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WEリーグ 岡島喜久子チェアインタビュー前篇「女子がどこまでできるか」

202010月は、WEリーグと日本の女子サッカーにとって一つの節目の月となります。2021年秋にスタートするWEリーグ(日本女子プロサッカーリーグ)への入会申請をした17団体の中から、初年度の参加クラブ(610クラブ)が発表されるのです。その審査が大詰めのお忙しい中で、 #女子サカマガ は岡島喜久子チェア(代表理事)のお話をうかがう機会をいただきました。

 「女子初のプロリーグの初代代表理事(チェア)に米在住の岡島喜久子氏が就任。」このニュースは、スポーツメディアに限らず、一般紙、経済誌をはじめ、多くのメディアで報じられました。岡島チェアは日本の女子サッカー草創期に日本初の女子クラブ・FCジンナンでプレー。日本女子サッカー連盟設立時の初代理事。証券会社で働きながら日本女子代表としてプレー。海外へ転勤となったことから1989年に現役引退。現在も、米国を生活拠点とされています。

報じられた岡島チェアのプロフィールを読むと、岡島チェアには2つの顔があるように感じます。一つは日本の女子サッカー創世記にいち早くプレーされた「元選手の顔」。そしてもう一つは米国で活躍されている「ビジネスパーソンの顔」です。

インタビューはZOOMを使用して行いました

WEリーグの現在地と岡島チェアの考える女子サッカーの未来に迫ります

インタビューは前篇・後篇に分かれています。今回の前篇では、読者の皆さんに、元選手でいらっしゃる岡島チェアのサッカー愛と想い描く未来のお話をお伝えします。日本の女子サッカーは、これからどのように変わっていくのでしょうか。そして、前篇の最後には、はやぶさイレブン(神奈川県2部リーグ・男子)に期限付き移籍を発表した永里優季選手へのメッセージもお預かりしました。

次回の後篇では、米国を生活拠点とし、厳しい金融業界で生きてこられた岡島チェアのご経験と、WEリーグ設立に向けた「アツい想い」をお伝えします。

インタビューの冒頭で「日本の女子サッカーを変えるにはどうしたら良いのか?」という話題になったとき、私は、岡島チェアがビジネスパーソンとして回答されるものと思い込んでいました。しかし、岡島チェアが、まず切り出したのは意外な回答でした。

岡島今までと同じことをやっていてはダメで、注目してもらわないといけないと思います。注目を集めるためには、試合会場に人を集めるということがどうしても大切です。プレナスなでしこリーグの平均観客が1,345人(2019年)。これを(目標の)5,000人にしなければなりません。今はネット配信のリモート観戦が中心かもしれませんが(プレナスなでしこリーグ1部は全試合、2部もほとんどの試合を生中継している)、来年にWEリーグが開幕してからは、まず、第一に集客をしなければならないと思っています。

コーチの方、監督の方は、ぜひ、子どもたちを連れて来てほしい。WEリーグでトップレベルのプレーを見せてあげてほしいです。私は現役時代に「自分と同じポジションの選手」をずっと目で追っていました。誰かがボールを持ったときに「自分と同じポジションの選手」は、どのタイミングでどこに走り出す?・・・それはスタンドに来ないと見えないのです。例えば、GKをやっているお子さんなら、ゴール裏スタンドから「GKがどんな声を出しているか?」「GKがどこにフィードするのか?」も見てほしいです。

・・・元選手としての回答でした。

皆さんは女子サッカーに、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

なでしこジャパンがFIFA女子ワールドカップ2011ドイツ大会に優勝、2012年にロンドン五輪で準優勝。世界の頂点を極めたことで、女子サッカーは日本中で老若男女を問わない大ブームとなりました。どれくらい凄いブームだったかといえば、実際に「歌舞伎に、なでしこジャパンのメンバーをモデルとした肩にアディダスの三本線が入ったデザインの着物の人物が登場した」くらいの大ブームです。今もテレビで大活躍の丸山桂里奈さんをはじめ、多くの選手が頻繁にテレビに出演し、大活躍しました。

201186日に開催されたプレナスなでしこリーグ、アルビレックス新潟レディース対INAC神戸レオネッサが24,546人の観客を集めるなど、多くのファン・サポーターがスタジアムに詰め掛けました。現在のプレナスなでしこリーグが1万人以上の観客を集めることはありませんが、当時の大ブームを経験し、潜在的に女子サッカーに興味をお持ちの人は、今でも多数存在します。

FIFA女子ワールドカップ2011ドイツ大会決勝戦

一方、FIFA女子ワールドカップ2011ドイツ大会でなでしこジャパンに敗れたものの、ロンドン五輪で雪辱を果たし世界女王に返り咲いた米国女子代表はFIFA女子ワールドカップ2015カナダ大会、2019フランス大会を連覇。米国国内リーグは2011年でWPSWomen’s Professional Soccer)が活動を停止し、2013年からはNWSLNational Women’s Soccer League)がスタート。2020年は、ハリウッド女優のナタリー・ポートマンさんらの投資グループが新チームを結成し参戦することを発表し話題になりました。

20年前にプロリーグの歴史をスタートした米国をはじめ、欧州等、世界各国の女子サッカーリーグはプロ化を急速に進めています。現在のプレナスなでしこリーグはアマチュアリーグですが、一部の選手は所属クラブとプロ契約をしています。

さて、ファン・サポーターはどうでしょう。公開されている「2014プレナスなでしこリーグスタジアム調査」によると、観戦者にはこのような特徴があります。

  • 男女は男性約70%、女性約30%で、Jリーグよりも女性の来場が少ない。
  • 年齢は40歳以上が約75%を占めておりJリーグよりも若年層の来場が少ない。
  • 観戦行動は1人で観戦が約40%を占めておりJリーグよりも一人観戦が多い。

2014年シーズンの調査結果なので、現在とは異なる場合があります。

岡島チェアは、WEリーグのスタートでプロ化に大きく舵を切る日本の女子サッカーを、どのよう変えていきたいとお考えなのか、聞いてみました

岡島現在のファン・サポーターに加えて、WEリーグのスタンドに来ていただきたいのは、今までプレナスなでしこリーグの試合を見たことがない、女子サッカーを一度も見たことがない人です。一番来ていただきたいのはサッカーをプレーしている女の子。今、あまり来ていただけていないです。子どもたちは自分たちの試合がありスケジュールが重なる。自分の試合を中心に生活するとなかなかスタンドに来られない。私たちは「WEリーガーを女子の夢の職業にしよう」と考えているのですが、これは一つの大きな課題で、解決しないといけないと思っています。

フライデーナイトJリーグに男子小学生がたくさん来場したという話もあります。フライデーナイトJリーグには「金曜の夜にサッカー観戦をしながら飲み会やデートをする新しいライフスタイル」の提案という狙いがあったのですが、始めてみると(これまでスタジアムに来場されていたファン・サポーターに加えて)男子小学生がたくさん来場された。WEリーグも(プレーしている女の子)が来ていただきやすい工夫をしたいと思います。(観客動員の)具体的な目標は5,000人ではありますが・・・スタジアムの歓声に黄色い声を増やしたいです。米国女子プロサッカーNWSLNational Women’s Soccer League)の観客は「女の子がサッカーをしているファミリー、お兄ちゃんも弟も一緒に来る」という感じです。他に「女の子が自分の所属チーム単位で来る」こともあるし「女の子のグループで来る」こともあります。米国女子代表の試合には、たくさんの女の子が米国女子代表のユニフォームを着てスタンドにやって来ます。それを日本も実現したいです。

—私が、FIFA女子ワールドカップ2019フランス大会の決勝戦を見に行ったときに、このサイトのプロデューサーの石橋克江がスタンドで「これはサッカーの大会ではないよ、女の子の大会だよ」と言った、それが、全てを表していると思いました。日頃はサッカーをプレーしている女の子が、自分の憧れの代表選手のプレーを応援して楽しむ、そんな雰囲気にスタンドは満ちていました。あの雰囲気が日本でも実現すると良いですね。

FIFA女子ワールドカップ2019フランス大会

タイトルIX(タイトル・ナイン)制定でご両親が後押ししてくれるスポーツになった米国の女子サッカー。WEリーグ誕生で日本の女子サッカー選手は、ご両親に喜んでいただける職業になるか?

タイトルIX(タイトル・ナイン)をご存知でしょうか。1972年に制定された「連邦法教育法第9篇」の呼称です。連邦政府から助成を受ける教育機関での性差別が禁止され、米国の学校スポーツに大きな影響を与えました。簡単にいうと、例えば「学校に男子のサッカー部があるならば女子のサッカー部もなければ平等ではない」というルールが法律で定められたのです。

岡島米国ではサッカーが、バスケットボールと同じように「男の子も女の子もプレーするスポーツだ」と認識されています。(このような環境になった)大きな理由の一つは大学にサッカーチームがたくさんあることです。これには1972年に成立されたタイトルIX(タイトル・ナイン)の影響がとても大きいです。

タイトルIX(タイトル・ナイン)の恩恵を大きく受けたのは、団体競技で選手の数が多い女子のサッカーと女子のラクロスだといわれています。例えば「サッカーが上手だと奨学金をもらって大学に入りやすい」ということが起きました。米国の大学は学費等がとても高いです。度々「学生ローン危機」が社会問題になっているほどです。「あの大学は女子サッカーで奨学金が出るらしいよ」「スカウトが来たらしいよ」・・・だから、ご両親にとっては女子サッカーによって、娘さんの未来が開ける可能性が出てくるわけですね。

—タイトルIX(タイトル・ナイン)が制定されてから、50年近くが経っています。その歴史の蓄積の上に今の米国女子サッカーがあるのですね。

 

残念ながら、日本にはタイトルIX(タイトル・ナイン)はありません。しかし、プロリーグであるWEリーグの誕生で「女子サッカー選手がご両親に喜んでいただける職業」になれば、女子スポーツを取り巻く環境は大きく変わるかもしれません。

そして、日本の女子スポーツ史を語る上で忘れてはならないのは、企業によるスポーツ振興です。長い歴史の中で、(実業団と呼ばれる)企業が、大学や高校を卒業した多くのスポーツ選手を社員として登用。選手が安定した収入を得ながらプレーできる環境を提供してきました。例えば、プレナスなでしこリーグのノジマステラ神奈川相模原は東証第一部上場の株式会社ノジマを母体としたチームです。働きながらプレーした選手の中には、引退後も会社に残り、産休育休を経て今も働き続けている人がいます。また、東京電力女子サッカー部マリーゼ(丸山桂里奈選手が所属)は2011年に廃部になりましたが、今でも、東京電力で重要なポストに就いて働き続けている元選手がいます。

「プロ契約の最低年俸」を定めているのはWEリーグの特徴の一つです(Jリーグには最低年俸は定められていません)。最低年俸は270万円。金額は大卒の初任給を基準にしています。WEリーグは、従来からの日本のアマチュアスポーツが育んできた良いところを引き続き生かしながら、新たな魅力に溢れるプロスポーツの新基準を創り出していくのではないでしょうか。

 

—なぜ、米国の大学は奨学金を用意して有力な選手を獲得することができるのでしょうか。

岡島米国の大学スポーツには潤沢な資金があります。例えば、テレビ放映権で莫大なお金が入ってきます。

—WEリーグも中継がどうなるのだろう?という期待を既にお持ちの方もいらっしゃいますが、いかがでしょう?

岡島もちろん放送したいです。これから交渉していきますが、全国放送が決まるとスポンサー企業にとってはとても大きいことだと思います。

WEリーグの考えを主張するというよりも「WEリーグが場を作る」イメージ

岡島ゴルフのLPGA(日本女子プロゴルフ協会)の役員をしている友人は「女子スポーツは横の繋がりがあまりない」と言います。米国の女子スポーツには、何かあれば、バスケットボール、テニス、サッカー・・・と横に広がっていくイメージがあるのですが、日本では、そのようなことはなかなかないですね。WEリーグの誕生で、何かの糸が繋がって、女子のスポーツをやっている人たちが連絡を取り合うようになったり・・・同じ行動を起こすようになるきっかけになればと思います。例えば一緒に「シングルマザーをサポートする日」を創設するなど、テーマを考えて、みんなでメッセージを発信できればと思います。

—「こうあるべきだ」とWEリーグが主張するというよりも「こういうことがあるから、皆さん一緒に考えましょう」という場を作るというイメージでしょうか?

岡島そうです。私たちがするのはスポーツです。(意見を主張するというよりも)社会に対して「みんなが納得できるメッセージ」を出すことができれば良いと思います。

—確かにそうですね。例えば、私が「Black Lives Matter(黒人の命も大切だ)」について調べたときに最も参考になったのは永里優季選手のnoteでした。なぜ片膝をついた選手とつかなかった選手がいたのかを、ピッチ上からの立場で説明されていたので理解できました。

「女子がどこまでできるか、みんなに見せてあげて!」

—その流れでお聞きしますが永里優季さんの第1種(Jリーグ等、性別、年齢を制限しない選手により構成されるチーム)登録については、どのようにお感じになられましたか?私は、第1種登録は、実は性別の制限をしていなくて「サッカーは誰でも対等にプレーできる環境を提供している」という姿勢を多くの方に知っていただける機会になったと思いました。

岡島全国に第1種登録されている女性は40名前後いらっしゃいます。永里優季選手が、はやぶさイレブン(神奈川県2部リーグ・男子)でどれくらいできるのかは興味があるところですね。「女子がどこまでできるか、みんなに見せてあげて!」という感じです。「ぜひ、皆さんに力を見せて!そして、次のステップではWEリーグにいらしてください。」と応援のメッセージをお伝えしたいです。

この続きは後篇でお届けします。

(インタビュー:2020915日 石井和裕)

 

※「プレナスなでしこリーグは全試合を生中継している」と当初は記載しましたが2部に中継されていない試合があるため修正いたしました。

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