中野吉之伴フッスバルラボ

【ゆきラボ】SCフライブルクの地域貢献まとめ第2弾。プロクラブが率先して示すサッカーの多様な楽しみ方

こんにちは!今週のゆきラボでは、先週に続いて、「サッカー以上のものを」というスローガンのもとに展開されている、SCフライブルクの多彩な地域貢献をご紹介していきます。

その前に簡単に近況をお知らせします。3月に入って、ある分野では急速に、ある分野ではそろりそろりとコロナ対策ロックダウンの緩和を進めてきたここドイツでしたが、変異種を含めた感染第3波がやってきてしまい、段階的に進むはずだったロックダウン解除はいったん保留もしくは逆戻りに。14歳以下の子どもの屋外スポーツ実施や、幼稚園・保育園・6年生までの学校での対面授業はなんとか維持するようですが、それ以外の日常生活にはまだまだ大きく制限がかかったまま春休みを迎えることになりました。

さて、気を取り直して本題に入りましょう。
先週の記事はこちらからお読みいただけます。

【ゆきラボ】「サッカー以上のものを」。サッカーの枠を超えたSCフライブルクの地域貢献

◆スタジアムで読書会◆

ドイツにはDie drei Fragezeichenという児童文学の超ロングセラーシリーズがあります。元々は1960年代にアメリカで生まれたシリーズで、3人の男の子が少年探偵団を結成して様々な事件に立ち向かうというもの。多くの子どもが一度は手に取る、定番中の定番児童書です。実はアメリカの初代原作者はもう亡くなっているのですが、シリーズ続行の権利を受け継いだドイツ語版のプロダクションによって現在も新作が刊行され続けています。サザエさんやドラえもんなどが原作者亡き後もずっと続いているような感じですね。

2016年に、このシリーズから”Bundesliga-Alarm”という新作が発表されました。ブンデスリーガの実在のチームを舞台に起こる事件を少年探偵団が解決していくというストーリーで、SCフライブルクも登場します。そのときに、SCフライブルクと出版社とがタイアップして企画したのがこの読書会でした。子どもたちは学級単位でこの読書会に参加し、事件の舞台となるフライブルクのスタジアムを見学します。そのあとは、1人1冊ずつこの最新作”Bundesliga-Alarm”をプレゼントしてもらっての読書会。さらにそこへ著者が登場して本にサインをしたり、子どもたちからの質問に答えてくれるという充実の内容でした。

人気児童文学とブンデスリーガがタッグを組むことで、サッカーに興味のない子でも読書やスタジアム見学を通じてサッカーを見てみたくなったり、逆にサッカーは好きだけれど読書は敬遠しがちな子どもが本に親しむきっかけになったりと、どちらの子どもにとっても新しい扉を開く機会になったイベントでした。何を隠そう、我が家の長男もそれまで読書といえば図鑑ばかりで、ストーリーのある本を読むのが苦手な子だったので、この読書会は彼に初めてドイツ語で長めの物語を読むきっかけを作ってくれたイベントとなりました。

◆ファミリーデー◆

バイエルンミュンヘンほどではありませんが、ブンデスリーガ1部クラブとして慢性的にチケットが入手しづらい状態であるSCフライブルク。年間チケットを持っていない人や、それほど熱心なサッカーファンではない人が、ちょっと見てみたいな…と思っても、なかなかハードルが高いのが実情です。そこでSCフライブルクは通常の公式戦の他、練習試合や親善試合を低価格のチケットで公開し、試合に合わせてスタジアムの敷地でファミリーデーを開催しています。敷地内にはスポンサー企業が屋台やミニゲームコーナーなどを出店し、さながら大人も子どもも楽しめるお祭りのよう。ミニゲームなどのアトラクションは基本すべて無料というのも素敵!

SCフライブルクのバスに乗ったり。急こう配を車で上って下りたり。

私たち家族も、スタジアムでサッカーを見たことがないという友人家族を誘ってこのファミリーデーに行ったことがあります。普段の公式戦のときにも、スタジアム周辺にスポンサーのブースやファミリー向けのミニプレイパークが設置されているのはよくあるのですが、SCフライブルクのファミリーデーはそれよりもずっと大規模で、さらに試合開始時刻よりもずっと前からオープンしており、試合が始まるまで半日のんびり楽しむことができる、市民に愛されるイベントとなっています。

砂の中から砂金を探す場所も。こちらも無料参加

バブルサッカー

◆キッズデー◆

「がんばって」よりも「楽しんで」。ドイツの言葉がけとSCフライブルクのキッズデー

夏休みに行われるこの超人気イベント「キッズデー」。ボールやゴールを使った様々なゲームやトレーニングを通じて、楽しみながらサッカーが上手くなるということを目指すものですが、先週のコラムでご紹介したサッカーキャンプに比べると
・開催日は1日だけ
・参加費は無料
・原則、地元のアマチュアサッカークラブに所属している子どもが対象
・SCフライブルクのトレーニング施設が会場
・プログラム終盤にSCフライブルクのプロ選手が登場
というなんとも魅力的な条件が揃っているため、抽選を突破して参加するのはかなりの狭き門です。我が家は2019年に次男がこの参加機会をめでたく手にし、SCフライブルクとサッカーへの愛をしっかりと深めて帰ってきました。

さて、先週と今週にわたってSCフライブルクが地域で行っている取り組みをご紹介してきましたが、いかがだったでしょうか。サッカーを土台として、普段サッカーとの関わりが薄い人から、熱狂的なサッカーファンまで、実に多様な層にアプローチする取り組みが行われていることがわかります。そして、それはサッカーというものの多様な関わり方をプロクラブが率先して示してくれているということでもあります。「サッカーを観るならこうでなくてはならない」「サッカーをプレイするならこうするべきだ」という枠を取り払い、「サッカー以上のものを」というスローガンのもとに風通しの良いサッカー風土を作り上げているSCフライブルクの在り方に、私たちが気づかされることは多いのではないでしょうか。

今週もありがとうございました!来週のゆきラボもよろしくお願いします。

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