間違いない。ただ、それがゴールはもちろん、どれだけ枠内にシュートが飛び、決定機として相手の脅威になっているかと問われればまだ物足りないであろう。その原因をミスと敢えて書かなかったのは技術的なミスというよりもパスの出し手と受け手の間でわずかにイメージが合っていないように見える場面の方が多く、効果的なシュートがゴールマウスを捉えられていないように見えるからだ。どちらか一方が悪いわけではない。お互いに目指している最終地点はゴール。その“正解”を導き出す過程の中でわずかなエラーが出ているような感覚に近い。

柏戦の試合後スタンドへ挨拶に来る選手たちの姿は当然悔しさが溢れていた。それでも「絶対に次はやり返す」。そんな力強い表情も見せていた。悔しさ、そしてこの歯痒さを打破するためにどちらの課題にも自分たちの持つ軸をぶらさずに日々改善に取り組むしかない。チームは監督・コーチングスタッフ・選手一体となってやろうとしているのだからアビスパに関わる全ての人たちも同じ想いで信じて戦い続けるしかない。明けない夜はない。この試練を乗り越えた先に大きな喜びが待っているのだから。

【武丸善章=文/中倉一志=構成・写真】

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