中野吉之伴フッスバルラボ

【コラム】薄暗い夏の昼下がりとジャガイモの国のポテサラ話

こんにちは!

最初にお知らせです。WEBマガジン中野吉之伴「フッスバルラボ」は日本でのお盆休みと合わせて、今週末から1週間お休みとさせていただきます。休むことの大事さを常々伝えている当フッスバルラボですから、私たちもきちんと休んで、めりはりのある活動をしたいと思います。

夏休み明けとなる中野の更新は8月21日(金)、そして編集・管理人ゆきのの次回更新は8月26日(水)の予定となりますので、よろしくお願いいたします。

さて「子どもと育つ」毎週水曜日の無料コラム、本日は暗い部屋からお送りしております。

何故暗いかといえば、外が暑いからです。ドイツではほとんどの一般家庭でエアコンが普及していません。ただし、冬の厳しさに備えて建物の断熱性はとても高いので、暑い日には建物の日向側になっている部屋の窓やカーテン、雨戸があれば雨戸も閉め切って、徹底的に日光と外気を部屋に入れないようにします。

湿度が低いおかげで日陰は涼しいので、建物の日陰側になっている部屋があればそちら側の窓を開けて風を通し、なければ閉め切ったまま扇風機などをつけて夜までしのぎます。このやり方で、外気が30℃を超えている日でも室内は25℃27℃くらいに保つことができます。

よほどの熱波が来ない限り夜には気温が下がるので、就寝前や早朝に窓を全開にして、涼しい時間帯のうちになるべく外気を入れておくこともポイントです。

というわけで、エアコンなしでもなんとか過ごせているドイツの8月ですが、外がギラギラと明るいのに閉め切った薄暗い部屋で生活するというのはなんとも奇妙な感じ。

新型コロナウィルス対策で換気の重要さが叫ばれているにもかかわらず、極力外気を室内に入れないように暮らすというのもなんとなく気持ち良くないものです。かといって気分転換に外に出るのも暑いし、日陰の多い公園や緑地帯は涼を求める人で混んでいることも多く、悩ましい夏です。

写真:https://www.chefkoch.de/

さて、話題は変わって、今週は最近日本でも話題(もう古いのかもしれませんが)のポテトサラダのことをご紹介したいと思います。

日本の皆さんにとって、ドイツ料理といえば、多くの方がソーセージと並んでジャガイモをイメージされるのではないでしょうか。

ドイツ人に言わせると、日本人のコメの消費量が減ったのと同様、食の多様化した現代では「そんなにジャガイモばかり食べてるわけじゃない」とのことです。とはいえ国民一人当たりのジャガイモ年間消費量は2015年のデータで53.1㎏。日本は平均して年間10㎏程度だそうですから、数倍の開きがあります。

ドイツ人の「そんなにジャガイモばかり食べてるわけじゃない」はあくまで「昔に比べれば」の話だと思われます。なにしろ1950年代は一人当たり年間200㎏以上のジャガイモを食べていたというデータがあるくらいですから。

写真:https://www.chefkoch.de/

調理方法も多彩で、フライドポテト、ベイクドポテト、マッシュポテトとシンプルなものから、すりおろしたじゃがいもを焼き込んだパンケーキやグラタンなど多種多様。それぞれの家庭の味もありますし地方差もあります。

中でもポテトサラダは本当にバリエーション豊か。私自身も、これまで家庭料理のポテトサラダやお店のポテトサラダなど、たくさん食べてきましたがどれも個性的で、日本のポテトサラダに比べると「これが定番」というものがあまりありません。

ドイツの料理レシピサイトで”Kartoffelsalat(ポテトサラダ)で検索すると、その多彩さにびっくりします。ジャガイモとタマネギだけのシンプルなもの、チーズやベーコンやブイヨンを加えてコクを出したもの、トマトやキュウリやゆで卵をトッピングしたカラフルなもの。

ジャガイモの形状もつぶしたりスライスしたりと様々ですし、できたての熱々を食べるレシピもあれば、冷やして味がなじんだところを頂くレシピもあり、一口にポテトサラダといっても奥が深く、日本人のイメージ以上に幅が広いです。

写真:https://www.chefkoch.de/

スーパーのお総菜コーナーにも、これほど多彩ではありませんが、パック詰めや量り売りのポテトサラダが売られています。ネットや料理本などでポテトサラダのレシピタイトルを見ると、「おばあちゃんの味」「ママの味」「●●地方伝統の味」というタイトルがついているものが多いので、一世代前まではドイツでも「ポテトサラダくらい家で作るのが当たり前」だったのだろうと思われます。が、それも時代とともに変わりつつあります。

そもそもドイツでは日本に比べて毎日の食事の支度にあまり手間をかけないおうちが多いようです。料理の好きな人や、料理を楽しむ時間がある人、特別感のある料理を楽しみたい人は別ですが、日常の食事はとてもシンプルです。

ドイツ語にも”Liebe kommt durch den Magen(愛は胃袋を通ってやってくる)“ということわざがあるくらいですから、料理=愛情と考える面も確かにあるんでしょう。ただ、愛情と手間暇をかけることとはちょっと別だと考えられているようですし、毎日必ず手作りでなくても問題ないと考える人が大多数なんです。

忙しい場合や、食べきれる分量を手作りするとかえって不経済になる場合であれば、出来合いのものを買って食卓に並べるのもごく当たり前のことだと考えられています。

写真:https://www.chefkoch.de/

我が家は、ドイツの標準からすると、時短料理中心とはいえ手作り率が高いほうだとは思います。それは、ドイツで和食が食べたければ作る以外にないという事情があります。ヨーロッパでも日本人の多い大都市圏には日本のお惣菜屋があるので、買うという選択肢があるなら、平日の食事はそちらも活用したいのが本音です。

私も夫もそして子どもたちも、料理自体は好きですが、生活全体のバランスを考えると料理にだけエネルギーを使うわけにはいきません。支度に手のかかる食事は週末に、普段の食事は白米と簡単なおかず12品が定番です。

そんな我が家では、普通のサラダに比べるとポテトサラダは手間がかかる料理のカテゴリーに入ります。めったに作らないのですが、記事を書いていて久しぶりに食べたくなってきました。

というわけで、今日は最後に我が家でいつもお世話になっている定番レシピをご紹介して終わりたいと思います。

日本にいてドイツの味を楽しみたい人にも、ドイツで暮らしていて日本の味を再現してみたい人にも、そして何よりまだドイツ語がよくわからず、ドイツのスーパーに行ってもどの食材をどう使ったらいいのか、まごまごしていた頃の私にもとても有難かったレシピサイト「みちえのパン工房」より、ドイツ風ポテトサラダをご紹介します。

マヨネーズを使わず、炒めたタマネギとベーコン、ブイヨンで旨味を出したサラダ、よろしければお試しください。とってもおいしいですよ。

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