【サッカー人気5位】日本代表の現場からしばし離れて思うこと…

kumamoto Football Journal

【女子】サカ女 vol.4 「2023年の女子ワールドカップに出場して、結果を残すのが目標」(FIFA国際主審・小泉朝香さん/株式会社三勢)

 

この写真は2016年のロアッソ熊本のトレーニングマッチから。この試合では副審を担当しており、左胸のワッペンもJFA女子1級のものだ

大きな目標は、2023年の女子ワールドカップで主審を務めること

工学部を卒業した後は大学院に進み、それまでに学んだ領域も生かせるよう、サッカーボールの流体工学などを研究する淺井武教授の研究室に籍を置いた。その傍らで上級の審判員を目指して活動を続け、2011年に女子1級を取得。その後、怪我のリハビリや1年間のイングランド留学などを経て、2013年から国内の各種大会で主審を担当するようになった。

大学院を卒業後の2015年、学生時代に知り合った熊本出身の男性と結婚したのを機に、茨城から再び熊本へ。ただ、いくら国内最上位の女子1級審判員とはいえ、Jリーグを担当する男性のプロフェッショナルレフェリーのように審判活動だけで生活することはできない。そこで、ご主人の知人が経営するビルメンテナンス会社の株式会社三勢(さんせい:熊本市中央区帯山)に社員として雇用してもらい、仕事をしながら審判活動に取り組むことになった。

同社は以前から、陸上競技の三段跳びで日本チャンピオンになった中尾有沙さんなど、県内に拠点を置きながら高いレベルで競技を続けるアスリートを雇用していた事例がある。また、代表取締役社長である福原浩倫さんが元教員で、小泉さんのご主人の高校時代の恩師であったこと、さらに自らもサッカー経験者であったことなど、一般企業と比べてスポーツへの理解があったことも、彼女が審判活動を継続できる環境を実現できた背景にある。

株式会社三勢の福原社長。自らもサッカーを経験し、教員として指導していたこともあり、会社として法海が深い

ただ、2017年に国際主審に認定されてからは、国際大会へ参加するために長期で職場を離れることもしばしばで、会社としても「遠征先でもトレーニング後にできるような仕事の割り振りを考えることが課題」と福原社長は言う。もちろん、実際に大きな大会で主審を務め、メディアで取り上げられれば会社にとってもPRになるが、陸上競技などと違って試合中に身につける審判用のウェアに所属する企業名を出すことはできないばかりか、大会への派遣は前もって決まっていても、どの試合で笛を吹くかは告知できないという事情がある。そのため、仮にテレビで中継されるような大きな試合であっても、同僚に「見てください」とお願いすることもできない。

そうした状況にあっても会社が最低限の給与を保証し、活動をサポートしてくれるからこそ、「結果を出すことで恩返ししたい」と小泉さんは言う。

「ほめられる試合はほぼないし、ミスなくできるのが当たり前。うまくできなかったら注目されるし、自分ではうまくできたと思っていても、そうでない感情を持つ人もいる」のがレフェリーの世界。それでも、「ごくたまにですけど、選手から『今日はよかったよ』、『気持ちよくプレーできた、ありがとう』と声をかけてもらったときには、それまでの何十試合で感じる悔しい気持ちを上回るくらい、楽しいし嬉しい」と話す。何より、「選手としては経験できないピッチに立って、誰よりも近い場所で『いいプレー』を見られる」喜びが、大きなモチベーションになっているのだ。

まずは、なでしこリーグなど国内で行われる大会で安定したジャッジをして信頼を勝ち取り、2年おきに行われるU-17U-20などの大会で実績を残し、そして日本も招致している2023年のFIFA女子ワールドカップに出場するのが大きな目標。

今後は熊本県の社会人リーグや高校生の九州プリンスリーグ等でも主審を担当する可能性もあり、レベルの高いジャッジを身近でも見ることができそう。レフェリーとして世界を目指す人材がいることは、熊本県のサッカーにおいても大きな財産だ。

 

 

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