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1勝【無料記事】

27日に行われたクラブユース選手権グループステージの最終節。金沢U-18は試合終了間際のゴールで、クラブ史上初となる勝点3をもぎとった。

 

初勝利はお預けかと思われた

 

前節の大分U-18戦に続き、金沢は立ち上がりからチャンスを量産する。3分に柳村龍慎のサイドチェンジから平川稜がシュートまでもっていくと、8分には柳村がカットインからシュートを放つ。そして11分、平川稜のパスで中川が抜け出すと、これを冷静に決めて今大会チーム初得点でリードを奪う。

 

しかし、それ以降は徐々にボールを握られる時間が長くなる。動かされ、焦れて出るとあいたところを使われるようになっていく。そして18分、PKを与えてしまうと、これを決められ同点とされる。

 

その後も大きく展開されてピンチになったり、守備での判断が難しくなる状況が続く。それでもキーパーの浦理貴弥の好セーブなどもあり、なんとか1−1でハーフタイムを迎えた。

 

このままの流れでは危なかったが、後半開始早々にサイドチェンジから鶴谷圭吾がシュートを放つなど、流れを取り戻した金沢。そして以降はそのままペースを握ったままゲームを進めていった。守備で穴をつくらず、ボールを奪い、いい守備からいい攻撃に展開。強さや運動量でも上回り、チャンスをつくり続けた。あとはクロスの質やシュートを打つ・打たないの判断、そしてシュート精度次第。チャンスはあるがジリジリとした展開が続き、アディショナルタイムが5分と表示される。

 

このままタイムアップかと思われた70+4分だった。

右サイドを3人で崩すと、途中出場の宮前享真が切れ味鋭いドリブルで運んで低いクロス。これに合わせたのは直前に投入されていた井上龍昇。「1−1だったので、点をとりにいくこと、意識したことの8割、9割は点をとること」だったという2年生のファーストタッチでゴールをこじ開けた金沢が、ついに勝ち越しに成功。その直後のピンチも浦のファインセーブでしのぐと、歴史の扉を開けるホイッスルが鳴り響いた。

 

 

 

あまりにも劇的な勝利だったので、試合後は冷静に取材をすることができなかった。そして最終節に出場した14人の一言コメント動画を撮っていたら、時間もなくなってしまった。前半途中で交代となってしまった北啓佑は試合後、涙に暮れていたが、それでもこの動画の撮影に協力してくれた。歴史を変えた選手たちの貴重な映像はクラブに渡しているので、どこかで公開されることでしょう。

 

聞きたいことは山ほどあった。去年の悔しさを知る3年生は先輩たちに、この勝利をどう報告するのか。昨日、あれだけ得点にこだわっていた中川豪は自身の得点と勝利の感想をどう語るのか。この大会に向けて髪を短くした平川稜は1勝に何を思ったのか。前線で走りまくっていた鶴谷圭吾、この試合もボールを狩りまくった村田健人、2年生で全試合フル出場した高橋祐翔、そして勝点3の立役者・浦理貴弥等々。今回は試合後、驚くほど冷静だった齋藤将基監督の短いコメントをだけ掲載します。

齋藤将基監督

「2試合負けてグループリーグ突破がなくなったなかで、こういう姿勢を見せてくれたことは、この子たちの代にとってはすごく成長したこと。当たり前のことだけど、成長が見えたのはすごく良かった。こっちから発破をかけた部分はあるけど、そこが一番よかった。

ボールをもたれているときも、前半のように人にバンバンいってしまうと崩れる。ある程度構えた状態だと相手も焦れるので、そこからのカウンターは絶対にチャンスだよ、ただボールをもったときには落ち着こうねと(伝えた)。もっとチャンスはつくれたと思うし、カウンターでチャンスをつくっても最後に焦ってしまうことがあった。シュートのチャレンジは悪くないけど、もっと落ち着いてプレーできればよかった。

自分たち(コーチングスタッフ)の仕事は試合の結果だけではない。一番フォーカスしなければいけないのは個をどれだけ成長させられるか。フロンターレ戦ではなかなか個のところを見せられなかったと試合が終わってから伝えた。もっとトライしていこうよという話をして、大分戦からは自分たちのストロングを使えるようになった。回数を増やす意識が出てきたことはよかった。

最後のところでずれずに守備をする。焦れなければチャンスは絶対くると思っていた。前半もそうだけど、交代で入って出てくれた選手がアシストと得点に関わったのは自信になったと思うので、そこはよかった」

 

 

最後に監督に「クラブの歴史をつくったというのは大げさですか?」と聞くと、こう答えてくれた。

「もっと大きいところで歴史をつくりたかった。でも一歩一歩やっていければいいかなと思います」

 

たしかに伝統あるクラブから見れば笑われてしまうような小さな1勝かもしれない。それでも金沢U-18は、より大きな歴史をつくるための一歩を踏み出した。

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