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難しい状況を一丸で乗り越えた金沢U-18。2年ぶりにクラブユース選手権出場決定【無料記事】

5日に日東シンコースタジアム丸岡で行われた北信越クラブユースサッカー選手権(U-18)大会準決勝。金沢U-18は松本U-18を2−1で下し、日本クラブユース選手権サッカー選手権(U-18)大会出場を決めた。

 

嫌な予感を断ち切る決勝ゴール

金沢は新型コロナの影響で5月9日のプリンスリーグ北信越第5節・星稜高校戦以降、公式戦を行うことができていなかった。3週間ぶりとなる1回戦・長野U-18戦(5月30日@菅平)は「負ければ終わり」という難しいシチュエーションだったが、ここを2−0で勝利。

 

勝てばクラ選出場決定となる5日の松本戦もキャプテンの平川悠人が負傷明け、辻田真輝監督もS級ライセンス取得のため試合当日朝にチームに合流という「いろいろな難しさがあった」(辻田監督)なかでのゲームとなった。

 

序盤から両チーム共に慎重に試合を進めるなかで静かな展開が続く。金沢はいい形で前線にボールが入っても、そこからなかなか繋がっていかない。もう一度戻したり相手に囲まれたりしてボールを失う場面も見られた。それでも時間が経つにつれて徐々に流れを掴み、決定機を迎えるようになる。34分には中川豪のミドルシュートが松本ゴールを襲ったが、ポストに嫌われてしまった。

 

後半もその流れをうまく継続し、早々に試合を動かす。54分、「前半のシュートも狙ったところにいったけど入らなかったので悔しかった。後半は自分できめてやろうと思っていた」という中川が左のペナ角付近でボールをもつ。キーパーの位置を見て右足で巻くように放たれたシュートは美しい弧を描いてファーサイドに突き刺さった。

 

それ以降も攻勢を強める金沢。後半は後ろからいいボールが供給されると、それがフィニッシュまで繋がるようになっていった。ハーフタイムで両サイドハーフを代えた金沢だが、左に入った柳村龍慎がボールをもつことで周囲の選手に時間もスペースができるようにもなっていく。先制点も、その柳村が起点となって生まれたものだった。

 

63分には平川悠が背後に抜け出してシュート、71分にも中川が抜け出しチャンスを迎える。「点をとりたかったので、どんどん前に入れていこうという話をしていた」というのは中川だが、その言葉通り追加点の予感が強く感じられる流れだった。

 

しかし72分、右サイドのコーナーキックからニアで合わせられ、ワンチャンスで同点とされてしまう。4月24日のプリンスリーグでの松本戦も先制したあとに追加点が奪えず、終了間際にセットプレーから同点に追いつかれていた金沢。似たような展開で残り約20分。このまま松本が勢いに乗るかと思われたが、選手たちは冷静だった。

 

失点したあとのキックオフですぐにフリーキックを得た金沢。直接ゴールを狙える距離・角度ではない位置だったが、山下莉人のキックは正確にファーで待っていた波本頼の頭を捉える。波本が折り返したボールは一度はクリアされてしまったが、「いいところに流れたのでラッキーだった」という不野優聖が鋭いミドルシュート。これがネットを揺らして、失点からわずか2分後に再びリードを奪う。

 

嫌な流れをすぐに断ち切ったことで、再びペースを掴んだ金沢はその後も後ろからの長いボールに2トップが絡んで決定機を迎えることもあった。終了間際には失点と同じような松本の右コーナーキックもあったが、これを波本がしっかりと弾き返して試合終了。2年ぶり3度目となるクラ選の出場権を獲得した。

 

3年生と下級生の思いが一致

 

「3年生を全国に連れていくために1・2年生がもっと気合を入れてやらなければいけない。そこを練習から意識してやっていた」と言うのは先制ゴールを決めた2年生・中川。一昨年までは秋・冬にJユースカップという全国の舞台があったが(昨年は中止)、今年からそれがU-17のJユースリーグとなったため、3年生にとっては夏のクラ選が唯一の全国大会となった(Jユースリーグにはオーバーエイジとして3年生もFP3名+GK1名は参加可能)。

 

この中川をはじめ1回戦で2アシストの柳村や先制点の平川稜、そして準決勝で決勝点につながるフリーキックを蹴った山下はいずれも2年生だった。今年のプリンス開幕戦後に辻田監督は2年生の自覚を促すような言葉も発していたが、プリンスリーグを含め、このところ2年生がゴールに絡むことが多くなってきている。中川自身は「2年生がもっと気合を入れないとダメ。3年生よりも気合を入れることを意識している」と、気持ちやメンタル面での成長が必要であると話していたが、3年生と戦う最初で最後の全国大会に出場するためにという思いもあって、2年生にも少しずつ変化が表れてきているのかもしれない。

 

逆に3年生から下級生はどう見えるのか。決勝ゴールを決めた不野は3年生。「辻さんも言っていたけど『3年生は1・2年生のために、1・2年生は3年生のために』という言葉を胸に戦えたことが全国にいけた要因」と、チームの一体感を勝因に挙げている。

 

不野は「(平川)悠人が競って、(中川)豪が走る。フォワードが頑張ってくれたのがこの試合は大きかった」とも言う。キャプテンの平川悠は負傷明けの試合が気温31.2℃という難しいコンディションにもかかわらず、フル出場で90分間攻守に走り続けた。本人はチャンスでゴールを決められなかったことを悔しがっていたが、2トップを組む中川は「体を張っているので頼りがいのあるキャプテン。僕はいつも助けてもらっている」と話すなど、その存在感はやはり大きかった。

 

プリンス北信越2位という結果を残した昨年でも、あと一歩のところでクラ選には出場できなかった。冒頭にも記したが、今大会はそのときにも増して難しい状況だったかもしれない。そんななかで3年生の強い思いと下級生の成長、復帰したキャプテンの存在感、モチベーションを上げる監督の言葉、監督不在のなかで支えてきたスタッフ。さまざまな思いでチームが一丸となって掴んだ2年ぶりの出場権だった。

中川はこの位置から巻いて逆サイドを狙う難しいゴールで先制点

ベンチメンバーと喜び合う中川

逆転ゴールに繋がるフリーキックは平川稜が仕掛けて得たものだった

フリーキックを蹴る直前の山下(左)と柳村(右)

山下のキックをファーの波本が頭で折り返す

クリアされたボールに反応した不野がミドルシュートを叩き込んだ

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