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デイリーホーリーホック

【シーズンオフ特別企画】ボランティアグループ「Tifare」代表補佐・栗原賢二さんコラム「裏方魂⑰ 鉄骨を呆然と見上げた日」(2014/1/20)※全文無料公開

リーグ再開までの不安にさいなまれる日々

2011年は、クラブが大きな危機に直面したシーズンとして記憶されます。
リーグから借り入れた基金の返済期限があり、そのためにもどうやって観客動員を盛り上げていくか真剣に取り組み始めた矢先に起こった東日本大震災。風評被害も重なり地域の明日が見えない状況は、サッカーにも暗い影を落としました。水戸ホーリーホックにとってまさに「追い討ち」となったのです。

週末に試合が開催されない空虚さ。「がんばろう!」の合言葉だけで蘇れるような強い基盤を持ったチームじゃない事は、関わってきてよく知っている。
このまま解散なのか? 不安にさいなまれる日々を過ごしました。
東北の沿岸で命を奪われた方々の事を思えば、不謹慎で贅沢な話だと自覚しながら。

4月に入ってJリーグ再開の吉報。ホームゲームも引き続き行えるらしい。
Ksスタの損壊状況は新聞等で知っていたけど、ボランティア復帰する前に見ておこう。
私は自転車を飛ばし、現地の様子をこの目で確認しました。

地面の陥没と、外壁のひび割れを数か所発見。中に入れないからよくわからないけど、
内装や電気系統の手入れが必要だろうか。もっとひどく壊れている画を想像してたため
「これなら何とかなるかな?」と、安易な感想を抱いて帰路につきました。

しかし数週間後、認識の甘さを思い知らされます。

現場での苦悶の数々により成長。多くの出会いも

写真1
【写真提供 栗原賢二さん】

メインスタンド屋根と照明灯を修復するため、客席に組まれた膨大な鉄骨の足場。呆然と見上げるばかりでした。
建築の素人とはいえ、演劇時代に足場や照明1基を調整するのにどれだけ時間がかかるか経験しています。
これはすぐ直るような話じゃない。淡い希望的観測を打ち破るのに、充分すぎるビジュアル。

私が運営で担当しているのはメインスタンド統括。だけどその場所はしばらく使えない。
ゲートを作るはずのスペースに、重機と資材が並んでいます。

写真2
【写真提供 栗原賢二さん】

栗原戦力外という言葉が頭に一瞬よぎったものの、この期間はまた複雑な役割を与えられました。
『バックスタンド側の、メインスタンド席エリア統括』
??何のことやらわかりませんよね(苦笑)少し写真で説明させてください。

写真3
【写真提供 栗原賢二さん】

客席を区切る、柵とヒモが見えるでしょうか?普段バックスタンドとして使われていた箇所のみが
使用できるため、中央寄りのエリアを『暫定メイン席』と割り振りました。
TVカメラや放送席もこの狭いスペースに集めざるをえず、緊急事態ぶりが伝わってきます。

写真4
【写真提供 栗原賢二さん】

両サイドに配置された『暫定バック席』を行き来するには、一旦階段を上ってもらわなくてはいけない。
通り抜けできる通路は最下段か最上段のどちらか。最下段を歩くのは観戦の妨げになるため避けたい。
それをお客さんに理解して頂くのに、多大な労力を使いました。苦肉の策とはこの事です。

現場で運営システムを1から組み直す混乱、次から次へと発覚する問題点。
私自身も冷静じゃなかったし、この時期の思い出は苦しいものばかりです。
だけどこれを経験したからこそ気づけた事、前に進んだ事もあったのかなと。

写真5
【写真提供 栗原賢二さん】

狭い場所へ密集するしかない状況で、お客さんの応援に一体感が芽生えたのは大きな収穫。
従来は「温度差」の激しかったエリアも、自発的に拍手や歓声が起こるようになりました。
あの昨年ホーム最終戦の素晴らしい雰囲気が生まれた原点は、ここにあるのではないでしょうか。

写真6
【写真提供 栗原賢二さん】

チーム内部ばかりでなく、他地域との結束も高まりました。これは熊本からの寄せ書き。

写真7
【写真提供 栗原賢二さん】

使用できる箇所も徐々に拡大。施設を当たり前に使える、感謝のレベルが上がりました。

私達の体験したものが「修羅場」の類かわからないし、お客さんに不便をかけた以上は単純に「良かった」とも言えません。
だけど現場で味わった苦悶の数々が自分を成長させ、多くの出会いをもたらしてくれたのは確か。
思えばデイリー・ホーリーホックとの関わりも、暫定メイン席での雑談がきっかけでした。

震災後に見上げた鉄骨の足場は絶望的な風景だったけど、あれはただ設備を修理するだけでなく、水戸に新しい価値をもたらすため組んだものなのだと。その土台の上に、今日という「未来」があります。

一度壊れてしまったとしても、直った時にはひと回り強くなっている。
スタジアムも、チームも、人の心もきっと。

写真8
【写真提供 栗原賢二さん】

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