中野吉之伴フッスバルラボ

またここから始まる(かもしれない)新しい生活。発表直前のドイツより

こんにちは。無料コラム担当のゆきのです。

ドイツで学校に通う子どもを持つ親は、今(415日の昼)なんとなくそわそわしています。最初に予定されていた一斉休校は419日まで。来週以降、学校が再開できるか、できないのか、再開の場合はどのようなプロセスで平常化をめざすのか、その発表がまもなく予定されているのです。

「自宅学習は親も子どももしんどい」

「そろそろ学校に戻ってくれないと勉強に遅れが出ないか心配」

「早く友達に会いたい」という親や子の声がある一方で、

「再開はまだ時期尚早なのではないか」

「遊びたい盛りの子どもが、学校で社会的距離を保つなんてできるのか」

「すぐ隣のフランスでは外出制限措置の延長が決まったのに」という不安の声、そして

「……また毎日早起きしなくちゃいけないのかあ…もうちょっとのんびりしてたいかも」という本音もちらほら聞こえてきます。

スケジュールと一貫指導の関係性とは?選手のキャパシティを考慮する。指導者の枠にはめようとしてはいけない

上のリンクは2017年に中野が書いたコラムです。トレーニングの質を高めるためには、一貫性や継続性が大切であり、そのためには各年代で身につけるべき要素を整理して、成長の見通しを持つためのスケジューリングが必要であるということを伝える一方で、スケジュールに縛られず、目の前の子どもと一緒に、柔軟に歩いていく姿勢も重要である、とも書かれています。

2020年の今、子どもたちの目の前にあった全てのスケジュールは、一度白紙になりました。学校のテストも、友達と遊ぶ約束も、サッカーの試合も、家族旅行も、全てです。

同じ学校や同じチームにいて、一見同じスケジュールを共有しているように見える子どもたちでも、内面には様々なものを抱えています。同じ教室に集まってはいても、家の状況は一人一人みんな違います。同じトレーニングをしていても成長スピードは違う。何もないように見えるときでさえ、子どもたち11人の状況は皆それぞれ違います。

全てのスケジュールが停止し、子どもたちが社会の中で繋がりあうことが大きく制限されたたこの1か月間、子どもたちはそれぞれの場所でどのような時間を過ごしたのでしょうか。子どもの数だけの異なる生活がそこにあったはずです。

toraemonさんによる写真ACからの写真 

私たち家族は、初めの頃こそ不安も動揺もありましたが、それでもまず健康で、制約の中でも楽しめることがあり、なるべくストレスの少ない暮らし方を工夫しながら家にいることができました。それは間違いなく幸運なことだったと思いますが、そうではない生活をしていた子どもも少なからずいたはずです。

フィジカル的にもメンタル的にも深刻な問題を抱えてしまった子ども。

コロナ前から潜んでいた問題が浮き彫りになってしまった子ども。

本来なら子どもたちをサポートし、寄り添う立場であるはずの我々大人も、自分たちの生活の基盤が大きく揺らいでしまったこの状況の中では、正直自分のことだけで手一杯だったと思います。平静に余裕を持って対応できた人のほうが少なかったのではないでしょうか。

oldtakasuさんによる写真ACからの写真 

来週からの生活がどのようなものになるのかはまだわかりませんが、一気に元の生活に戻れるわけがないことは子どもの目にも明白です。具体的にどのような形になるかはわかりませんが、少しずつ、ゆっくりと段階的に、様々な活動が再開されていくのではと思います。教室で、公園で、グラウンドで、何の気兼ねもなく子どもたちがひしめき合うことができるのは、まだまだずっと先のことになるでしょう。

一度全てが白紙になってしまった状況から、私たちはまた少しずつ、コロナ後の世界に向かって新しいスケジュールを描いていこうとしています。空白の期間を取り戻そうと焦るのではなく、子どもに寄り添って、今の状況の中でどんなことが私たちにできるのか。心身ともに健康で、安全に過ごせることを最優先にしつつ、「できること」の質を地道に少しずつ上げていきたいですね。

今週もお読みくださりありがとうございました。皆さまもどうぞお体を大切に、無理をせず、お元気でお過ごしください。

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